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僕だから出来ること
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この世界に来て、早いもので半年が経過していた。
僕はアーヒルの執務室に閉じ込められているので、必然的にアーヒルの公務の話を耳にした。
貧民街で病気の蔓延が治まらないと話していたのが気になり、僕はアーヒルに頼んで貧民街に連れて行ってもらった。
下水道が整備されておらず悪臭が漂っていて、これじゃあ、いつ伝染病が流行ってもおかしくない。
僕は意を決してアーヒルに提案した。
「アーヒル、貧民街にもトイレを作ってくれないか?」
「トイレ?」
「うん。飲食店や病院だけじゃなくて、貧民街や孤児院の人達にトイレを使う事を徹底させて欲しい。やり方とかなら、僕が指導するから!」
僕の訴えに、アーヒルは理由とか聞かずに
「分かった。空木殿のやりたいようにやってみてくれ」
そう言ってくれて、予算を作ってくれた。
下水道をこれから作るにしても、大変だなぁ~と考えていたら、琴音の仕業だろう。
この世界でバクテリアの役割を果たす微生物が生育する植物が見つかり、僕はその植物を細かく削っておが屑を作り、そのおが屑を敷き詰めた上にトイレを作った。
この植物は優秀で、削ると消臭殺菌成分まで備わっていた。
そして人間の排泄物は、そのおが屑によって微生物が排泄物を分解し、作物が育つ土に変わる事が判明したのだ。(しかも、虫とか湧かない優れ物!)
水も、スコールが来たら貯められるように貯水槽を作らせた。
僕とアーヒルが土魔法で作ればチョチョイのチョイ!だけど、貧民街の人達の雇用に当ててもらった。
貴族達からは、国庫の無駄遣いだと反発されたけど、アーヒルが有無を言わさずに強行突破させてくれた。
そのお陰で、トイレが普及した頃には、貧民街から漂っていた悪臭は無くなり、貧民街から発生していた病気が激減した。
僕は週に一度、教会に行って琴音に必要な物を作らせた。(そこは、この世界の創造神が妹っていう利点だね)
いつしか僕は、国民から聖者様と呼ばれるようになっていた。
「鈴音、良いか?」
そしてもう一つ。
この国に来て変化した事は、アーヒルが僕の国の言葉で僕の名前を呼んでくれるようになったのだ。
僕は「リン」と、異国訛りの言葉で呼ばれるのが嫌だった。
それは……この世界の空木鈴音を呼んでいるようで、好きになれなかった。
だけどそれは僕の我儘だから、決してアーヒルには言わないでいたんだ。
この世界で暮らしてひと月が過ぎた頃、アーヒルから
「空木殿、空木殿の世界で貴方の名前はどう呼ぶのだ?」
と聞いて来た。
「え? 何で?」
驚いた僕に、アーヒルは優しく微笑むと
「せめて俺だけでも、空木殿の世界の言葉で貴方を呼びたいんだ。ダメか?」
なんて言いやがって。
(ダメとか言える訳ねぇだろう! こんちくしょうが!)
アーヒルは、知れば知る程に人たらしな奴だった。
僕はアーヒルの執務室に閉じ込められているので、必然的にアーヒルの公務の話を耳にした。
貧民街で病気の蔓延が治まらないと話していたのが気になり、僕はアーヒルに頼んで貧民街に連れて行ってもらった。
下水道が整備されておらず悪臭が漂っていて、これじゃあ、いつ伝染病が流行ってもおかしくない。
僕は意を決してアーヒルに提案した。
「アーヒル、貧民街にもトイレを作ってくれないか?」
「トイレ?」
「うん。飲食店や病院だけじゃなくて、貧民街や孤児院の人達にトイレを使う事を徹底させて欲しい。やり方とかなら、僕が指導するから!」
僕の訴えに、アーヒルは理由とか聞かずに
「分かった。空木殿のやりたいようにやってみてくれ」
そう言ってくれて、予算を作ってくれた。
下水道をこれから作るにしても、大変だなぁ~と考えていたら、琴音の仕業だろう。
この世界でバクテリアの役割を果たす微生物が生育する植物が見つかり、僕はその植物を細かく削っておが屑を作り、そのおが屑を敷き詰めた上にトイレを作った。
この植物は優秀で、削ると消臭殺菌成分まで備わっていた。
そして人間の排泄物は、そのおが屑によって微生物が排泄物を分解し、作物が育つ土に変わる事が判明したのだ。(しかも、虫とか湧かない優れ物!)
水も、スコールが来たら貯められるように貯水槽を作らせた。
僕とアーヒルが土魔法で作ればチョチョイのチョイ!だけど、貧民街の人達の雇用に当ててもらった。
貴族達からは、国庫の無駄遣いだと反発されたけど、アーヒルが有無を言わさずに強行突破させてくれた。
そのお陰で、トイレが普及した頃には、貧民街から漂っていた悪臭は無くなり、貧民街から発生していた病気が激減した。
僕は週に一度、教会に行って琴音に必要な物を作らせた。(そこは、この世界の創造神が妹っていう利点だね)
いつしか僕は、国民から聖者様と呼ばれるようになっていた。
「鈴音、良いか?」
そしてもう一つ。
この国に来て変化した事は、アーヒルが僕の国の言葉で僕の名前を呼んでくれるようになったのだ。
僕は「リン」と、異国訛りの言葉で呼ばれるのが嫌だった。
それは……この世界の空木鈴音を呼んでいるようで、好きになれなかった。
だけどそれは僕の我儘だから、決してアーヒルには言わないでいたんだ。
この世界で暮らしてひと月が過ぎた頃、アーヒルから
「空木殿、空木殿の世界で貴方の名前はどう呼ぶのだ?」
と聞いて来た。
「え? 何で?」
驚いた僕に、アーヒルは優しく微笑むと
「せめて俺だけでも、空木殿の世界の言葉で貴方を呼びたいんだ。ダメか?」
なんて言いやがって。
(ダメとか言える訳ねぇだろう! こんちくしょうが!)
アーヒルは、知れば知る程に人たらしな奴だった。
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