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この世界での僕の役割
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朝、目覚める度に、逞しい腕の中なので一瞬ギョッとするが、『あぁ、ここは異世界なのだ……』と実感する。
え? なんで僕がアーヒルと一緒に寝ているのか? って?
この世界に来た時は、自分の事で精一杯で気付かなかったが、実はアーヒルは毎晩うなされているのだ。
僕が現われるまで、毎晩不眠気味だったらしい。
この世界の空木鈴音が死んだ日を何度も夢で見て、その度に飛び起きる毎日だったのだとポツリポツリ語ってくれた。
僕がこの世界に来てから、治癒魔法で安眠出来るようにしてはいるけど、僕を抱き締めて眠るのが一番効果的らしい。
僕はあの日から毎晩、アーヒルに抱き締められて眠っている。
一度、試しにアーヒルが爆睡しているのを確認して離れてみたけど、僕が離れると直ぐに魘されるので、最近は諦めて抱き締められている。
ただ、僕はあくまでもこの世界の空木鈴音の代用品だ。
それなのに最近、アーヒルの腕の中が心地好くなってしまっていて困っている。
僕自身、この世界に転移させられて不安だったけど、アーヒルが傍に居てくれて心強かった。
こんなに誰かに守られていることなんて、僕には経験なかったから……。
僕を抱き締めスヤスヤと眠るアーヒルの寝顔を見上げ、僕は愛しさが込み上げてくる自分に叱咤しながら
(僕はこの世界の空木鈴音の代替品なんだ)
何度も言い聞かせた。
まだこの世界に落とされて数日だというのに、絆されるのが早すぎてチョロい自分に苦笑していると
「空木殿?」
寝惚け眼のアーヒルが僕の顔を見下ろした。
「どうした? 眠れないのか?」
眠そうにするアーヒルの顔を見上げると、アーヒルは首を横に振り
「空木殿が居るから、大丈夫だ。」
そう呟き、目をゆっくりと閉じた。
長い睫毛が目元に影を落とし、すぅすぅと規則正しい寝息が聞こえて来た。
今まで、彼女が居てもこんな気持ちにはならなかった。
アーヒルには、守られているけど守っているような気持ちになる。
昼間はアーヒルが僕を様々な敵から守り、夜は僕がアーヒルを悪夢から守っている。
そんな共存関係なんてした事なかったからだと、僕は自分の中に生まれそうな感情に必死に蓋をして、蓋が開かないように重りも沢山乗せた。
そっと触れた作り物のように美しいアーヒルの顔は、やはり生きているから温かい。
「アーヒル……、必ずお前の空木鈴音を蘇らせて上げるからな」
そう呟くと、アーヒルは小さく呻いて僕の身体を強く抱き締めた。
「空木……殿」
甘く囁かれた僕を呼ぶアーヒルの声に、狡いと思った。
え? なんで僕がアーヒルと一緒に寝ているのか? って?
この世界に来た時は、自分の事で精一杯で気付かなかったが、実はアーヒルは毎晩うなされているのだ。
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僕はあの日から毎晩、アーヒルに抱き締められて眠っている。
一度、試しにアーヒルが爆睡しているのを確認して離れてみたけど、僕が離れると直ぐに魘されるので、最近は諦めて抱き締められている。
ただ、僕はあくまでもこの世界の空木鈴音の代用品だ。
それなのに最近、アーヒルの腕の中が心地好くなってしまっていて困っている。
僕自身、この世界に転移させられて不安だったけど、アーヒルが傍に居てくれて心強かった。
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僕を抱き締めスヤスヤと眠るアーヒルの寝顔を見上げ、僕は愛しさが込み上げてくる自分に叱咤しながら
(僕はこの世界の空木鈴音の代替品なんだ)
何度も言い聞かせた。
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