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最終話

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そんな蓮君に、ハルさんが怒った顔をして
「れ~ん~!」
と、シルバートレイで頭を叩くと、強引に蓮君の頭を下げさせて
「本当に……いつもうちの蓮が失礼ばかりして、すみません」
って頭を下げている。
蔦田さんは特に気にする訳でも無く
「私は全然気にしてないから、大丈夫だよ」
と言って、にっこり笑っている。
……が、ハルさんの手を掴み
「又、デートしてくれればね」
ってウインクした。
すると、蓮君が物凄い形相で
「あぁ!ふざけんなクソジジイ!」
と叫んだ瞬間、ハルさんがシルバートレイで蓮君の頭を叩いた。
「もう!蓮がバカな事ばっかりやるから、このトレイベコベコだよ!」
って怒ってる。
驚いて一部始終見ていると
「あ、これ、この店の名物だから」
そう言って友也が笑ってる。
「名物?」
驚く俺に、創さんも苦笑いして
「僕も最初見た時は驚いたけど、本当に名物みたいだよ」
って苦笑いしていた。
俺のハルさんのイメージは、いつも優しくてふんわりした感じだから驚いた。
すると創さんのスマホが鳴り出し
「あ、ごめん。ちょっと席を外すね」
そう言うと、創さんはスマホを耳に当てながらお店の外へと出て行った。
俺がその様子を見ていると、突然俺の隣に蔦田さんが座ってニコニコした顔で俺の顔を見ている。
「あの……?」
戸惑う俺に
「いや~、あの創君が高杉の家を出て苗字を変えたって聞いた時は驚いたけど、きみが創君の相手だったんだね」
そう呟く蔦田さんの顔を思わず凝視してしまう。
「あ!誤解しないでね。私は創君のような
タイプは全然好みじゃないから。どちらかと言ったら、きみの方が好みかな?」
って言いながら、俺の手を握り締めた。
「え!あの!」
戸惑っていると
「尚寿さん、何してるんですか」
スマホを片手に、創さんが怖い顔で蔦田さんの頭を掴んでいる。
「え?創君が居ない間に、口説こうかな~って」
「冗談でも笑えないので、止めてもらえませんか!」
そう言い残し
「あ!すみません……」
と再びスマホ片手に外へ飛び出して行った。
「ふふふ……」
楽しそうに笑う蔦田さんを見ていると
「ごめんね。私の知っている創君ってさ、いつも冷めた目をしてたからね。あんなに生き生きとした表情で、しかも私の頭を掴むとか…」
そう言うと、楽しそうに笑っている。
「私と創君はね、親同士が知り合いでね。親が主催するパーティーやらなんやらで良く顔を合わせたよ」
そう言うと、お店の外からこちらを気にしながら通話している創さんに視線を向けて
「いつも端の方でつまらなそうに立ってたよ。綺麗な顔立ちをしているのに、何処か寂しげで悲しそうな目をしていた。私と年齢が近いのもあって、多少は会話したけど、誰も寄せ付けない雰囲気をしていた」
と続けた。
「ずっと……高杉の家の犠牲になるんじゃないかって心配だったんだ。そんな彼が、高杉の名前を捨てたと噂で聞いてね。何があったのかと心配していたら、このお店で偶然、創君に会ったんだ。見違えるように変わっていて、『あぁ、良い人が出来たんだ』って安心したんだよ」
蔦田さんの言葉に驚いていると
「え?じゃあ、蔦田さんは創先生とずっと前からの知り合いだったんだ」
驚く友也に、蔦田さんは小さく微笑み
「まぁね。でも、彼にとっては嫌な事ばかりの頃の知り合いだからね。どう、声を掛けて良いのか迷っていたんだ。そしたら、まさか此処でしょっ中話題に出ていた『はじめ』君が創君の相手だったので驚いたよ」
そう言った。
「しかも、お揃いの指輪なんてしているし」と付け加えると
「ねぇ、はじめ君。きみはもしかして、創君に自分は相応しくないとか思っていないかい?」
と、突然確信を突かれて驚く。
「日本人が謙虚なのは良いことだけど、もっと自信を持って良いと思うよ。創君が愛しているのは、紛れもなくきみだけだ」
真っ直ぐに見つめられて言われて戸惑うと
「きみが自分を否定すればするだけ、傷付くのは創君なんだ。どういう事かわかるかい?」
蔦田さんの言葉に首を横に振ると
「創君はあれで、中々不器用な子だ。それでもきみに対して、精一杯愛情表現をしている。でも、そんなきみが自信なさそうにしていると『自分の愛情が足りないのか?』とか『信じてもらえないのは、自分がダメだからじゃないのか?』と思ってしまうんだよ」
そう言われて、俺は俯いた。
ハルさんに嫉妬して、俺が自分の殻に閉じこもりそうになった時の創さんを思い出した。
「それにね、きみが自分を卑下するって事は、創君を否定する事にもなるんだよ」
そう言われて俺は膝の上で握り拳を握った。
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