風の声 森の唄

古紫汐桜

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風太と美咲と……時々座敷童子②

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美咲が戸惑うように頷くと
「そっか……。空が言ってるのは、本当だったんだな」
そう言って考え込んでしまった。
「え? 空さん、何か言っていたの?」
美咲がそう聞くと
「空が言うにはさ……オイラ達は本来、美咲達人間には見えない存在なんだって。此処は大龍神様が治める世界で、いわゆる神様の世界? らしいから、美咲達にもオイラ達が見えている。でも、座敷童子は人間界で傷付いて帰って来たから、たとえ此処に居ても、美咲達には声が聞こえないかもしれないって」
風太はそう言うと
「な! 座敷童子」
と、自分とは反対側の美咲の横に座る座敷童子に声を掛けた。
美咲はその言葉に
「それって、どう言う事?」
と真剣な顔をして風太に質問すると、風太は腕を組んで考え込むような仕草をしながら
「詳しい事は知らねえけどよ。人間が神様を信じなくなって、自然を大事にしなくなった。だから神様達の力も弱まって、この世界を守るのが難しくなっているんだって」
そこまで話すと、風太は縁側から飛び降りて
「座敷童子も、お願いばかりされて都合の良い時しかお参りしないからさ。力が弱まって動けなくなっているのを、空に助けられたって言っていたよ」
と言うと、足元の石を蹴って遊び始める。
「あのさ……風太君。空さんって……どんな人なの?」
美咲が質問すると
「空? 大龍神様に仕える龍神で、元々はオイラの母ちゃんに仕えていたらしいよ」
風太は普通に話をしているが、美咲は混乱した。
空が風太の母親では無いとして、その風太の母親に仕えていたとしたならば……今、この場所に居る美咲達の中で、風太の父親を知っている唯一の存在だということだ。
風太は、父親が人間だと言っていた。
その時、美咲の胸の中がザワザワと嫌な胸騒ぎを起こす。
「風太君……もしかして、風太君の父親って……」
「あれ? 美咲、此処に居たの?」
美咲が呟いた瞬間、呑気な顔をして修治が現れた。
「あ! 修治だ!」
風太と座敷童子は修治を囲むと
「遊ぼうぜ! 修治、遊ぼうぜ!」
そう叫んでいる。
「あ~れ~? 何? 俺って、ちび子達にも大人気?」
嬉しそうにしている修治に
「ちびっ子達にもって何? あんたがいつ、何処で、誰に人気があったのよ!」
と、美咲が呆れて呟く。
「美咲、妬くなって! 俺はいつだって、美咲が一番だよ」
修治が美咲の手を取ってそう言うと、手の甲にキスをしようとした。
美咲は慌てて手を離し
「気持ち悪い事すんな!」
そう叫んで修治の頭にチョップをした。
すると風太達も美咲の真似をして、修治の腕にジャンプしてチョップし始めたのだ。
「こ~ら~! 誰だ! 俺にチョップしてるのは!」
修治がそう叫ぶと
「やばい! 逃げろ~!」
と叫び、風太と座敷童子が走り出す。
その2人を修治が追いかけていると、恭介が裏山の方から帰って来た。
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