珈琲のお代わりはいかがですか?

古紫汐桜

文字の大きさ
上 下
45 / 75

ハルさんの言葉

しおりを挟む
「ケーキ……美味しいです」
呟いた俺に、ハルさんは微笑んで
「本当に?蓮も健人君も友也君も、このケーキを食べて大きくなったからね」
3人に微笑むハルさんは本当に綺麗で、そんな時は父親でもあり母親みたいな顔になる。
「蓮もこの子達みたいな時があったのになぁ~」
あっという間にケーキを食べてしまった子供達を見て呟いたハルさんに、蓮君がハルさんの手を握り真顔で
「いつでも子作りOKだぞ!」
と言って、友也と健人に
「子供達の前で、下品な発言禁止!」
って殴られてる。
すると男子チームが目を輝かせて
「下品!下品!」
と言いながら、蓮君を指差して笑ってる。
「お前ら!指さすな!」
そう叫び、子供達と追い掛けっこを始めた。
「キャー!」
と叫びながらはしゃぐ子供を、蓮君は捕まえた子から高く抱き上げる。
いつの間にか子供達と打ち解けて
「家の中じゃ、物を壊しちゃうから外に行こう!」
と叫ぶと、子供達が
「おー!」
って叫んで外に飛び出して行った。
「じゃあ、俺も付き合ってくるから、後片付け任せて良い?」
玄関で靴紐を結ぶ友也に、ハルさんは笑顔を浮かべて
「はしゃぎすぎて、怪我しないようにな!」
と、ケーキ皿を片付けながら答えた。
俺とハルさんが食器を片付けていると、ちょうど爺ちゃんが猟から戻って来た。
あんなに片足を引きずっていたのに、子供達が来てからすっかり元気になってしまい、お医者さんもびっくりしていた。
「あ!初めまして。小野瀬健人です」
俺達の手伝いをしていた健人君が、爺ちゃんに挨拶をすると
「あぁ!あんたが!」
そう言って微笑んだ。
健人君は、爺ちゃんが仕留めた鹿やイノシシを買ってお店で出してくれているのだ。
今日、ここに来たのも、本当は健人君が爺ちゃんと今後の話をする為だった。
そのついでに、うちの畑で採れた野菜や果物を、健人君やハルさんのお店で買ってもらっているので、婆ちゃんが泊まりに来いと誘って、みんなが遊びに来たのだ。
俺とハルさんで洗い物をしている間に、婆ちゃんは夕飯の下ごしらえをしている。
外からは子供達のはしゃぐ声に、蓮君と友也の笑い声が聞こえる。
創さんはその間に、残っている仕事を片付けに離れに戻った。
俺達は台所で片付けを終えると、ハルさんは優しい笑顔を浮かべ
「熊さんが、何で優しいのか分かった気がするよ」
と、ポツリと呟いた。
「こんな自然豊かな場所で、お爺様とお婆様の愛情に育まれて育ったから、誰に対しても真っ直ぐで優しいんだね」
そう言うと
「創先生が、あんなに表情豊かで穏やかな顔になったのも、理解出来るよ」
と言って微笑んだ。
俺はハルさんの言葉に、なんか熱いモノが込み上げて来て泣きそうになった。
創さんは俺との生活を守る為に、クリニックを閉じて爺ちゃんが通う総合病院の心療内科医になった。
片道1時間の通勤も、決して嫌がらずに通ってくれている。
仕事が大変だろうに、家の事も子供達の事も一緒にやってくれる。
時々、こんなに幸せで良いのだろうか?と考えてしまう。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

ファントムペイン

粒豆
BL
事故で手足を失ってから、恋人・夜鷹は人が変わってしまった。 理不尽に怒鳴り、暴言を吐くようになった。 主人公の燕は、そんな夜鷹と共に暮らし、世話を焼く。 手足を失い、攻撃的になった夜鷹の世話をするのは決して楽ではなかった…… 手足を失った恋人との生活。鬱系BL。 ※四肢欠損などの特殊な表現を含みます。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

一夜限りで終わらない

ジャム
BL
ある会社員が会社の飲み会で酔っ払った帰りに行きずりでホテルに行ってしまった相手は温厚で優しい白熊獣人 でも、その正体は・・・

【完結】偽装結婚の代償〜リュシアン視点〜

伽羅
BL
リュシアンは従姉妹であるヴァネッサにプロポーズをした。 だが、それはお互いに恋愛感情からくるものではなく、利害が一致しただけの関係だった。 リュシアンの真の狙いとは…。 「偽装結婚の代償〜他に好きな人がいるのに結婚した私達〜」のリュシアン視点です。

【完結】友人のオオカミ獣人は俺の事が好きらしい

れると
BL
ずっと腐れ縁の友人だと思っていた。高卒で進学せず就職した俺に、大学進学して有名な企業にし就職したアイツは、ちょこまかと連絡をくれて、たまに遊びに行くような仲の良いヤツ。それくらいの認識だったんだけどな。・・・あれ?え?そういう事ってどういうこと??

群青の三日月

雨水林檎
BL
病弱な兄と傍で絵を描き続ける弟。 いつか離さなければならない背中を、追い求めて未だ手を伸ばす。 弟×兄の、一次創作BL小説です。

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

【完結】神様はそれを無視できない

遊佐ミチル
BL
痩せぎすで片目眼帯。週三程度で働くのがせいっぱいの佐伯尚(29)は、誰が見ても人生詰んでいる青年だ。当然、恋人がいたことは無く、その手の経験も無い。 長年恨んできた相手に復讐することが唯一の生きがいだった。 住んでいたアパートの退去期限となる日を復讐決行日と決め、あと十日に迫ったある日、昨夜の記憶が無い状態で目覚める。 足は血だらけ。喉はカラカラ。コンビニのATMに出向くと爪に火を灯すように溜めてきた貯金はなぜか三桁。これでは復讐の武器購入や交通費だってままならない。 途方に暮れていると、昨夜尚を介抱したという浴衣姿の男が現れて、尚はこの男に江東区の月島にある橋の付近っで酔い潰れていて男に自宅に連れ帰ってもらい、キスまでねだったらしい。嘘だと言い張ると、男はその証拠をバッチリ録音していて、消して欲しいなら、尚の不幸を買い取らせろと言い始める。 男の名は時雨。 職業:不幸買い取りセンターという質屋の店主。 見た目:頭のおかしいイケメン。 彼曰く本物の神様らしい……。

処理中です...