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最終話
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「はじめは知らないかもしれないけど……」
そう呟いて、創さんが口を結ぶ。
「え?何ですか?」
途中で会話を止めた創さんの顔を覗き込むと、胸倉を掴まれてキスをされ
「もう少し、自分の魅力を自覚しようね」
って微笑まれた。
後から知った話では、どうやら喫茶店に来ているお客様で俺を狙っているお客様を、創さんが魔性の笑顔で追っ払っていたらしい。
友也はそれを見て、単に女好きのヤバい人だと思っていたのだと聞いた。
友也とは、週に一回電話で会話をしている。
女子では無いからそんなに長話はしないけど、近況やハルさんと蓮君の話。
時々、喧嘩をしたりすると健人君の愚痴を聞いたりしている。
そんな中、俺にハルさんからお店に出す珈琲の焙煎をしてみないか?という話が舞い込んできた。
前のお店で教わってはいて、接客が苦手な自分は裏方をマスターしようと思っていたのを思い出す。
創さんに相談してみると
「はじめがやりたい事は、邪魔しないよ」
って笑顔で言いながら、機材一式をカタログで選ばせて創さんが買ってきた。
やっぱり俺は街には行けないんだ……って思っていると
「次の日曜日、ハルさんの店に一緒に行こうか」
って創さんが言い出した。
「良いの?」
驚いて聞くと
「言っただろう?はじめのやりたい事の邪魔はしないって。そろそろ、豆の試飲して欲しいんじゃ無いかな?って思っていたんだけど?」
そう言って、創さんが苦笑いする。
豆の焙煎する機械を買ってもらい、最初は中々自分の気に入った香りや味にはならなくて……。
失敗作を創さんに飲んでもらっていたり、自分で消費していた。
子供達は、香りは良いのに苦い飲み物を美味しそうに飲む俺達を変な目で見ていたっけ。
その度、創さんは得意げに
「大人になったらわかるよ」
って答えていた。
特に、この山の山頂から湧き出る清水は軟水なので珈琲に持ってこいだったのもラッキーだった。
湧水を汲んで車に積み、ハルさんの為に焙煎した珈琲を積んでお店へと向かう。
木目のドアを開けると
「いらっしゃいませ」
って、ハルさんの笑顔が飛び込んで来た。
「はじめくん!いらっしゃい」
極上の笑顔で微笑むハルさんの美貌に、一瞬目眩がしそうだった。
この人は……こんなに綺麗で色気があるのに、何故にずっと1人だったんだろう?と謎になる。
「珈琲豆、持って来てくれたの?」
ワクワクした顔で言われて、俺は湧き水を運び終えるとハルさんにコーヒー豆を手渡した。
「わぁ!凄く良い香りだね!」
普段から綺麗なハルさんがふわりと微笑む。
「好きな場所に座ってて。今、珈琲入れるから」
ハルさんがそう言ってカウンターの中に戻ると
「すみません。湧き水まであんなに持参頂いて」
と、蓮君が俺と創さんが座る席に来た。
今日、防災用のポリタンク満杯にお水を入れて、3つ持って来たのだ。
「これ、このまま飲んでも美味しい水だよ」
はしゃぐハルさんが可愛いなぁ~って見ていたら、創さんに耳を引っ張られた。
「僕の目の前で、堂々と浮気か?」
目を据わらせる創さんに
「浮気って……」
って呟くと
「聞き捨てならないですね。いくら熊さんでも、ハルだけは譲れないので」
殺気を感じる蓮君は初めてで
「え?そんなつもり無いよ」
と苦笑いする。
「いいですか!熊さん。あなたは、俺や健人が驚異に感じる位にはハルや友也に大事にされています!創先生も、ちゃんと熊さんを捕まえてて下さいね」
って、蓮君が言い切った。
俺が唖然としていると、お店のドアが開き
「くまさ~ん!」
と叫びながら、友也が入って来た。
そして俺に抱き着くと
「こっちに来るってハルちゃんから聞いて、バイト休んじゃったよ!」
笑顔で言う友也の背後から、怖い顔をした健人君が現れた。
「ひっ!」
びびる俺に
「健人!お前、熊さんにそんな態度するなら帰れよ!」
友也の言葉に、益々健人君の眉間に皺が寄る。
え?何?俺が居ると空気悪くなる?
思わずソワソワして落ち着かなくなると
「こら!そこの3人!はじめ君が居心地悪そうにしてるだろう!」
そう言って、ハルさんがシルバートレイで頭を叩いて行く。
そう呟いて、創さんが口を結ぶ。
「え?何ですか?」
途中で会話を止めた創さんの顔を覗き込むと、胸倉を掴まれてキスをされ
「もう少し、自分の魅力を自覚しようね」
って微笑まれた。
後から知った話では、どうやら喫茶店に来ているお客様で俺を狙っているお客様を、創さんが魔性の笑顔で追っ払っていたらしい。
友也はそれを見て、単に女好きのヤバい人だと思っていたのだと聞いた。
友也とは、週に一回電話で会話をしている。
女子では無いからそんなに長話はしないけど、近況やハルさんと蓮君の話。
時々、喧嘩をしたりすると健人君の愚痴を聞いたりしている。
そんな中、俺にハルさんからお店に出す珈琲の焙煎をしてみないか?という話が舞い込んできた。
前のお店で教わってはいて、接客が苦手な自分は裏方をマスターしようと思っていたのを思い出す。
創さんに相談してみると
「はじめがやりたい事は、邪魔しないよ」
って笑顔で言いながら、機材一式をカタログで選ばせて創さんが買ってきた。
やっぱり俺は街には行けないんだ……って思っていると
「次の日曜日、ハルさんの店に一緒に行こうか」
って創さんが言い出した。
「良いの?」
驚いて聞くと
「言っただろう?はじめのやりたい事の邪魔はしないって。そろそろ、豆の試飲して欲しいんじゃ無いかな?って思っていたんだけど?」
そう言って、創さんが苦笑いする。
豆の焙煎する機械を買ってもらい、最初は中々自分の気に入った香りや味にはならなくて……。
失敗作を創さんに飲んでもらっていたり、自分で消費していた。
子供達は、香りは良いのに苦い飲み物を美味しそうに飲む俺達を変な目で見ていたっけ。
その度、創さんは得意げに
「大人になったらわかるよ」
って答えていた。
特に、この山の山頂から湧き出る清水は軟水なので珈琲に持ってこいだったのもラッキーだった。
湧水を汲んで車に積み、ハルさんの為に焙煎した珈琲を積んでお店へと向かう。
木目のドアを開けると
「いらっしゃいませ」
って、ハルさんの笑顔が飛び込んで来た。
「はじめくん!いらっしゃい」
極上の笑顔で微笑むハルさんの美貌に、一瞬目眩がしそうだった。
この人は……こんなに綺麗で色気があるのに、何故にずっと1人だったんだろう?と謎になる。
「珈琲豆、持って来てくれたの?」
ワクワクした顔で言われて、俺は湧き水を運び終えるとハルさんにコーヒー豆を手渡した。
「わぁ!凄く良い香りだね!」
普段から綺麗なハルさんがふわりと微笑む。
「好きな場所に座ってて。今、珈琲入れるから」
ハルさんがそう言ってカウンターの中に戻ると
「すみません。湧き水まであんなに持参頂いて」
と、蓮君が俺と創さんが座る席に来た。
今日、防災用のポリタンク満杯にお水を入れて、3つ持って来たのだ。
「これ、このまま飲んでも美味しい水だよ」
はしゃぐハルさんが可愛いなぁ~って見ていたら、創さんに耳を引っ張られた。
「僕の目の前で、堂々と浮気か?」
目を据わらせる創さんに
「浮気って……」
って呟くと
「聞き捨てならないですね。いくら熊さんでも、ハルだけは譲れないので」
殺気を感じる蓮君は初めてで
「え?そんなつもり無いよ」
と苦笑いする。
「いいですか!熊さん。あなたは、俺や健人が驚異に感じる位にはハルや友也に大事にされています!創先生も、ちゃんと熊さんを捕まえてて下さいね」
って、蓮君が言い切った。
俺が唖然としていると、お店のドアが開き
「くまさ~ん!」
と叫びながら、友也が入って来た。
そして俺に抱き着くと
「こっちに来るってハルちゃんから聞いて、バイト休んじゃったよ!」
笑顔で言う友也の背後から、怖い顔をした健人君が現れた。
「ひっ!」
びびる俺に
「健人!お前、熊さんにそんな態度するなら帰れよ!」
友也の言葉に、益々健人君の眉間に皺が寄る。
え?何?俺が居ると空気悪くなる?
思わずソワソワして落ち着かなくなると
「こら!そこの3人!はじめ君が居心地悪そうにしてるだろう!」
そう言って、ハルさんがシルバートレイで頭を叩いて行く。
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