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生意気なクソガキ③
しおりを挟む彼は薄く整った唇を開くと
「渚の家庭教師を、辞めて貰えませんか?」
そう言ってきた。
(はい、ビンゴ!)
僕は心の中でそう呟くと
「渚君は、続けて欲しいって言っていたけど?」
と返事を返すと
「あいつは世間知らずなんです」
そう言って僕を睨み付けて来た。
おぉ!イケメンの睨みは迫力あるなぁ~と関心しつつ、僕を諸悪の根源みたいに言うこいつの物言いに
「何?僕が渚君に何かするって言いたいの?」
と、イライラしながらそいつに言うと
「しないとは言い切れないですよね」
なんて、可愛くない言葉が返って来た。
(何なんだ、こいつ!生意気なクソガキだな!顔面偏差値が高いからって、何でも許されると思うなよ!)
僕はそいつの言葉に込み上げて来た怒りを鎮める為に、深い溜め息を吐いてから
「じゃあ、なに?きみは女性なら、見境無く襲う訳?」
そう訊ねると
「話をはぐらかさないで下さい!」
と返して来た。
「はぁ?はぐらかしてなんかいないだろう?じゃあなに?恋愛対象が男だと、僕は家庭教師をしちゃいけない訳?」
「そうとは言っていないです!ただ、相馬先生と渚の間に過ちが起きてからでは遅いので、家庭教師は辞めて欲しいと言ってるだけです。俺にとって、目に入れても痛くないくらいに可愛い弟なんです。あなたのような尻軽に、渚を近付けて汚したくないんですよ!」
そう言われて、僕の堪忍袋の緒が切れた。
「はぁ?誰が尻軽だよ!汚すって何だよ!」
怒った僕に、そいつは顔色も変えずに
「男と、身体中キスマークだらけにしてラブホから出てくる人間が、尻軽じゃなかったら何なんですか!汚らわしい!」
と、吐き捨てるように言い放ったのだ。
(…………ったく、どいつもこいつも言いたい放題言いやがって!)
この時、僕の怒りのボルテージはMAXだった。
「ふぅ~ん。じゃあ聞くけどさ、なんであの一瞬で僕の身体中がキスマークだらけだなんて分かったんだよ」
僕は一ヶ月も放置された上に、自分の気持ちを押し付けて来た小関さんや、今、目の前で礼儀正しく正座して座るやたら顔面偏差値が高いこのクソガキに腸が煮えくり返る程に腹が立って来た。
僕はやたら警戒しまくるこのクソガキを安心させる為に、リビングの入口に立って距離を作ってやっている位には紳士的に接してやってるのに!
今にも噴火しそうな怒りを飲み込み、その怒りを『はぁ~』と深くて長い溜め息で吐き出すと、生意気なクソガキが一瞬だけ切なそうな悲しそうな瞳で僕を見上げた。
その表情は、思わずゾクリとする程色気と哀愁が漂っていた。
(弟って、そんなに可愛いものなのかねぇ?)
一人っ子の僕には分からない世界だけど、所謂ブラコンって奴なのかな?
じゃなきゃ、わざわざ直談判になんかこないよな……
なんて考えていると、元の生意気な顔に戻って
「とにかく、渚の家庭教師は辞めてもらいます!両親や渚には俺から説明するので、そのつもりでいて下さい」
と叫んで立ち上がったのだ、。
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