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悲しい過去
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小関さんの仕事は弁護士で、偶然、先輩の友達二人に強姦されている僕を見付けた当時の担任に相談され、僕に二度と手を出せないように法的に対処してくれた人。
当時の担任は数学の教師で、普段はのほほんとした感じの人だった。
でも、体育倉庫で強姦されていた僕を見つけると、身を呈して盾になってくれたんだ。
僕を大嫌いな二人から解放してくれて、いつも
『大丈夫だ、相馬は俺が護るから……』
と、頭を撫でてくれた人。
最初は「こいつも僕の身体を狙って優しくしてくれているんだ」と思って警戒した。
でも……担任が僕に触れるのは、頭を撫でる時だけだった。
『相馬は綺麗な顔立ちをしているから、狙われ易いのかもしれないな。俺みたいに、The凡人面ならこんな苦労しないで済んだだろうに……』
いつだったか、1度だけ僕の頬に触れてそう呟くと、悲しそうな瞳をした後に優しい笑顔を浮かべた。
担任と出会って、僕は本当に優しい笑顔というものを知った。
担任は僕を見つけると、いつも目を細めて優しく微笑んでは
『相馬』
って、声を掛けてくれた。
いつしか僕は、担任の小関晃先生を好きになっていた。
僕の家は幼い頃から両親の喧嘩が耐えなくて、基本的に子供に目を向けるような親では無かった。
そんな環境さえも心配してくれて、卒業間近になる頃には僕を家に泊めてくれたりもした。(もちろん、部屋は別だった)
実家通いだった小関先生の家は、温かいテレビに出てくるような家族だった。
先生の家にはいつも電気が灯り、温かい湯気の立つ食事と笑いの絶えない温かい家族。
他人の僕にさえ、家族のように接してくれていた。
先生の家に行くと、太陽の匂いがするフカフカの布団が客間に用意されていて、先生が学校の外で僕に授業を教えるのは問題があるからと、小関さんが勉強を見てくれた。
先生の家に泊まる度、僕は擬似家族体験をさせてもらって幸せだった。
そんな先生の家族の仲を壊したくなくて、自分の想いは永遠に胸の中に隠し通すつもりだった。
でも、高卒のつもりでいた僕に大学の進学を勧めてくれて、僕が最善の人生を歩けるように手を差し伸べてくれた先生への思いはふくらんでいく。
本当に本当に大好きだった、手の届かない人。そう思っていた卒業式の日。
僕はこの想いを抱え切れなくなって、失恋覚悟で告白をした。
今でも忘れない。
桜が舞い散る裏庭で、人生初の告白をした。
「先生が好きです」
驚いた顔をした先生が、ゆっくり微笑んで
「俺もだよ」
って応えてくれた。
信じられなくて、思わず目を見開いて見つめた先には、舞い散る桜と陽の光に照らされた先生の笑顔があった。
「生徒でいる間は、この気持ちに蓋をしようと決めていたんだ。それに、俺みたいなThe凡人を、相馬みたいに綺麗な子が好きになってくれるなんて思わなかったから」
そう言いながら、そっと僕の頬に触れた手が震えていたっけ……。
初めて心から幸せを感じた瞬間だった。
もしも時が戻せるのなら、この時間に巻き戻して全てをやり直したい。
卒業式が終わり、この日は先生の家で僕の卒業祝いをしてくれる事になっていた。
小関先生の兄で、僕の担当弁護士の小関さんがいつも通り僕を車で迎えに来て、僕は先生より先に小関先生の家で先生の帰りを御家族と待っていた。
テーブルの上にはたくさんのご馳走が並んでいて、『かずやくん 卒業おめでとう』のプレートが乗ったケーキまで用意されていた。
先生のご家族の好意が嬉しくて、先生の帰りを今か今かと心待ちにしていた。
……でも、先生は帰って来なかった。
僕を強姦していた二人に逆恨みされ、帰り道に待ち伏せされて刺殺されてしまったのだ。
先生は二人に滅多刺しにされ、見るも無惨な姿になって居たらしい。
あまりにも損傷の酷い遺体なので、家族しか先生の遺体に対面は許されなかった。
最期のお別れさえ出来なかった先生との別れ。
棺の窓は閉ざされ、遺体は中身が見えないように布と袋で密封された状態での別れになった。
当時の担任は数学の教師で、普段はのほほんとした感じの人だった。
でも、体育倉庫で強姦されていた僕を見つけると、身を呈して盾になってくれたんだ。
僕を大嫌いな二人から解放してくれて、いつも
『大丈夫だ、相馬は俺が護るから……』
と、頭を撫でてくれた人。
最初は「こいつも僕の身体を狙って優しくしてくれているんだ」と思って警戒した。
でも……担任が僕に触れるのは、頭を撫でる時だけだった。
『相馬は綺麗な顔立ちをしているから、狙われ易いのかもしれないな。俺みたいに、The凡人面ならこんな苦労しないで済んだだろうに……』
いつだったか、1度だけ僕の頬に触れてそう呟くと、悲しそうな瞳をした後に優しい笑顔を浮かべた。
担任と出会って、僕は本当に優しい笑顔というものを知った。
担任は僕を見つけると、いつも目を細めて優しく微笑んでは
『相馬』
って、声を掛けてくれた。
いつしか僕は、担任の小関晃先生を好きになっていた。
僕の家は幼い頃から両親の喧嘩が耐えなくて、基本的に子供に目を向けるような親では無かった。
そんな環境さえも心配してくれて、卒業間近になる頃には僕を家に泊めてくれたりもした。(もちろん、部屋は別だった)
実家通いだった小関先生の家は、温かいテレビに出てくるような家族だった。
先生の家にはいつも電気が灯り、温かい湯気の立つ食事と笑いの絶えない温かい家族。
他人の僕にさえ、家族のように接してくれていた。
先生の家に行くと、太陽の匂いがするフカフカの布団が客間に用意されていて、先生が学校の外で僕に授業を教えるのは問題があるからと、小関さんが勉強を見てくれた。
先生の家に泊まる度、僕は擬似家族体験をさせてもらって幸せだった。
そんな先生の家族の仲を壊したくなくて、自分の想いは永遠に胸の中に隠し通すつもりだった。
でも、高卒のつもりでいた僕に大学の進学を勧めてくれて、僕が最善の人生を歩けるように手を差し伸べてくれた先生への思いはふくらんでいく。
本当に本当に大好きだった、手の届かない人。そう思っていた卒業式の日。
僕はこの想いを抱え切れなくなって、失恋覚悟で告白をした。
今でも忘れない。
桜が舞い散る裏庭で、人生初の告白をした。
「先生が好きです」
驚いた顔をした先生が、ゆっくり微笑んで
「俺もだよ」
って応えてくれた。
信じられなくて、思わず目を見開いて見つめた先には、舞い散る桜と陽の光に照らされた先生の笑顔があった。
「生徒でいる間は、この気持ちに蓋をしようと決めていたんだ。それに、俺みたいなThe凡人を、相馬みたいに綺麗な子が好きになってくれるなんて思わなかったから」
そう言いながら、そっと僕の頬に触れた手が震えていたっけ……。
初めて心から幸せを感じた瞬間だった。
もしも時が戻せるのなら、この時間に巻き戻して全てをやり直したい。
卒業式が終わり、この日は先生の家で僕の卒業祝いをしてくれる事になっていた。
小関先生の兄で、僕の担当弁護士の小関さんがいつも通り僕を車で迎えに来て、僕は先生より先に小関先生の家で先生の帰りを御家族と待っていた。
テーブルの上にはたくさんのご馳走が並んでいて、『かずやくん 卒業おめでとう』のプレートが乗ったケーキまで用意されていた。
先生のご家族の好意が嬉しくて、先生の帰りを今か今かと心待ちにしていた。
……でも、先生は帰って来なかった。
僕を強姦していた二人に逆恨みされ、帰り道に待ち伏せされて刺殺されてしまったのだ。
先生は二人に滅多刺しにされ、見るも無惨な姿になって居たらしい。
あまりにも損傷の酷い遺体なので、家族しか先生の遺体に対面は許されなかった。
最期のお別れさえ出来なかった先生との別れ。
棺の窓は閉ざされ、遺体は中身が見えないように布と袋で密封された状態での別れになった。
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