勿忘草~尚也side~

古紫汐桜

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初恋

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   そんな俺も小学校5年生になる頃には、すっかり健康体になっていた。
みちるは段々と女の子らしくなり、中学に上がる頃には、みちるが好きだと言う奴等の声がチラホラ聞こえ始めた。
それでもみちるは変わらず
「尚ちゃん!」
って、俺に笑顔を向けてくれた。
みちるの隣は、いつまで俺の場所なんだろう?と思いながら隣を歩いていた。
「尚ちゃん?」
頭1つ小さなみちるの、大きな瞳が俺を見上げる度に胸が軋んだ。
みちる……俺はみちるが居てくれて、楽しいも苦しいも切ないも愛おしいも……全部、全部きみから教えてもらった。
そして、初めて自分の中の『男』を意識したのも、みちるだった。
夏服のみちるが眩しくて、真っ直ぐにみちるを見られなくなった俺。
こんな気持ちを知られたくなくて、必死に隠す為にみちるを避けてしまった事があった。
そんな俺を必死に追い掛けてくれて
「嫌だよ!尚ちゃんがみちるから離れるなんて、絶対に嫌だよ。尚ちゃんはみちるが嫌いになったの?直すから!悪い所を直すから……みちるを嫌いにならないで……」
泣いて俺にしがみついたみちる。

怖かった……。
俺のこの手が、いつかみちるの細い身体を砕いてしまいそうで……。

ギクシャクしていた夏。
みちるがアイスを食べながら、俺に手を振った。
「尚ちゃん!担任がみんなにアイス買ってくれたから、早く貰ってきなよ」
そう叫んだみちるの隣に並び、みちるの手にあるアイスを1口悪戯心で食べてみた。
すると、みちるの顔が真っ赤に染まる。
「なななな……尚ちゃん!尚ちゃんの分もあるんだから、そっち食べてよ!!」
みちるの反応に、もしかして……って淡い期待を抱く。
「俺、みちるのアイスが食べたい」
窓辺でそう言うと、みちるが真っ赤な顔を首まで真っ赤にして俺を見つめた。
「尚ちゃん……それって……」
そう呟いたみちるに
「みちる、好きだよ」
と呟いた。
みちるは大きな目を益々大きく見開き、俺の顔を見つめた。
そして大きな瞳から大粒の涙を流し
「不意打ちは狡いよ~」
って泣き出した。
思い返せば、いつもみちるを泣かせていたのは、俺だった。

この日、俺はみちるの「幼馴染み」から、「彼氏」に昇格した。
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