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三角関係
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美咲は笑顔を浮かべ、そっと背後から近付くと
「ふ~た~ば~教授♡」
と叫んで背後から抱き着いた。
しかし、恭介の反応が薄い。
何かを考え込んで居て、美咲に全く気付いていないようだった。
最近、日に日に恭介が考え事をしている時間が増えているように思う。
その横顔は、美咲の知らない恭介で怖くなる。
「教授、どうしたんですか? 教授!」
必死に声を掛けると、ゆっくりと美咲の顔を見て
「あぁ……柳君か……」
と呟くと、自分に抱き着いている美咲に気付き、慌てて身体を剥がした。
そして美咲を見下ろすと
「柳君! 前から言おうと思っていたのだが、やたらめったら男に抱き付くのは止めなさい」
と注意をして来た。
美咲は恭介を見上げて
「私、教授にしかやっていないですよ!」
そう反論すると、恭介に溜め息を吐かれて
「それなら、尚更止めなさい!」
と言われてしまい、美咲はカチンとした顔をすると
「じゃあ、誰なら良いの?教授に抱き着いて良いのは、いつになれば良いの?教授は、いつになったら私を1人の女性として見てくれるの?」
と叫んだ。
風太達とはしゃぎ回っていた修治は、美咲と恭介の様子を見て、そっと2人を連れて河原の方へと歩いて行く。
その様子を横目で確認した恭介は、溜め息を吐いて
「それは……」
と言い掛けると
「私、来年の春には卒業なんですよ! じゃあ、卒業したら私を女として見てくれるんですか?」
美咲がいつになく真剣に恭介に詰め寄る。
恭介はそんな美咲からゆっくりと視線を逸らすと
「すまない……」
と、ぽつりと呟いた。
「それって、女として見られないから?好きになれないから?どうして?どうして最近あった空さんにはキスをして、私には何もしてくれないの?」
泣き出した美咲の言葉に、恭介が驚いた顔をして顔を上げた。
「見て……いたのか?」
「どうして? 私、こんなに教授が好きなのに……」
泣き崩れる美咲に、恭介が口を開き掛けた時
「美咲さん? どうしたんですか?」
洗濯物を抱えた空が、驚いた顔で声を掛けて来た。
そして死角になっていた恭介に気付くと
「あ……! すみません」
そう呟いて、慌てて走り去ってしまう。
恭介が慌てて追いかけようとすると、美咲は恭介の腕を掴み
「行かないで下さい! 教授、嫌です!私……ずっと4年間、教授だけを追いかけて来たんです。なんで……なんで空さんなんですか?空さんは、人間じゃないんですよ! 好きになっても無理なのに、どうして……」
必死に叫んで居た。
美咲の気持ちは痛い程恭介に伝わって来た。
でも、初めて会った時から、恭介は空に対して不思議な感情を持っていた。
懐かしいような、初めて会った人では無いような……。
だから、どうしても彼女が気になってしまう。
それが美咲の言う、愛だとか恋だとかという感情なのかは、まだ恭介には分からなかった。
ただ、彼女が逃げると追いたくなる。
振り向かせて、あの瞳に自分を写して欲しくてたまらなくなる。
渇望にも似た感情に、恭介は抗えなかった。
恭介は泣きながら必死に自分を引き止めようとする美咲を抱き締めて、そっと額にキスを落とした。
「きみは……俺の可愛い、大切な生徒です」
そう言うと、ゆっくりと美咲の身体を離して空の後を追うように走り去ってしまった。
美咲は額に手を当てて、その場に崩れ落ちた。
(分かっていた。私は、額にしかキスしてもらえない存在だって……。それでも……それでもあなたが好きなんです……教授)
美咲は流れる涙を拭いもせず、その場で泣き崩れていた。
「ふ~た~ば~教授♡」
と叫んで背後から抱き着いた。
しかし、恭介の反応が薄い。
何かを考え込んで居て、美咲に全く気付いていないようだった。
最近、日に日に恭介が考え事をしている時間が増えているように思う。
その横顔は、美咲の知らない恭介で怖くなる。
「教授、どうしたんですか? 教授!」
必死に声を掛けると、ゆっくりと美咲の顔を見て
「あぁ……柳君か……」
と呟くと、自分に抱き着いている美咲に気付き、慌てて身体を剥がした。
そして美咲を見下ろすと
「柳君! 前から言おうと思っていたのだが、やたらめったら男に抱き付くのは止めなさい」
と注意をして来た。
美咲は恭介を見上げて
「私、教授にしかやっていないですよ!」
そう反論すると、恭介に溜め息を吐かれて
「それなら、尚更止めなさい!」
と言われてしまい、美咲はカチンとした顔をすると
「じゃあ、誰なら良いの?教授に抱き着いて良いのは、いつになれば良いの?教授は、いつになったら私を1人の女性として見てくれるの?」
と叫んだ。
風太達とはしゃぎ回っていた修治は、美咲と恭介の様子を見て、そっと2人を連れて河原の方へと歩いて行く。
その様子を横目で確認した恭介は、溜め息を吐いて
「それは……」
と言い掛けると
「私、来年の春には卒業なんですよ! じゃあ、卒業したら私を女として見てくれるんですか?」
美咲がいつになく真剣に恭介に詰め寄る。
恭介はそんな美咲からゆっくりと視線を逸らすと
「すまない……」
と、ぽつりと呟いた。
「それって、女として見られないから?好きになれないから?どうして?どうして最近あった空さんにはキスをして、私には何もしてくれないの?」
泣き出した美咲の言葉に、恭介が驚いた顔をして顔を上げた。
「見て……いたのか?」
「どうして? 私、こんなに教授が好きなのに……」
泣き崩れる美咲に、恭介が口を開き掛けた時
「美咲さん? どうしたんですか?」
洗濯物を抱えた空が、驚いた顔で声を掛けて来た。
そして死角になっていた恭介に気付くと
「あ……! すみません」
そう呟いて、慌てて走り去ってしまう。
恭介が慌てて追いかけようとすると、美咲は恭介の腕を掴み
「行かないで下さい! 教授、嫌です!私……ずっと4年間、教授だけを追いかけて来たんです。なんで……なんで空さんなんですか?空さんは、人間じゃないんですよ! 好きになっても無理なのに、どうして……」
必死に叫んで居た。
美咲の気持ちは痛い程恭介に伝わって来た。
でも、初めて会った時から、恭介は空に対して不思議な感情を持っていた。
懐かしいような、初めて会った人では無いような……。
だから、どうしても彼女が気になってしまう。
それが美咲の言う、愛だとか恋だとかという感情なのかは、まだ恭介には分からなかった。
ただ、彼女が逃げると追いたくなる。
振り向かせて、あの瞳に自分を写して欲しくてたまらなくなる。
渇望にも似た感情に、恭介は抗えなかった。
恭介は泣きながら必死に自分を引き止めようとする美咲を抱き締めて、そっと額にキスを落とした。
「きみは……俺の可愛い、大切な生徒です」
そう言うと、ゆっくりと美咲の身体を離して空の後を追うように走り去ってしまった。
美咲は額に手を当てて、その場に崩れ落ちた。
(分かっていた。私は、額にしかキスしてもらえない存在だって……。それでも……それでもあなたが好きなんです……教授)
美咲は流れる涙を拭いもせず、その場で泣き崩れていた。
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