花火

古紫汐桜

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年下のくせに②

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男性社員に可愛がられているらしく、ここぞとばかりに主張されてうんざりしていた。
今日も残業確定だな~って思っていたら
「あの……すみません」
と、彼がひょっこり顔を出して
「情シスですけど、勝手にチャットシステム入れて勤務中にやり取りしている方が居るんで、困るんですけど」
って言い出した。
その瞬間、友利さんがヤバいって顔をした。
「あ、今、アンインストールしても無駄なんで。友利さん、勤務中に他部署の人とチャットツールで遊んでるってクレームきてるんですよね」
飄々と話す彼に、部長が困惑した顔をした。
「あの……、注意するのもいいですけど、きちんと双方の意見を聞くべきじゃ無いんですか?あと、最近のジョブカード。全部、鮫島さんが作ってますよ。残業されてるんで、俺、帰りが遅くなって困ってるんで」
と言い残し、去って行った。
その後、情シスから友利さんのチャットシステムの件が明るみになり、彼女は厳重注意になった。
しかし、私も手を貸していた事になるので、ダメ書類は本人にやり直しさせるようにと言われた。
でもさ、散々お願いして無視されて、鮫島がいじめてるってなったから、自分でやり出したのに……。
その件は無視されてしまうらしい。
仕方ないのかな……って溜め息を吐いて、会社近くの公園で溜め息を吐いていた。
本社の今の部署に所属してから、社内に居場所が無くて、一人で天気の良い日は公園で食事をしていた。
遅い昼休みを取っていると
「やっぱりここですか…」
呆れた顔をした彼が立っていた。
私はちょうど口に入れたおにぎりを詰まらせ、慌てて飲み物を口にする。
「どうして社内で食べないんですか?冬になったら寒くないですか?」
相変わらず、感情が全く掴めない無表情な彼に
「まぁ……その時は近場に食べに行くよ。それより何?」
と訊くと
「いや、別に……」
とだけ答えて踵を返し、ビルへと戻り掛けた。
「あ!」
私が慌てて声を掛けると、彼は「なにか?」とでも言いたそうな顔で振り向いた。
「さっきはありがとう。その…助かりました」
そう伝えると、彼は眉を少しだけ動かして
「別に、鮫島サンの為じゃないんで」
と呟く。
(あれ?私の名前、知ってるんだ)
驚いて彼の顔を見上げると
「三島」
と呟いた。
「え?」
「俺の名前。ちゃんと覚えて」
そう言って私に顔を近付けて来た。
(近い、近い!)
と、慌てて身体を後ろに反らすと、彼は小さく笑って
「何、意識してるんですか?真っ赤になって……。鮫島サンって、案外可愛いんですね」
と言われてしまった。
(ムカつく!年下の癖に生意気な!)
私がムッとしいていると、彼は私の顔を見て吹き出した。
「鮫島さんって、本当に思った事が顔に出ますよね」
そう言って笑う彼の笑顔が、私の胸をドキリと高鳴らせた。
その時、ファイルを持つ彼の左薬指に、銀色に輝く指輪があるのに気が付いた。
(……まぁ、綺麗な子だから、結婚してて当たり前か)
ふとガッカリした気持ちになった自分に驚いてしまい、大きく首を横に振る。

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