16 / 32
龍神の里での暮らし
しおりを挟む
あれから数日が経過して、最初は此処での暮らしに戸惑っていた3人も、次第に慣れ始めて来た。
空が井戸から水を汲んでいると
「そ~らさん。それ、台所に持って行くんでしょう?俺、やりますよ」
修治は、空が水汲みや薪割り。その他、重い荷物の仕事をしていると、何処からともなく現れて手伝ってくれる。
「空さん、洗い物終わりました。何か他にお手伝いしましょうか?」
美咲も、大学で一人暮らしをしていたとかで、家事を手伝ってくれて助かっている。
「ありがとうございます」
2人に微笑んで答えると
「そ~ら~!」
と、自分を呼ぶ風太の声が聞こえて視線を向けると、恭介とバケツを2人で持って手を振っていた。
3人が来てから、風太は毎日楽しそうにしている。ずっと、この世界では空と座敷童子の3人で過ごしていた風太にとって、恭介達3人が良い刺激になっているようだった。
空は風太に笑顔を浮かべて
「今日はどこに行って来たの?」
と声を掛けると
「今日はね、恭介と一緒に釣りに行って来たんだ」
そう言って、バケツに入ったヤマメを得意気に見せて来た。
「いや~、思ったより魚が釣れて驚きました」
笑顔で語り掛ける恭介に、空は一瞬、顔を強ばらせてから作り笑顔で微笑み
「そうですか……」
そう答えて、視線をすぐに風太へと戻した。
「見て見て!ヤマメが、1、2、3……いっぱいだよ!」
無邪気に笑う風太に、空は優しく微笑み返す。
「では、今夜はヤマメの焼き魚ですね」
空が顔を上げた瞬間、微笑みながら空を見下ろした恭介と顔が近付く。
思ったより間近だった顔に
「あ……すみません」
そう言って慌てて俯く空に、恭介が口を開き掛けると
「教授! 魚釣りに行ってたんですか?」
と、美咲が声を掛けて来た。
恭介が美咲に視線を向けると、空はバケツを掴んで
「夕飯の支度……して来ますね」
そう言い残して走り去ってしまう。
恭介は走り去る空の後ろ姿を見つめて、深い溜め息を吐いた。
此処に来てから、他の2人とは親し気にしている空が、自分を避けているように恭介は感じていた。
近付けば遠避ける空が、恭介は気になって仕方なかった。
今まで他人に興味の無かった自分が、何故、空に避けられているのが気になるのかが不思議だった。
空が井戸から水を汲んでいると
「そ~らさん。それ、台所に持って行くんでしょう?俺、やりますよ」
修治は、空が水汲みや薪割り。その他、重い荷物の仕事をしていると、何処からともなく現れて手伝ってくれる。
「空さん、洗い物終わりました。何か他にお手伝いしましょうか?」
美咲も、大学で一人暮らしをしていたとかで、家事を手伝ってくれて助かっている。
「ありがとうございます」
2人に微笑んで答えると
「そ~ら~!」
と、自分を呼ぶ風太の声が聞こえて視線を向けると、恭介とバケツを2人で持って手を振っていた。
3人が来てから、風太は毎日楽しそうにしている。ずっと、この世界では空と座敷童子の3人で過ごしていた風太にとって、恭介達3人が良い刺激になっているようだった。
空は風太に笑顔を浮かべて
「今日はどこに行って来たの?」
と声を掛けると
「今日はね、恭介と一緒に釣りに行って来たんだ」
そう言って、バケツに入ったヤマメを得意気に見せて来た。
「いや~、思ったより魚が釣れて驚きました」
笑顔で語り掛ける恭介に、空は一瞬、顔を強ばらせてから作り笑顔で微笑み
「そうですか……」
そう答えて、視線をすぐに風太へと戻した。
「見て見て!ヤマメが、1、2、3……いっぱいだよ!」
無邪気に笑う風太に、空は優しく微笑み返す。
「では、今夜はヤマメの焼き魚ですね」
空が顔を上げた瞬間、微笑みながら空を見下ろした恭介と顔が近付く。
思ったより間近だった顔に
「あ……すみません」
そう言って慌てて俯く空に、恭介が口を開き掛けると
「教授! 魚釣りに行ってたんですか?」
と、美咲が声を掛けて来た。
恭介が美咲に視線を向けると、空はバケツを掴んで
「夕飯の支度……して来ますね」
そう言い残して走り去ってしまう。
恭介は走り去る空の後ろ姿を見つめて、深い溜め息を吐いた。
此処に来てから、他の2人とは親し気にしている空が、自分を避けているように恭介は感じていた。
近付けば遠避ける空が、恭介は気になって仕方なかった。
今まで他人に興味の無かった自分が、何故、空に避けられているのが気になるのかが不思議だった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/chara_novel.png?id=8b2153dfd89d29eccb9a)
闇に堕つとも君を愛す
咲屋安希
キャラ文芸
『とらわれの華は恋にひらく』の第三部、最終話です。
正体不明の敵『滅亡の魔物』に御乙神一族は追い詰められていき、とうとう半数にまで数を減らしてしまった。若き宗主、御乙神輝は生き残った者達を集め、最後の作戦を伝え準備に入る。
千早は明に、御乙神一族への恨みを捨て輝に協力してほしいと頼む。未来は莫大な力を持つ神刀・星覇の使い手である明の、心ひとつにかかっていると先代宗主・輝明も遺書に書き残していた。
けれど明は了承しない。けれど内心では、愛する母親を殺された恨みと、自分を親身になって育ててくれた御乙神一族の人々への親愛に板ばさみになり苦悩していた。
そして明は千早を突き放す。それは千早を大切に思うゆえの行動だったが、明に想いを寄せる千早は傷つく。
そんな二人の様子に気付き、輝はある決断を下す。理屈としては正しい行動だったが、輝にとっては、つらく苦しい決断だった。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる