野花のような君へ

古紫汐桜

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そうだ!会いに行こう!

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あれから僕達は付き合うようになり、兄達の一件もあってはじめと同棲を始めた。
お互い手探りで関係を進め、ようやく恋人らしくなってきたかな?と思い始めた矢先に、はじめのおじい様が大怪我をしたと連絡が入り、取るものも取らずにはじめは一旦帰省した。
1度は病院に行った後、はじめのスマホから連絡は入ったものの、おじい様が怪我しておばあ様が心配だから……と山に帰ったきり連絡が無い。
おそらくはじめの事だから、僕のスマホだと知らない番号には出ないから……とか何か考えて、連絡して来ないんだろう。
そもそも、だとしても診療所に電話して来ても良いとは思う。
……かと言って、あいつにそんな応用力があったら僕達の関係もややこしくなったりはしなかったよな……って思う。
不器用で優しい、人を思いやれるあいつだから好きになったけど、こういう時は腹が立つ!
部屋の主を失った部屋のドアを開けると、部屋の真ん中で大の字になって寝ているはじめの姿を思い出す。
はじめは気付いて無いけど、何度か夜中に目を覚まして、本当にアイツが居るのか確認した事がある。
ベッドを用意すると言ったのに
「いや!そんな負担は掛けられません!」
って、頑なに布団で寝ていたはじめ。
何度かお腹を出して寝ていて、蹴飛ばしていた掛け布団を掛け直した。
そんな時に限って
「創さん」
って寝言で呼ぶもんだから、何度か心臓が縮み上がった。
でも、恐る恐る顔を覗き込むと
「創さん……大好きです」
そう言って、へにゃりと笑って爆睡している。
そんな時、胸をギュッと鷲掴みされたような気持ちになる。
「僕も大好きだよ……」
そう囁いてはじめの頬にキスを落としても、すぅすぅと寝息を立てて全く気付かない。
こんな日々が続けば良いと、ずっと願っていたけど……。
荷物が少ない、整理されたはじめの部屋を見つめて溜め息を一つ落とした。


「こんにちは」
   はじめが帰省してからというもの、お店が定休日の月曜日以外は、毎日、何故か診療所に定期便が来るようになった。
「あ!蓮君、今日のケーキは何?」
受付の田崎さんがワクワクした顔で言うと
「今日はモンブランなんですよ」
と、明らかなる営業スマイルで答え
「高杉先生には、これ」
ってお弁当を手渡される。
「毎日大変だろう?はじめには上手く言っておくから、無理しないで良いよ」
苦笑いする僕に
「熊さんとの約束なんで」
とだけ言うと
「じゃあ、又明日」
そう言い残して去って行く。
どうやらはじめから「創さんを頼む」と言われたらしく、律儀に毎日お弁当を届けに来てくれている。
不思議な事に、はじめがいなくなったら義兄2人が押しかけて来るかと思いきや、静かで驚いている。
(後日、蓮君とハルさんが常連さんにお願いして、怪しい男性二人組を見たら木漏れ日に連絡するようにしていたと知る)
静かだと、静かなりに考えてしまうのははじめの事ばかり。
そんな時、診療所が休みの日曜日。
我が家のインターフォンがけたたましく鳴り響く。
インターフォンの画面を覗くと、珍客で驚いて1Fの玄関を開けた。
「こんにちは!高杉様、お時間ありますか?」
玄関には、はじめのバイト先で仲良くしていた……確か友也とか言ったかな?
彼が立っていた。
小柄で華奢だけど、何処か芯の通った瞳をした可愛らしい彼と、はじめはとても仲が良い。
(わんこ系っていうより、ほぼわんこ?)
そう思いながら彼を見ていると
「高杉様?」
って、不思議そうな顔で僕を見上げた。
ハッと我に返り
「うん、大丈夫だけど……どうしたの?」
と聞き返すと
「熊さんの件なんですけど……」
そう言って
「ハルちゃんの店でお話しさせてもらっても良いですか?」
と言われたのだ。
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