珈琲のお代わりはいかがですか?

古紫汐桜

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チビっ子対創さん

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「一、お客様は?」
子供達に引っ張られ母屋に入ると、婆ちゃんが台所から顔を出した。
「今、創さんが荷物を離れに持って行ってるんじゃないかな?これ、お土産で頂いたケーキ。今日来た、ハルさんの手作りみたいだよ」
そう言って婆ちゃんにケーキを手渡す。
「お客様は何人?」
ケーキの箱を開けながら、婆ちゃんが聞いてきた。
「う~ん、4人かな?あ!俺の分は要らないから、みんなで分けて」
そう言うと
「はじめ先生も一緒に食べよう!」
って、手を引っ張られる。
「折角だから、みんなで分て食べりゃ~良いでしょうが!」
そう言って婆ちゃんがケーキを見事に切り分けている。
生クリームが綺麗に施されたケーキに、子供達の目が輝いている。
「一、創とお客様もお呼びして」
婆ちゃんの声に俺が立ち上がると
「美咲も行く~!」
と、一番小さな美咲ちゃんが俺の手を握り締める。
すると
「いつも美咲ばっかりはじめ先生を独り占めして、ずるい!」
そう言って、小学生組の奈々美と綾が俺にしがみつく。
すると
「はじめ先生は、創先生のだからダメ!」
って、後ろから創さんが抱き着いて来た。
「創先生は、夜、はじめ先生を独り占めしてるんだから、お昼間は私達のはじめ先生だもん!」
小さな女子3人相手に
「残念でした!はじめ先生は、ずっと創先生のなんです!」
と、言い争いをしている。
……いつも見慣れた光景だけど、創さんがとんだ面白キャラになっているのが不思議だ。
すると、玄関でその様子を呆れた顔して見ている4人。
そんな4人を見て、婆ちゃんが
「こら!創!お客様放置しちゃダメじゃろう!」
そう叫ぶと
「じゃあ、俺達がおもてなしするよ!」
って言って、男子チームが座布団を敷いて戸惑う4人を引っ張って来た。
「凄い!きちんと教育されてるね。蓮、負けるんじゃないの?」
とハルさんが言うと、蓮君は苦笑いして
「放っとけ!」
そう呟いた。
婆ちゃんが15人分に切ったケーキをテーブルに並べ、子供達がワクワクした顔で待っている。
「じゃあ、作って下さったハルさんに」
と俺が言うと、ハルさんが驚いた顔をした瞬間
「ハルさん!ありがとうございます!」
そう言って、ハルさんにお辞儀をしてから
「いただきます!」
と言うと、フォークを手に食べ始めた。
「うまっ!」
「美味し~い!」
口々に叫ぶ子供達の笑顔に、ハルさんの顔がふにゃりと緩む。
そんなハルさんに、蓮君の顔もふわりと和らぐ。
(あ!子供は許されるのか)
俺がそんな事を考えて2人を見ていると
「はじめ先生、ケーキ美味しいよ」
って、美咲ちゃんが俺に自分のケーキの1部をフォークで差して差し出した。
「美咲ちゃん。先生の分はあるから、自分の分は食べな」
そう言うと、美咲ちゃんは首を横に振って
「はじめ先生、食べて!」
って差し出す。
「分かった、じゃあ1口もらうね」
と言って口を「あ~ん」と開けた瞬間、美咲ちゃんの手を強引に自分の方に向けて創さんが食べてしまった。
「何で創先生が食べちゃうの!」
怒る美咲ちゃんに、創さんは美咲ちゃんのフォークを持つと、自分のケーキから美咲ちゃんが差し出した位の大きさにケーキを差して
「はい!返すね、美咲ちゃん」
って微笑む。
そんな創さんに、友也が
「大人気ない……」
と呟いた。
すると創さんは友也を睨み
「子供でも、ライバルには容赦しない主義なんでね」
と言うと、ぎっ!と俺を睨み
「はじめも、子供だからって優しい顔ばかりするな!」
って言われてしまった。
苦笑いする俺に、4人の顔が幽霊でも見たような顔になっている。
「全く…、創のヤキモチは今更じゃないだろうに……。あんたらも、こんなのに驚いてらダメだよ!甘い甘い」
って婆ちゃんは言うと
「このバナナタルトより、甘いね!」
そう言って笑ってる。
頂いたケーキはバナナタルトらしく、タルト生地の上にバナナのピューレ。その上にふわりと優しい甘さの生クリームが飾られている。味はハルさんらしい優しい甘さで、1口食べただけで優しい気持ちになる美味しさ。
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