風の声 森の唄

古紫汐桜

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出会い

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「もう、教授ったら照れちゃって……」
美咲が恭介の腕に絡み付くと、恭介はその度に美咲の身体を引き剥がした。
何度も繰り返されるその様子を、興味深々で見ていた風太は、修治の腕から逃れると
「教授~」
と言いながら、座敷童子に抱き着いた。
すると座敷童子が風太を剥がし、再び抱き着くという美咲の真似を無邪気にし始めたのだ。
すると恭介は美咲を睨み
「ほら、見てみなさい! きみがそういう事をするから、子供が真似するじゃないですか!」
と怒った。
美咲はそんな恭介の態度にしゅんとすると
「だって……」
と呟き、不満そうな顔をしている。
そんな美咲を恭介が再び睨むと、風太が思い出したように
「あ! お前らを見つけた事を空に伝えなくちゃ!」
そう叫んだのだ。
その言葉に座敷童子が頷くと、風太が指笛を鳴らした。
すると風が唸り、突風が吹き抜けたのだ。
「きゃ~!」
驚いてスカートを押さえて美咲が悲鳴を上げると、突然、風太達の前に空が現れたのだ。
さっきまで居なかった人間が突然現れ、美咲達がビックリしているのを他所に
「空、見つけたよ!」
と言うと、無邪気な笑顔を浮かべて風太と座敷童子が空に駆け寄った。
空は風太と座敷童子の頭を撫でると
「ありがとう、風太。座敷童子」
と言って微笑んだ。
「え! あの人、今、何処から現れたの?」
美咲が驚いて叫ぶと、空が3人の顔を見て顔を硬らせた。
「あなた……」
恭介を見て固まる空に、恭介が空の顔を見て不思議そうな顔をする。
美咲は2人の顔を見て、慌てて恭介の腕を引っ張り
「教授、そろそろ帰りましょう」
と呟くと
「あぁ……そうだな。しかし、帰れないんだよ」
そう呟いた恭介に
「え!」
っと、美咲や修治が反応する前に空が驚いた顔をした。
そんな空の反応に、恭介は恐縮しながら
「あ……すみません。実は帰ろうとして、何度も帰り道に向かっているのに此処に戻ってしまうんですよ」
と話すと、空が頭を抱えて
「もしかしたら、いつもより早く出発なされたのかもしない」
そう呟いて、その場にヘタリ込んでしまった。
そんな空の様子に
「あの……大丈夫ですか?」
と、空を心配して背中に触れようとした恭介の手を遮り、美咲が
「あの、大丈夫ですか?」
と言いながら空の背中に触れた。
「あ……すみません、取り乱したりして」
慌てて美咲を見上げた空に、美咲は胸騒ぎがした。
年齢は20代後半くらいで、見た感じは可もなく不可もない平凡な顔立ちをしているが、彼女が纏う空気が普通の人では無いと肌で感じた。
ザワザワとする胸騒ぎを隠し、美咲は笑顔を浮かべていた。
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