猫被りなきみと嘘吐きな僕

古紫汐桜

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アイツの気持ちと僕の気持ち

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………あの日から、海は毎日、家に通うようになった。
レポートで遅くなり、帰りが遅くても玄関前で待たれているので合鍵を渡した。
毎日、毎日、僕を抱き、律儀に平日は1回だけで帰宅する。
最初は嫌々だったこの関係も、いつしか生活の1部になっていた。
……家庭教師のバイト前のあれさえなければ、海は基本的に僕の嫌がる事はしないので、セフレとしては最高である。
でも、恋人にこだわるアイツは、四六時中365日自分だけを求めて欲しいらしい。
どこの重い女だよ!
割り切った関係を求める僕と、全てを欲しいと願う海。
その関係は、平行線を辿っていた。
『和哉、愛してる』
そう囁いて、本心はただのセフレだった先輩との関係。
触れ合う事は1度も無かったけれど、僕を守り続けた先生の想い。
先生は、1度も僕を抱かなかった。
本当に好きな場合、手出し出来ないのかな?
じゃあ、身体から始まったこの関係は、やっぱりセフレなのかな?

いくら考えても、答えの出ない迷路のようだ。

「和哉さん、愛しています」
海はいつも愛の言葉を口にする。
果てる時、いつも僕の名前を呼びながら、まるで泣いているかのように「愛してる」と叫ぶ。
海が愛してるのは、この身体。
僕自身じゃない。
若いから、肉体の欲を愛情だと勘違いしているだけ。
僕は自分にそう言い聞かせていた。

「何を考えているの?」
海が僕の頬に触れて、瞳を覗き込む。
「なにも……」
そう答えながら、綺麗に整った海の顔を見上げる。下手なアイドルより整った、綺麗な顔が汗で濡れている。
何故、こんなに綺麗な人が僕に固執するのか分からない。
多分、同年代の女の子なら、彼のいつもの爽やかな笑顔にイチコロだろう。
何故、好き好んで5つも年上の……しかも男の僕を相手にしているのか理解出来ない。
そんな事を考えていると、顎を強引に掴まれて
「誰を思っているの?」
と、一瞬、悲しそうに瞳を揺らすと『ズン』っと最奥を穿たれた。
「……はぁっ!」
突然の衝撃に仰け反ると、見上げた彼の瞳は凶悪な色に染まっていた。

分からない……。
海が分からない……。

優しく囁いたかと思えば、こうしてむちゃくちゃに僕を抱く。
この関係が始まった頃
『渚に手を出したいと思えない位、毎日、毎日、貴方を抱き潰して上げますよ』
とんでもない言葉を発しているとは思えない、爽やかな笑顔で言われた事がある。
あれはどういう意味だったんだろう?

身体を揺さぶられ、激しい刺激に目眩が起る。
与えられる激しい快楽に、僕は思考を手放した。
「和哉さん……和哉さん……、俺を……俺だけを見てください!」
叩き付けられるように精を吐き出され、僕は海の言葉の意味を考える事も、記憶に留める事も拒否をして意識を手放した。
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