猫被りなきみと嘘吐きな僕

古紫汐桜

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始まり

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 アイツとの出会いは、尊敬する教授がアメリカで研究チームを作る事になり、僕、相馬和哉にも声が掛かった。
海外研究渡航に掛かる費用を稼ごうと、家庭教師のバイトを始めたのがきっかけだった。
教授の紹介で、大手企業のお偉方の息子さんの家庭教師をする事になった。
生徒は中学3年生の一条渚君。
なんでも、来年、全寮制の男子高校に入学する為に受験勉強がしたいんだそうだ。
「中学生ね~」
シャワーを浴びて、髪の毛をタオルで拭きながらぼんやりと呟くと
「和哉。お前、カテキョするんだって?」
ベッドで煙草を吸っていた小関さんが、楽しそうに笑っている。
「そう。僕、来週からカテキョの先生」
小関さんの煙草を奪い、灰皿で揉み消して甘えるように首に腕を回す。
「お前、ちゃんと出来んのかよ」
笑いながら僕を抱き寄せ、バスローブの紐を解く。
「当たり前でしょう?僕はこう見えて、成績は優秀なんですよ」
クスクスと笑いながら、バスローブを脱がせる小関さんにキスされてベッドへと押し倒される。
「お前、中学生に手を出すなよ」
首筋から胸元へとキスを落とされながら囁かれる。
「誰に言ってるの? 僕は子供に興味無いよ。第一、生徒に手を出すなんて、安物のAVじゃあるまいし……。僕は、小関さんみたいな大人の男性が良いんです」
そう言って、小さく笑う。
すると小関さんは、答えを返す代わりに僕の乳首を甘噛みした。
「あ……ん……」
甘い声を上げる僕に
「こんないやらしい身体じゃ、中坊はイチコロなんじゃないか?」
そう言いながら、反対側の乳首を摘み上げられて
「やっ……あっ……」
喘ぎながら、小関さんの背中に手を回し
「もう、無駄話は良いから……」
誘うようにキスを求める。

……僕の初恋は高校一年の時だった。
二つ年上で、生徒会長だった人。
見た目が中性的だからとかで、高校に入学して間も無く、僕は強姦されそうになる。
そんな僕を助けてくれた人だった。
初めて好きになった人で、僕の初めてを全て捧げた人。
好きで好きで大好きで、夢中になった恋。
でも、それは呆気なく終わりを告げた。
先輩の卒業が近付いたある日、僕は偶然、先輩と先輩の悪友の会話を聞いてしまったのだ。
化学講師に頼まれて、化学準備室に資料を届けた帰りだった。
先輩との帰りの待ち合わせに間に合わくなりそうで、急いで教室に戻ろうとしていた時、三年生の教室から先輩の声が聞こえて来た。
少し待ち合わせに遅れるかもしれないと伝えようとして、教室のドアに手を掛けた時だった。
「なぁ……お前、マジで一年の相馬と付き合ってんの?」
先輩の友達の声が聞こえて、僕の手が止まる。
先輩が僕の事をどう話すのかを知りたくて、思わず息を詰めて耳を澄ませた。
すると先輩は冷めた声で
「はあ?付き合う訳ないじゃん。セフレだよ、セフレ。あいつ、綺麗な顔と身体してるからさ。まぁ、普通に抱けたぜ。全部俺が初めてだったからさ、俺用に調教すんの楽しかったし。あいつ男だからさ、いくら中出ししても妊娠しないし」
そう言って笑ったのだ。
ショックで頭の中が真っ白になった。
他の先輩達の「マジか~!」とか「羨ましい~」の声が遠くに聞こえる。
「今日もこの後、あいつとやりまくる予定なんだわ。男だから、どんなにめちゃくちゃ嵌めても壊れないし」
下品な笑いが響く教室。
僕は絶望した。
『和哉……愛している』
と囁かれた甘い囁きも、蕩けるようなキスも……全部全部嘘だったんだ……。
僕を抱いた後
『和哉が好き過ぎて、無茶させてごめん』
って、優しく抱き締めてくれたのも……全部嘘だったなんて…。
呆然と立ち尽くしていると、突然、教室のドアが荒々しく開いた。
「あ……」
大好きな先輩と目が合う。
僕は、藁にも縋る思いで先輩を見つめ
(どうか…嘘だと言って!)
そう願いを込めた。
すると先輩は困ったように笑った後、僕に近付き
「盗み聞きなんてイケない子だね、和哉」
そう言って、僕の腕を引っ張り中へと押し込んだ。
「何も知らなければ、最後まで良い先輩で居てあげたのに……。本当に、馬鹿な奴」
冷めた目が僕を見下ろした。
全身に冷水を浴びせられたような気分になっていると
「もう、バレちゃったし。お前等も、こいつを好きにして良いよ。その代わり、俺が抱き潰した後でな」
ショックで動けない僕を抱き寄せて
「本当に馬鹿だね、和哉は……」
先輩の感情の無い瞳が僕を見下ろす。
そして、まるで今までの事が嘘のように、恋人にするような甘いキスを落とされる。
(お願い、嘘だと……嘘だと言って!)
先輩に抱かれながら、何度も叫んだ心の悲鳴は届かず、この日、僕は散々先輩に抱かれた後、先輩の友達2人にも好き勝手にされた。
誰も居なくなった3年生の教室には、ボロ雑巾のようになった僕だけが残された。
 
 この日から先輩が卒業するまでの1ヶ月間、僕は三人に性処理の道具のように扱われた。
あの日のハメ撮り写真を撮られ、三人が抱きたい時に僕を抱く。
そこに僕の意思は一切必要無く、三人の玩具にされていた。
思い出すだけで吐き気がする、地獄のような日々。
 でも、本当の地獄はこの後だった。
先輩は卒業したら呆気なく僕を手放してくれたけど、後の二人はタチが悪かった。
先輩に捨てられた僕を、執拗に抱き続けのだ。
苦しくて辛くて絶望しか無い日々。
僕は一生、こいつらに玩具にされるんだと人生に絶望していた。
そんな時、僕をこの二人から救ってくれたのが、当時の担任の先生と小関さんだった。
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