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やっと気付いたアイツへの想い
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もう一度、信じて良いのだろうか?
もう一度、僕は誰かを信じて愛しても良いのだろうか?と淡い期待を持ってしまう。
僕が、まるで自分の事のように怒ってズンズンと前に進むアイツに
「ちょっと待って……。海、ちょっと待ってってば!」
と叫ぶと、海は怒った顔で振き
「なに!」
と叫んだ。
本気で怒っている顔に、涙が込み上げて来そうになるのをグッと堪え
「出口……逆」
と呟いた。
すると海は「しまった」という顔をして、みるみるうちに顔を真っ赤にした。「」
「もっと早く言えよ!」
そう言ってプイっと顔を背けた海が可愛くて、思わず吹き出してしまった。
「あははははは!」
爆笑する僕に、海は驚いた顔をした後
「そんなに笑うなよ」
ってデコピンして来たので
「痛いな!」
と額をさすりながら見上げると、海が「ふっ」と優しく笑ったんだ。
その笑顔は今まで見た事の無かった、海の自然な笑顔だった。
その瞬間、『ドクリ』と心臓が高鳴った。
かぁ~と顔が熱くなり、僕は誤魔化す為に海の頬を左右に引っ張り
「ガキの癖に生意気!」と叫んだ。
「痛えな! ガキって、そんなに変わらないだろうが!」
「はぁ? 23歳と16歳はかなり違います!」
あかんべして言う僕に、海は唇を前に出してふて腐れた顔をした。
そんな海の表情さえも、僕の胸を熱くさせた。『愛おしい』という感情を、久しぶりに思い出したような気がした。
そんな自分の気持ちを誤魔化す為に、海と言い合いをしながら帰宅しているうちにアパートが近付いて来た。
(どうしよう……。疲れているから相手出来ないけど、お茶くらいは出さないとだよな……)
そう考えていると
「じゃあ、俺は此処で…」
と、海が僕をアパートの玄関まで送ると踵を返して帰ろうとした。
「え? 帰るの?」
思わず叫んでしまうと、海は「はぁ」って大きく溜め息を吐いて
「俺、今は飢えた狼なの。だから、そのまま振り返らずに玄関入ったら、鍵を掛けて下さいね」
困ったようにそう言うと、僕の身体を玄関へと向けて背中を押した。
僕はそんな海が愛しくて、つい「フフフ」って笑いながら
「親切な狼さん、ありがとう」
と玄関に入って振り返った。
するとドアをガシっと掴まれて
「振り返るなって言ったのに……」
そう呟かれて、玄関に押し込まれドアが閉まった。
思わず身体を強張らせると、海は切なそうに瞳を揺らせて僕を抱き締めると
「ごめん。なにもしないから……、怯えないで……」
そう囁かれたのだ。
(海?)
驚いて海の顔を見上げると、海の手が僕の頬に触れた後に、ゆっくりと下ろされた。
「海? どうした?」
驚いて海の顔を覗き込む僕に、海は悲しそうに微笑んで
「疲れているのに、ごめん。もう、休んで……」
そう言うと、僕の身体をゆっくりと離した。
「今日は、帰ります。驚かせてすみませんでした」
と呟くと、僕に背を向けて歩き出した。
その時、なんだか海の背中が遠く感じて、手を伸ばし掛けて……でも海の背中を掴めずに下ろしたと同時にドアがゆっくりと閉まった。
そしてこの日以降、海が僕の部屋に来ることは無かった。
もう一度、僕は誰かを信じて愛しても良いのだろうか?と淡い期待を持ってしまう。
僕が、まるで自分の事のように怒ってズンズンと前に進むアイツに
「ちょっと待って……。海、ちょっと待ってってば!」
と叫ぶと、海は怒った顔で振き
「なに!」
と叫んだ。
本気で怒っている顔に、涙が込み上げて来そうになるのをグッと堪え
「出口……逆」
と呟いた。
すると海は「しまった」という顔をして、みるみるうちに顔を真っ赤にした。「」
「もっと早く言えよ!」
そう言ってプイっと顔を背けた海が可愛くて、思わず吹き出してしまった。
「あははははは!」
爆笑する僕に、海は驚いた顔をした後
「そんなに笑うなよ」
ってデコピンして来たので
「痛いな!」
と額をさすりながら見上げると、海が「ふっ」と優しく笑ったんだ。
その笑顔は今まで見た事の無かった、海の自然な笑顔だった。
その瞬間、『ドクリ』と心臓が高鳴った。
かぁ~と顔が熱くなり、僕は誤魔化す為に海の頬を左右に引っ張り
「ガキの癖に生意気!」と叫んだ。
「痛えな! ガキって、そんなに変わらないだろうが!」
「はぁ? 23歳と16歳はかなり違います!」
あかんべして言う僕に、海は唇を前に出してふて腐れた顔をした。
そんな海の表情さえも、僕の胸を熱くさせた。『愛おしい』という感情を、久しぶりに思い出したような気がした。
そんな自分の気持ちを誤魔化す為に、海と言い合いをしながら帰宅しているうちにアパートが近付いて来た。
(どうしよう……。疲れているから相手出来ないけど、お茶くらいは出さないとだよな……)
そう考えていると
「じゃあ、俺は此処で…」
と、海が僕をアパートの玄関まで送ると踵を返して帰ろうとした。
「え? 帰るの?」
思わず叫んでしまうと、海は「はぁ」って大きく溜め息を吐いて
「俺、今は飢えた狼なの。だから、そのまま振り返らずに玄関入ったら、鍵を掛けて下さいね」
困ったようにそう言うと、僕の身体を玄関へと向けて背中を押した。
僕はそんな海が愛しくて、つい「フフフ」って笑いながら
「親切な狼さん、ありがとう」
と玄関に入って振り返った。
するとドアをガシっと掴まれて
「振り返るなって言ったのに……」
そう呟かれて、玄関に押し込まれドアが閉まった。
思わず身体を強張らせると、海は切なそうに瞳を揺らせて僕を抱き締めると
「ごめん。なにもしないから……、怯えないで……」
そう囁かれたのだ。
(海?)
驚いて海の顔を見上げると、海の手が僕の頬に触れた後に、ゆっくりと下ろされた。
「海? どうした?」
驚いて海の顔を覗き込む僕に、海は悲しそうに微笑んで
「疲れているのに、ごめん。もう、休んで……」
そう言うと、僕の身体をゆっくりと離した。
「今日は、帰ります。驚かせてすみませんでした」
と呟くと、僕に背を向けて歩き出した。
その時、なんだか海の背中が遠く感じて、手を伸ばし掛けて……でも海の背中を掴めずに下ろしたと同時にドアがゆっくりと閉まった。
そしてこの日以降、海が僕の部屋に来ることは無かった。
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