野花のような君へ

古紫汐桜

文字の大きさ
上 下
28 / 53

そうだ!会いに行こう!!!!!

しおりを挟む
あの日から、診療所が休みの日はハルさんのお店に行くようになった。
何故か、その度に蔦田さんが漏れなく着いて来るのが意味分からなかったけど……。
なんだかんだとバタバタしていて、僕はすっかり兄達の事を忘れてしまっていた。
そんな土曜日の事だった。
診察が一通り終わり、診療所を閉めていた時だった。
「困ります!診療時間終わってますから!」
診察室のPCの電源を切り、白衣を脱いでハンガーに掛けていた時に外が騒がしくなる。
どうしたんだろう?と思った時、診察室のドアが荒々しく開いた。
「創、家に戻るぞ」
腕を勝兄さんに掴まれ、引き摺られる。
必死に抵抗して、掴まれるものに必死に捕まった。
「嫌だ!帰らない!!僕は、兄さん達のオモチャじゃない!!!」
抵抗しながら叫んだ時だった。
診療所のドアが荒々しく開き
「警察呼びました。今すぐ創先生を離さないなら、貴方達を誘拐容疑で訴えますよ。嫌がる創先生の叫び、外にも聞こえてましたからね」
息を切らせ、蓮君が立っていた。
「蓮君……」
驚いて呟くと
「お前、次から次へと新しい男をタラシこみやがって……」
そう言うと、僕の頬を叩こうと手を振り上げた。
叩かれる!と、目を閉じた瞬間
「痛い痛い痛い!」
と、勝兄さんの声が響く。
驚いて見上げると、蓮君に腕をひねり上げられていた。
「叩かれたら痛いんですよ!そんな事、子供だって知ってる。家に帰ってママに教育してもらえ!」
そう言うと、蓮君は勝兄さんの腕をひねり上げたまま外に放り出した。
外で待っていた秀一兄さんの車に乗り込む勝兄さんを見下ろしながら
「次に此処へ来たら、容赦無く訴えてやる!」
蓮君の声が響く中、サイレンの音が鳴り響いた。
すると
「蓮君、大丈夫?」
と近所の人達も駆け出して来て、辺りが軽いプチパニック。
兄さん達が舌打ちして、荒々しく去って行くのを茫然と見ていると、警察車両が止まり、近所の人達が僕を巻き込まないように
「毎日、不審車両が来て怖いわ~」
「ナンバー控えたから、お巡りさん取り締まって下さいね」
と、警察官に口々話をしている。
どうやら警察に連絡したのは、蓮君では無く近所の人だったらしい。
そんな騒ぎの中、蓮君は診療所のドアを閉めようとしたのを制して
「僕が……、きちんと話をして来ます」
そう言って、事情聴取をする警察官に歩み寄る。
「お騒がせしてすみません。不審車両は、僕の兄達です」
そう切り出し、この日、僕は警察官に兄達の被害届を出した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

家族

むちむちボディ
BL
新しく家族となった外熊父親と外熊兄との物語です。

離したくない、離して欲しくない

mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。 久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。 そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。 テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。 翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。 そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

ヤバい薬、飲んじゃいました。

はちのす
BL
変な薬を飲んだら、皆が俺に惚れてしまった?!迫る無数の手を回避しながら元に戻るまで奮闘する話********イケメン(複数)×平凡※性描写は予告なく入ります。 作者の頭がおかしい短編です。IQを2にしてお読み下さい。 ※色々すっ飛ばしてイチャイチャさせたかったが為の産物です。

珈琲のお代わりはいかがですか?

古紫汐桜
BL
身長183cm 体重73kg マッチョで顔立ちが野性的だと、女子からもてはやされる熊谷一(はじめ)。 実は男性しか興味が無く、しかも抱かれたい側。そんな一には、密かに思う相手が居る。 毎週土曜日の15時~16時。 窓際の1番奥の席に座る高杉に、1年越しの片想いをしている。 自分より細身で華奢な高杉が、振り向いてくれる筈も無く……。 ただ、拗れた感情を募らせるだけだった。 そんなある日、高杉に近付けるチャンスがあり……。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

処理中です...