22 / 32
空と恭介
しおりを挟む
「空さん!」
洗濯物を抱えて河原へ走っている空を追い掛けると、恭介は空の腕を掴む。
手にしていた洗濯籠が地面に落ち、驚いた顔をした空が恭介を見上げると
「どうしてあなたは、俺の顔を見ると逃げるんですか?」
と、恭介に怒ったような顔で言われてしまう。
「それを言うなら、どうしてあなたは毎回毎回追い掛けてくるのですか?」
「それは、あなたが逃げるからでしょう!」
「じゃあ、何ですか? 私が悪いって言いたいのですか?」
「そうじゃない!」
「だったら、私のことは放っておいて下さい!」
空はそう叫ぶと、恭介から視線を逸らして落とした洗濯かごを拾うと、散らばった洗濯物を集めている。
恭介は頑なに拒絶の態度を崩さない空に
「……そんなに俺が憎いのか?」
と、ぽつりと呟いた。
「え?」
驚いて恭介を見上げた空は
「……思い出したのですか?」
そう呟いた。
恭介が何も言わないで空を見つめていると
「どうして? 封印は完璧だった筈」
ぽつりと空が呟いた。
「成る程……。やっぱりあんた、俺の空白の2年間の鍵を握っていたんだな」
恭介の言葉に、空はハッとした顔をして恭介を見上げた。
「騙したんですか?」
「騙してなんかいないですよ。まぁ、カマはかけましたけど」
そう言って肩をすぼめる。
「何故そんな事を……」
「何故だって? 俺さ……この場所に来た時、不思議と懐かしかったんだ。今、住んでいる場所も、初めて来た筈なのに何故か何処に何があるのか分かるんだよ。なんでだろうな?」
恭介はそう言うと、空の顔を見つめる。
空は視線を外すと
「日本家屋なんて、何処も同じような作りですからね。不思議な事では無いのでは無いですか?」
そう答えて恭介に背中を向けた。
恭介は深い溜め息を吐くと
「俺は今日一日、この森を歩いたんですよ。不思議なんですよね~。歩いた事があるように川の場所や何処になにが実っているのかも分かるんですよ。これって……どういう事ですかね?」
と言うと、背中を向けている空の肩を掴んで自分の方へ向けると
「あなたは何を知っているんですか? 封印ってなんですか? 俺は一体、此処で何をしていたんですか?」
そう叫んだ。
空は悲しそうに顔を歪ませると
「それが……思い出さない方が良い記憶だとしても……ですか?」
と呟いた。
すると怒りを顕にして
「それは俺が決める! あんたには分かるか? 2年間、自分が何処で何をしていたのかを忘れている人間の気持ちが!」
恭介が叫ぶと
「止めろ!」
と声が聞こえた。
物凄い疾風が恭介を覆い、空の肩を掴んで居た手が離れる。
すると空の前に風太と座敷童子が立ちはだかると
「空をいじめるな!」
そう叫んで恭介を睨んだ。
洗濯物を抱えて河原へ走っている空を追い掛けると、恭介は空の腕を掴む。
手にしていた洗濯籠が地面に落ち、驚いた顔をした空が恭介を見上げると
「どうしてあなたは、俺の顔を見ると逃げるんですか?」
と、恭介に怒ったような顔で言われてしまう。
「それを言うなら、どうしてあなたは毎回毎回追い掛けてくるのですか?」
「それは、あなたが逃げるからでしょう!」
「じゃあ、何ですか? 私が悪いって言いたいのですか?」
「そうじゃない!」
「だったら、私のことは放っておいて下さい!」
空はそう叫ぶと、恭介から視線を逸らして落とした洗濯かごを拾うと、散らばった洗濯物を集めている。
恭介は頑なに拒絶の態度を崩さない空に
「……そんなに俺が憎いのか?」
と、ぽつりと呟いた。
「え?」
驚いて恭介を見上げた空は
「……思い出したのですか?」
そう呟いた。
恭介が何も言わないで空を見つめていると
「どうして? 封印は完璧だった筈」
ぽつりと空が呟いた。
「成る程……。やっぱりあんた、俺の空白の2年間の鍵を握っていたんだな」
恭介の言葉に、空はハッとした顔をして恭介を見上げた。
「騙したんですか?」
「騙してなんかいないですよ。まぁ、カマはかけましたけど」
そう言って肩をすぼめる。
「何故そんな事を……」
「何故だって? 俺さ……この場所に来た時、不思議と懐かしかったんだ。今、住んでいる場所も、初めて来た筈なのに何故か何処に何があるのか分かるんだよ。なんでだろうな?」
恭介はそう言うと、空の顔を見つめる。
空は視線を外すと
「日本家屋なんて、何処も同じような作りですからね。不思議な事では無いのでは無いですか?」
そう答えて恭介に背中を向けた。
恭介は深い溜め息を吐くと
「俺は今日一日、この森を歩いたんですよ。不思議なんですよね~。歩いた事があるように川の場所や何処になにが実っているのかも分かるんですよ。これって……どういう事ですかね?」
と言うと、背中を向けている空の肩を掴んで自分の方へ向けると
「あなたは何を知っているんですか? 封印ってなんですか? 俺は一体、此処で何をしていたんですか?」
そう叫んだ。
空は悲しそうに顔を歪ませると
「それが……思い出さない方が良い記憶だとしても……ですか?」
と呟いた。
すると怒りを顕にして
「それは俺が決める! あんたには分かるか? 2年間、自分が何処で何をしていたのかを忘れている人間の気持ちが!」
恭介が叫ぶと
「止めろ!」
と声が聞こえた。
物凄い疾風が恭介を覆い、空の肩を掴んで居た手が離れる。
すると空の前に風太と座敷童子が立ちはだかると
「空をいじめるな!」
そう叫んで恭介を睨んだ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/chara_novel.png?id=8b2153dfd89d29eccb9a)
闇に堕つとも君を愛す
咲屋安希
キャラ文芸
『とらわれの華は恋にひらく』の第三部、最終話です。
正体不明の敵『滅亡の魔物』に御乙神一族は追い詰められていき、とうとう半数にまで数を減らしてしまった。若き宗主、御乙神輝は生き残った者達を集め、最後の作戦を伝え準備に入る。
千早は明に、御乙神一族への恨みを捨て輝に協力してほしいと頼む。未来は莫大な力を持つ神刀・星覇の使い手である明の、心ひとつにかかっていると先代宗主・輝明も遺書に書き残していた。
けれど明は了承しない。けれど内心では、愛する母親を殺された恨みと、自分を親身になって育ててくれた御乙神一族の人々への親愛に板ばさみになり苦悩していた。
そして明は千早を突き放す。それは千早を大切に思うゆえの行動だったが、明に想いを寄せる千早は傷つく。
そんな二人の様子に気付き、輝はある決断を下す。理屈としては正しい行動だったが、輝にとっては、つらく苦しい決断だった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる