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旅立ち~あの日の事~
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走り去る車を見送り、僕はバッグを肩に掛けて空港の中に入る。
手続きを済ませて腕時計を見ると、搭乗まで1時間。
スマホに着信を知らせる音が鳴り、海も空港に着いたみたいだった。
僕がアメリカへ行く事を決めた日。
大反対するだろうと思っていた海は、案外、あっさりと受け入れてくれた。
「だって、遅かれ早かれアメリカに行くんですよね? 俺は……、和哉さんの進路の邪魔にだけはなりたく無いですから」
そう俯きながら呟くと、無理して笑顔を浮かべて僕を見た。
正直、子犬が待てをしているようなその顔が可愛くて、頭を撫でたい感情を必死に抑えていたのは此処だけの話。
教授のメールでは、なるべく早く来て欲しいという内容だった。
行ったら、多分2~3年は帰れない。
「それに俺も、来年、両親の海外赴任に着いて行くので、アメリカに行きますし」
海の言葉に、僕と小関さんの目が点になる。
「え?」
「あれ? 聞いていませんでしたか? だから渚、海外に行きたくなくて全寮制の男子校を受験するんですよ」
驚く僕に、海はそう言って微笑んだ。
「数ヶ月の我慢くらい……できます」
「でも……アメリカって言っても、広いんだし……」
「俺、何処に行っても、必ず和哉さん見つけ出す自信があるんです」
「海……」
思わず見つめ合う僕達に、小関さんが咳払いをする。
「で、いつからだ?」
咳払いされて、慌てて視線を逸らした僕達に小関さんが聞いて来た。
「教授のメールでは、一日でも早くって……」
「そうか……」
僕の言葉に重い空気が流れる。
「まぁ、そう決めたんなら、頑張るんだな」
と言うと、小関さんが微笑んだ。
「うん、ありがとう」
話が終わり、僕達は小関さんに送られてそれぞれの家に帰宅した。
海は自宅に着くと、小関さんに丁寧にお礼を言って車から降りた。
走り去るまで見送っていたらしく、車を走らせながらバックミラーを見ると
「……それにしても、クソ可愛くない坊主だな」
と、ぽつりと小関さんが呟く。
「え?」
驚いて小関さんを見ると
「ガキのくせに、落ち着いているというか……大人びてるって言うか……。どっかの誰かさんみたいに、危なっかしすぎるのもどうかと思うがな」
と、運転しながらぽつりと呟いた。
「ちょっと……。どっかの誰かさんって、僕のこと?」
「他に誰が居るんだよ」
運転しながら言われて、僕が頬を膨らませると小関さんが声を出して笑っていた。
思い返してみると、小関さんが声を出して笑う姿を見たのは久しぶりかもしれない。
……そう。先生が亡くなる前は、良く笑っていたのを思い出す。
僕は……、自分勝手にこの人を振り回していた事に気付かされる。
ふと、そんな自分が幸せになって良いのかと脳裏を過ぎる。
すると、小関さんが僕の頭をぐしゃぐしゃって撫でてから
「俺に悪いとか、余計な事考えたら殴るからな」
そう言って、僕の鼻を摘んだ。
自宅に着くと簡単な料理を作ってくれて、僕が食事を終えるのを確認すると、「さっさと寝ろ」と言われて、片付けさえも手伝わせずに僕を寝室へ押し込んだ。
僕はパジャマに着替え、ベッドに潜り込む。
疲れていたのか、僕はあっという間に泥のように眠りに着いた。
手続きを済ませて腕時計を見ると、搭乗まで1時間。
スマホに着信を知らせる音が鳴り、海も空港に着いたみたいだった。
僕がアメリカへ行く事を決めた日。
大反対するだろうと思っていた海は、案外、あっさりと受け入れてくれた。
「だって、遅かれ早かれアメリカに行くんですよね? 俺は……、和哉さんの進路の邪魔にだけはなりたく無いですから」
そう俯きながら呟くと、無理して笑顔を浮かべて僕を見た。
正直、子犬が待てをしているようなその顔が可愛くて、頭を撫でたい感情を必死に抑えていたのは此処だけの話。
教授のメールでは、なるべく早く来て欲しいという内容だった。
行ったら、多分2~3年は帰れない。
「それに俺も、来年、両親の海外赴任に着いて行くので、アメリカに行きますし」
海の言葉に、僕と小関さんの目が点になる。
「え?」
「あれ? 聞いていませんでしたか? だから渚、海外に行きたくなくて全寮制の男子校を受験するんですよ」
驚く僕に、海はそう言って微笑んだ。
「数ヶ月の我慢くらい……できます」
「でも……アメリカって言っても、広いんだし……」
「俺、何処に行っても、必ず和哉さん見つけ出す自信があるんです」
「海……」
思わず見つめ合う僕達に、小関さんが咳払いをする。
「で、いつからだ?」
咳払いされて、慌てて視線を逸らした僕達に小関さんが聞いて来た。
「教授のメールでは、一日でも早くって……」
「そうか……」
僕の言葉に重い空気が流れる。
「まぁ、そう決めたんなら、頑張るんだな」
と言うと、小関さんが微笑んだ。
「うん、ありがとう」
話が終わり、僕達は小関さんに送られてそれぞれの家に帰宅した。
海は自宅に着くと、小関さんに丁寧にお礼を言って車から降りた。
走り去るまで見送っていたらしく、車を走らせながらバックミラーを見ると
「……それにしても、クソ可愛くない坊主だな」
と、ぽつりと小関さんが呟く。
「え?」
驚いて小関さんを見ると
「ガキのくせに、落ち着いているというか……大人びてるって言うか……。どっかの誰かさんみたいに、危なっかしすぎるのもどうかと思うがな」
と、運転しながらぽつりと呟いた。
「ちょっと……。どっかの誰かさんって、僕のこと?」
「他に誰が居るんだよ」
運転しながら言われて、僕が頬を膨らませると小関さんが声を出して笑っていた。
思い返してみると、小関さんが声を出して笑う姿を見たのは久しぶりかもしれない。
……そう。先生が亡くなる前は、良く笑っていたのを思い出す。
僕は……、自分勝手にこの人を振り回していた事に気付かされる。
ふと、そんな自分が幸せになって良いのかと脳裏を過ぎる。
すると、小関さんが僕の頭をぐしゃぐしゃって撫でてから
「俺に悪いとか、余計な事考えたら殴るからな」
そう言って、僕の鼻を摘んだ。
自宅に着くと簡単な料理を作ってくれて、僕が食事を終えるのを確認すると、「さっさと寝ろ」と言われて、片付けさえも手伝わせずに僕を寝室へ押し込んだ。
僕はパジャマに着替え、ベッドに潜り込む。
疲れていたのか、僕はあっという間に泥のように眠りに着いた。
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