14 / 32
予期せぬ出会い
しおりを挟む
空は両手を胸の前で祈るように握り締めると
「信じてはもらえないかもしれませんが……、此処はあなた方人間が来られる場所では無いのです」
そう呟いた。
「はぁ?」
美咲達3人が呆れた顔をすると
「此処は、龍神の谷なんです」
と呟いたのだ。
「龍神の谷?」
恭介がポツリと呟くと
「はい。大龍神様が本日、明日からの出雲大社での神事に向かう為、本来なら開かないこちらの世界と人間界を塞ぐ扉を開かれました。どうやらあなた方は、大龍神様が旅立たれる為に開いたほんの少しの時間に、こちら側の世界へ迷い込んでしまったようです」
そう空が答えた。
「えぇ! じゃあ、帰れないの?」
美咲が不安そうに呟くと
「1ヶ月後、大龍神様が戻られる時に再び扉が開かれます。その時に、お帰りいただくようになります」
空が申し訳なさそうに答えた。
恭介が考え込んで
「その時まで、元の世界には戻れないんですよね」
と呟くと、美咲もハッとして
「待って!……と言う事は、教授と1ヶ月間ずっと一緒?」
そう呟いたのだ。
すると間髪入れずに
「美咲、俺も居るよ!」
と修治が美咲に手を挙げて主張すると、美咲は修治に深い溜め息を吐いて
「ちょっと、修治。人が良い気分になっているのに、邪魔しないでよ!」
そう言って睨み付けると、修治が苦笑いを浮かべながら
「でも、ほら! 教授が一緒に居る事には変わりないだろう?」
とフォローした。
すると美咲はすぐに
「……という事はよ。学校で一緒に居るより、長い時間一緒に居られるって事よね?」
と呟いて思いを馳せた。
それは朝日が差す食卓。
朝食の準備をする美咲に、パジャマ姿の恭介が起きてくる。
「教授、おはようございます」
「おはよう。美味しそうな朝食だな」
「はい、教授の為に頑張って作りました」
「そうか。朝食の前に、俺はきみのその可愛い唇を……」
と妄想して
「やだ~、教授ったら! 朝からエッチ!」
そう叫んで、隣に立っている恭介の腕をバシバシと叩いた。
「はぁ?」
冷めた目で見詰める恭介の顔を見て、美咲は慌てて笑って誤魔化していると
「あの……それで、大変申し訳ないのですが、宿とかはありませんので、我が家にしばらくの間、住んでいただく事になりますが、よろしいですか?」
空が申し訳無さそうに、3人に提案して来たのだ。
「え! ですが……」
恐縮する恭介に、風太が
「オイラ達の家、でっかいからお前らが来ても平気だぞ! だからお前等、安心してうちに来い」
そう言うと、満面の笑顔を浮かべた。
恭介が風太の笑顔に小さく微笑み
「では、お言葉に甘えさせて頂きます」
と頭を下げると
「あの、私の部屋は教授と一緒でも良いですよ」
と、美咲が空に耳打ちをしている。
そんな美咲に恭介は頭を抱えると
「あの、鍵のある部屋ってありますか?」
今度は恭介が空に聞いて来た。
「ちょっと、教授! なんで鍵のある部屋があるかを確認しているんですか!」
文句を言う美咲に、修治が微笑んで
「そんなの、美咲が女の子だから心配してくれて聞いてくれたに決まっているだろう?」
そう叫んだ。
しかし、恭介が間髪入れずに
「いや! お前に寝込みを襲われるかもしれないからな!」
と言うと
「やだな~、そんな事しませんよ」
そう言って微笑む美咲に、恭介が疑いの眼差しを向ける。
すると美咲が横を向いて「チッ!」っと舌打ちをしたのを聞いて
「柳君? 今、舌打ちしなかったか?」
恭介が作り笑顔を浮かべて聞くと、美咲も作り笑顔を浮かべて
「やだ~、気のせいですよ~!」
と答えて微笑む。
そんな2人に
「でもさ、美咲。着替えはどうするんだ? 俺は男だからどうにでもなるけど、お前、大変だろう?」
と、修治が話に入って来た。
「え? 着替えなら持って来てるよ」
美咲が鞄を見せて得意気に微笑む。
「え? なんで?」
修治が驚いた顔をすると
「だって、今日は教授の家にお泊まりするつもりだったんだもん」
と言って、頬を染めた。
その様子を見て恭介は
「あの! 絶対に鍵の着いている部屋にしてもらえますか!」
そう言いながら、必死な形相で空に話しかけて来た。
空が2人の様子を見て
「あの……お2人は恋人なんですか?」
と聞くと、美咲は満面の笑顔で
「はい!」
と答えた。
そんな美咲に恭介は慌てて
「生徒です! 私は学校で教鞭を取っているので、彼女と彼は私の生徒なんです」
そう答えて、美咲を睨みつけた。
美咲が頬を膨らませていると
「空、こいつらずっと『教授~』ってやってたぞ!」
と、風太が座敷童子に抱き着いて真似をし始めた。
「あ……そうなんですね」
そう答えた空に、恭介は慌てて
「違います! 本当に、ただの教師と生徒です! 信じて下さい」
と、必死に弁解している。
「教授! そんなに否定しなくても、良いじゃないですか!」
頬を膨らませる美咲に
「良くない! 生徒に手を出す人間だと思われたくないからな」
そう言って美咲を睨んだ。
「信じてはもらえないかもしれませんが……、此処はあなた方人間が来られる場所では無いのです」
そう呟いた。
「はぁ?」
美咲達3人が呆れた顔をすると
「此処は、龍神の谷なんです」
と呟いたのだ。
「龍神の谷?」
恭介がポツリと呟くと
「はい。大龍神様が本日、明日からの出雲大社での神事に向かう為、本来なら開かないこちらの世界と人間界を塞ぐ扉を開かれました。どうやらあなた方は、大龍神様が旅立たれる為に開いたほんの少しの時間に、こちら側の世界へ迷い込んでしまったようです」
そう空が答えた。
「えぇ! じゃあ、帰れないの?」
美咲が不安そうに呟くと
「1ヶ月後、大龍神様が戻られる時に再び扉が開かれます。その時に、お帰りいただくようになります」
空が申し訳なさそうに答えた。
恭介が考え込んで
「その時まで、元の世界には戻れないんですよね」
と呟くと、美咲もハッとして
「待って!……と言う事は、教授と1ヶ月間ずっと一緒?」
そう呟いたのだ。
すると間髪入れずに
「美咲、俺も居るよ!」
と修治が美咲に手を挙げて主張すると、美咲は修治に深い溜め息を吐いて
「ちょっと、修治。人が良い気分になっているのに、邪魔しないでよ!」
そう言って睨み付けると、修治が苦笑いを浮かべながら
「でも、ほら! 教授が一緒に居る事には変わりないだろう?」
とフォローした。
すると美咲はすぐに
「……という事はよ。学校で一緒に居るより、長い時間一緒に居られるって事よね?」
と呟いて思いを馳せた。
それは朝日が差す食卓。
朝食の準備をする美咲に、パジャマ姿の恭介が起きてくる。
「教授、おはようございます」
「おはよう。美味しそうな朝食だな」
「はい、教授の為に頑張って作りました」
「そうか。朝食の前に、俺はきみのその可愛い唇を……」
と妄想して
「やだ~、教授ったら! 朝からエッチ!」
そう叫んで、隣に立っている恭介の腕をバシバシと叩いた。
「はぁ?」
冷めた目で見詰める恭介の顔を見て、美咲は慌てて笑って誤魔化していると
「あの……それで、大変申し訳ないのですが、宿とかはありませんので、我が家にしばらくの間、住んでいただく事になりますが、よろしいですか?」
空が申し訳無さそうに、3人に提案して来たのだ。
「え! ですが……」
恐縮する恭介に、風太が
「オイラ達の家、でっかいからお前らが来ても平気だぞ! だからお前等、安心してうちに来い」
そう言うと、満面の笑顔を浮かべた。
恭介が風太の笑顔に小さく微笑み
「では、お言葉に甘えさせて頂きます」
と頭を下げると
「あの、私の部屋は教授と一緒でも良いですよ」
と、美咲が空に耳打ちをしている。
そんな美咲に恭介は頭を抱えると
「あの、鍵のある部屋ってありますか?」
今度は恭介が空に聞いて来た。
「ちょっと、教授! なんで鍵のある部屋があるかを確認しているんですか!」
文句を言う美咲に、修治が微笑んで
「そんなの、美咲が女の子だから心配してくれて聞いてくれたに決まっているだろう?」
そう叫んだ。
しかし、恭介が間髪入れずに
「いや! お前に寝込みを襲われるかもしれないからな!」
と言うと
「やだな~、そんな事しませんよ」
そう言って微笑む美咲に、恭介が疑いの眼差しを向ける。
すると美咲が横を向いて「チッ!」っと舌打ちをしたのを聞いて
「柳君? 今、舌打ちしなかったか?」
恭介が作り笑顔を浮かべて聞くと、美咲も作り笑顔を浮かべて
「やだ~、気のせいですよ~!」
と答えて微笑む。
そんな2人に
「でもさ、美咲。着替えはどうするんだ? 俺は男だからどうにでもなるけど、お前、大変だろう?」
と、修治が話に入って来た。
「え? 着替えなら持って来てるよ」
美咲が鞄を見せて得意気に微笑む。
「え? なんで?」
修治が驚いた顔をすると
「だって、今日は教授の家にお泊まりするつもりだったんだもん」
と言って、頬を染めた。
その様子を見て恭介は
「あの! 絶対に鍵の着いている部屋にしてもらえますか!」
そう言いながら、必死な形相で空に話しかけて来た。
空が2人の様子を見て
「あの……お2人は恋人なんですか?」
と聞くと、美咲は満面の笑顔で
「はい!」
と答えた。
そんな美咲に恭介は慌てて
「生徒です! 私は学校で教鞭を取っているので、彼女と彼は私の生徒なんです」
そう答えて、美咲を睨みつけた。
美咲が頬を膨らませていると
「空、こいつらずっと『教授~』ってやってたぞ!」
と、風太が座敷童子に抱き着いて真似をし始めた。
「あ……そうなんですね」
そう答えた空に、恭介は慌てて
「違います! 本当に、ただの教師と生徒です! 信じて下さい」
と、必死に弁解している。
「教授! そんなに否定しなくても、良いじゃないですか!」
頬を膨らませる美咲に
「良くない! 生徒に手を出す人間だと思われたくないからな」
そう言って美咲を睨んだ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
スラッシュ/キーダー(能力者)田母神京子の選択
栗栖蛍
キャラ文芸
雪の降る大晦日、京子は帰省中の実家で招集命令を受けた。
東京で大きな爆発が起きたという。
一人新幹線に飛び乗った京子はまだ15歳で、キーダーとして最初の仕事になるはずだった──。
事件は解決しないまま5年が過ぎる。
異能力者がはびこる日本と、京子の恋の行く末は──?
エピソード1は、そんな京子の話。
エピソード2と3は高校生の男子が主人公。同じ世界に住む二人のストーリーを経て、エピソード4で再び京子に戻ります。
※タイトル変えてみました。
『スラッシュ/異能力を持って生まれたキーダーが、この日本で生きるということ。』→『スラッシュ/キーダー(能力者)田母神京子の選択』
※カクヨム様・小説家になろう様・ノベリズム様にも同じものをアップしています。ツギクル様にも登録中です。
たくさんの人に読んでいただけたら嬉しいです。
ブクマや評価、感想などよろしくお願いします。
1日おきの更新になりますが、特別編など不定期に差し込む時もあります。
つくもむすめは公務員-法律違反は見逃して-
halsan
キャラ文芸
超限界集落の村役場に一人務める木野虚(キノコ)玄墨(ゲンボク)は、ある夏の日に、宇宙から飛来した地球外生命体を股間に受けてしまった。
その結果、彼は地球外生命体が惑星を支配するための「胞子力エネルギー」を「三つ目のきんたま」として宿してしまう。
その能力は「無から有」。
最初に付喪としてゲンボクの前に現れたのは、彼愛用の大人のお人形さんから生まれた「アリス」
その後も次々と(主にアリスの)欲望によって、付喪を生み出していくゲンボク。
さあ、爺さん婆さんばかりの限界集落から、ちょっとおかしい日常を発信だ!
『元』魔法少女デガラシ
SoftCareer
キャラ文芸
ごく普通のサラリーマン、田中良男の元にある日、昔魔法少女だったと言うかえでが転がり込んで来た。彼女は自分が魔法少女チームのマジノ・リベルテを卒業したマジノ・ダンケルクだと主張し、自分が失ってしまった大切な何かを探すのを手伝ってほしいと田中に頼んだ。最初は彼女を疑っていた田中であったが、子供の時からリベルテの信者だった事もあって、かえでと意気投合し、彼女を魔法少女のデガラシと呼び、その大切なもの探しを手伝う事となった。
そして、まずはリベルテの昔の仲間に会おうとするのですが・・・・・・はたして探し物は見つかるのか?
卒業した魔法少女達のアフターストーリーです。
【未完】妖狐さんは働きたくない!〜アヤカシ書店の怠惰な日常〜
愛早さくら
キャラ文芸
街角にある古びた書店……その奥で。妖狐の陽子は今日も布団に潜り込んでいた。曰く、
「私、元は狐よ?なんで勤労なんかしなきゃいけないの。働きたいやつだけ働けばいいのよ」
と。そんな彼女から布団を引っぺがすのはこの書店のバイト店員……天狗と人のハーフである玄夜だった。
「そんなこと言わずに仕事してください!」
「仕事って何よー」
「――……依頼です」
怠惰な店主のいる古びた書店。
時折ここには相談事が舞い込んでくる。
警察などでは解決できない、少し不可思議な相談事が。
普段は寝てばかりの怠惰な陽子が渋々でも『仕事』をする時。
そこには確かに救われる『何か』があった。
とある街の片隅に住まう、人ならざる者達が人やそれ以外所以の少し不思議を解決したりしなかったりする短編連作。
……になる予定です。
怠惰な妖狐と勤勉な天狗(と人とのハーフ)の騒がしかったりそうじゃなかったりする日常を、よろしれば少しだけ、覗いていってみませんか?
>>すごく中途半端ですけど、ちょっと続きを書くのがしんどくなってきたので2話まででいったん完結にさせて頂きました。未完です。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
水鏡
古紫汐桜
キャラ文芸
都市伝説などの話を扱うオカルト雑誌の編集社に所属している、カメラマンの杉野冬夜に一通の招待状が届く。
その招待状をきっかけに坂巻遥、渡瀬幸太の二人も巻き込み、1000年の時を超えた美しくも悲しい悲劇が再び蘇ろうとしていた。
1000年の悲しい鎖に縛られた二人が出会った時、止まっていたはずの歯車が動き出す。
愛は憎しみを超えるのか?
憎しみが愛を超えるのか?
様々に入り組んだ感情が支配する中、冬夜の出す答えとは……?
マーちゃんの深憂
釧路太郎
キャラ文芸
生きているもの死んでいるものに関わらず大なり小なり魔力をその身に秘めているものだが、それを上手に活用することが出来るモノは限られている。生まれつきその能力に長けているものは魔法使いとして活躍する場面が多く得られるのだが、普通の人間にはそのような場面に出会うことも出来ないどころか魔法を普通に使う事すら難しいのだ。
生まれ持った才能がなければ魔法を使う事すら出来ず、努力をして魔法を使えるようになるという事に対して何の意味もない行動であった。むしろ、魔法に関する才能がないのにもかかわらず魔法を使うための努力をすることは自分の可能性を極端に狭めて未来を閉ざすことになる場合が非常に多かった。
しかし、魔法を使うことが出来ない普通の人たちにとって文字通り人生を変えることになる世紀の大発明が今から三年前に誕生したのだ。その発明によって魔力を誰でも苦労なく扱えるようになり、三年経った今現在は日本に登録されている魔法使いの数が四千人からほぼすべての国民へと増加したのだった。
日本人の日本人による日本人のための魔法革命によって世界中で猛威を振るっていた魔物たちは駆逐され、長きにわたって人類を苦しめていた問題から一気に解放されたのである。
日本のみならず世界そのものを変えた彼女の発明は多くの者から支持され、その名誉は永遠に語り継がれるであろう。
設定・用語解説は別に用意してあります。
そちらを見ていただくとより本編を楽しめるとは思います。
「マーちゃんの深憂 設定・用語集」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/863298964/650844803
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる