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思い出
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別のある日には
「和哉さん、誕生日はいつですか?」
と、アイツが聞いて来た。
「1月1日」
「元旦ですか! おめでたいですね!
あ、だから名前が和哉!ん?1が付いてないですよね?」
首を傾げて悩んでいる横顔が可愛いって思って見ていたっけ。
それから数日後
「あれ? 和哉さん、6月8日って何かあるんですか?」
カレンダーを見て聞いて来たアイツに、歯を磨きながら
「ひゃんひゅうひ」
と答えると
「え? 何?」
って、洗面所に顔だけひょこっと出して聞いて来た。
「誕生日」
と答えると
「誰の?」
って不思議そうに聞かれた。
「僕の」
「え! だって、この間、元旦って……」
「僕、その日が誕生日とは言ってないよ」
「ええ! 酷い! スマホに誕生日って入力しちゃったじゃないですか! しかも、6月8日って明後日じゃないですか!」
「そうだね」
「そうだね……って……」
呆れた顔をしたアイツが
「ちなみに、この印は誰が付けたんですか?自分で付けた訳じゃないですよね」
と、僕の部屋のカレンダーを見上げた。
カレンダーには赤く丸が描いてあり、それは小関さんが「お祝いしてやるから忘れんな」って赤丸を書いたものだった。
「えっと……」
どう答えようか悩んでいると、突然、アイツは鞄から赤のペンを出して花丸にすると
『和哉さん♡』
と書いた。
「ちょっ……! ちょっと、何してんだよ!」
慌ててペンを奪うと
「だって、大好きな人が生まれた日でしょう?」
そう言った後
「でも……1人暮らしの野郎の部屋に、ハートマークとか……」
と言って、爆笑し出したのだ。
「お前! わざとだろう? 絶対、わざとだよな!」
胸ぐらを掴んで怒っている僕を無視して、僕の手から赤ペンを奪い返すと
「じゃあ、此処に……」
そう言いながらカレンダーをめくり、12月25日に丸を付けた。
「何? クリスマス?」
僕が隣に並んで覗き込むと
「海君♡」
って書いていた。
「お前……、自分で自分を『君』付けしてるだけでも寒いのに、自分でハートマークを付けるか?」
呆れて呟く僕に
「これ、和哉さんが書いてくれたって脳内変換したんで良いんです。この日の誕生日プレゼントは、髪の毛に赤いリボンを結んだ和哉さんが良いです」
にっこりと、いつもの爽やかな笑顔を浮かべて言われた。
「はぁ? お前、発想が乙女なんだか、オヤジなんだか……」
苦笑いする僕に
「でも……本当は、一緒に居てくれればそれだけで良いんです」
アイツはそう言いながら、カレンダーを見つめていた。
「そう言いながら、折角の誕生日だからやりまくりましょう! とか言って、また、寝かせないんだろう」
溜息混じりに呟いた僕に
「それ、良いですね。じゃあ、そういう事で」
って、吐いてる言葉はただのエロオヤジなのに、やっぱり爽やかな笑顔を浮かべていたっけ。
「お前……その発想と笑顔のギャップ、なんとかしろ!」
お尻に蹴りを入れると
「でも……本当に、一緒に居られたら……。和哉さんが誕生日に、一緒に居てくれるだけで嬉しいです」
そう言って、カレンダーをじっと見つめていたっけ……。
なぁ、海。
目を閉じると、思い出すのは……きみのことばかりで笑っちゃうよ。
嫌々付き合っていたつもりだったけど、思い返すと、いつだってきみは僕を追いかけてくれていたんだね。
「和哉さん、誕生日はいつですか?」
と、アイツが聞いて来た。
「1月1日」
「元旦ですか! おめでたいですね!
あ、だから名前が和哉!ん?1が付いてないですよね?」
首を傾げて悩んでいる横顔が可愛いって思って見ていたっけ。
それから数日後
「あれ? 和哉さん、6月8日って何かあるんですか?」
カレンダーを見て聞いて来たアイツに、歯を磨きながら
「ひゃんひゅうひ」
と答えると
「え? 何?」
って、洗面所に顔だけひょこっと出して聞いて来た。
「誕生日」
と答えると
「誰の?」
って不思議そうに聞かれた。
「僕の」
「え! だって、この間、元旦って……」
「僕、その日が誕生日とは言ってないよ」
「ええ! 酷い! スマホに誕生日って入力しちゃったじゃないですか! しかも、6月8日って明後日じゃないですか!」
「そうだね」
「そうだね……って……」
呆れた顔をしたアイツが
「ちなみに、この印は誰が付けたんですか?自分で付けた訳じゃないですよね」
と、僕の部屋のカレンダーを見上げた。
カレンダーには赤く丸が描いてあり、それは小関さんが「お祝いしてやるから忘れんな」って赤丸を書いたものだった。
「えっと……」
どう答えようか悩んでいると、突然、アイツは鞄から赤のペンを出して花丸にすると
『和哉さん♡』
と書いた。
「ちょっ……! ちょっと、何してんだよ!」
慌ててペンを奪うと
「だって、大好きな人が生まれた日でしょう?」
そう言った後
「でも……1人暮らしの野郎の部屋に、ハートマークとか……」
と言って、爆笑し出したのだ。
「お前! わざとだろう? 絶対、わざとだよな!」
胸ぐらを掴んで怒っている僕を無視して、僕の手から赤ペンを奪い返すと
「じゃあ、此処に……」
そう言いながらカレンダーをめくり、12月25日に丸を付けた。
「何? クリスマス?」
僕が隣に並んで覗き込むと
「海君♡」
って書いていた。
「お前……、自分で自分を『君』付けしてるだけでも寒いのに、自分でハートマークを付けるか?」
呆れて呟く僕に
「これ、和哉さんが書いてくれたって脳内変換したんで良いんです。この日の誕生日プレゼントは、髪の毛に赤いリボンを結んだ和哉さんが良いです」
にっこりと、いつもの爽やかな笑顔を浮かべて言われた。
「はぁ? お前、発想が乙女なんだか、オヤジなんだか……」
苦笑いする僕に
「でも……本当は、一緒に居てくれればそれだけで良いんです」
アイツはそう言いながら、カレンダーを見つめていた。
「そう言いながら、折角の誕生日だからやりまくりましょう! とか言って、また、寝かせないんだろう」
溜息混じりに呟いた僕に
「それ、良いですね。じゃあ、そういう事で」
って、吐いてる言葉はただのエロオヤジなのに、やっぱり爽やかな笑顔を浮かべていたっけ。
「お前……その発想と笑顔のギャップ、なんとかしろ!」
お尻に蹴りを入れると
「でも……本当に、一緒に居られたら……。和哉さんが誕生日に、一緒に居てくれるだけで嬉しいです」
そう言って、カレンダーをじっと見つめていたっけ……。
なぁ、海。
目を閉じると、思い出すのは……きみのことばかりで笑っちゃうよ。
嫌々付き合っていたつもりだったけど、思い返すと、いつだってきみは僕を追いかけてくれていたんだね。
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