28 / 75
これからの僕達④
しおりを挟む
風呂に入る前に、客用布団と自分の布団を部屋に敷き、着替えを持って浴室へ向かう。
母屋では、ばあちゃんと創さんの笑い声が聞こえて、大好きな人達の笑い声に思わず口元が綻ぶ。
「幸せ」って、案外こんな事なのかもしれないと、俺は心の中がフワフワとお祭りで売っていた綿あめみたいに甘くて柔らかい気持ちになる。
創さんと出会って、ただ遠くから見つめて居るだけだったあの頃から、まだそんなに経過していないのに……。
不思議な気持ちになる。
誰かを好きになるって、切なかったり苦しかったりするけど、こんな風に温かくて優しい気持ちになるんだと教えてもらった。
浴室のドアを開け、身体を洗ってから湯船に浸かる。
………静かな時間が流れて行く。
きっと母屋では、まだばあちゃんと創さんは楽しそうに会話しているのかな?
なんて考えながら、ゆっくりと瞼を伏せた瞬間
「はじめ!」
と、俺を呼ぶ声が窓から聞こえた。
驚いて、思わず足を滑らせて湯船に沈んでしまう。
驚いて窓を見ると、創さんが窓から顔を出して
「僕も火を見ていてあげるよ。これを入れれば良いんだろう?」
と、創さんが枝をポイポイ投げ入れる。
「創さん!あんまり枝を入れ過ぎると……!」
そう叫んだのも束の間。
火が勢い良く燃えて、お湯がみるみる熱くなる。
「あっちぃ!」
慌てて湯船から飛び出す俺に
「え!大丈夫?」
って、創さんが窓から顔を出した。
湯船から飛び出した俺、全裸な訳ですよ。
しかも、全身茹でダコのように真っ赤になっていると
「あ……ごめん。マジで熱いんだ」
そう言いながら、創さんが俺を見て吹き出した。
「茹でダコみたいに真っ赤になってる」
そう呟いた後
「ところではじめ、丸見えだけど誘ってるの?」
微笑む笑顔は綺麗なのに、視線は俺の下半身をガン見して来た。
「創さん!何処見てるんですか!」
俺は慌てて窓を閉めて鍵を掛けた。
湯船に水を入れ、温度を調節していると
「はじめ……怒ってる?」
コンコンっと窓ガラスを叩き、創さんが呟く。
「怒ってますよ!揶揄うのは止めて下さいって、いつも言ってますよね?」
湯加減を確認しながら、再び湯船に浸かる。
すると創さんが
「……ごめん」
ぽつりと呟かれ、窓を開けて外を見ると、創さんが壁に凭れて空を見上げていた。
「ここは良い所だな」
そう呟く創さんの横顔はいつもの儚さは全く無くて、色々なモノを脱ぎ捨てた1人の高杉創という人間がそこに居た。
「ちょこちょこ遊びに来れば良いじゃないですか」
窓から顔を出して呟くと
「あ?何言ってるんだよ!僕はここに婿に来るんだよ」
そう言って俺に目線を動かした。
創さんの言葉の意図を掴めずに居ると、創さんは座っていたベンチから立ち上がり
「火の当番は要らないみたいだから、先に部屋に戻ってるから」
そう言って片手を上げると、離へと歩いて行ってしまった。
俺はただ、黙って創さんの後ろ姿を見送っていた。
母屋では、ばあちゃんと創さんの笑い声が聞こえて、大好きな人達の笑い声に思わず口元が綻ぶ。
「幸せ」って、案外こんな事なのかもしれないと、俺は心の中がフワフワとお祭りで売っていた綿あめみたいに甘くて柔らかい気持ちになる。
創さんと出会って、ただ遠くから見つめて居るだけだったあの頃から、まだそんなに経過していないのに……。
不思議な気持ちになる。
誰かを好きになるって、切なかったり苦しかったりするけど、こんな風に温かくて優しい気持ちになるんだと教えてもらった。
浴室のドアを開け、身体を洗ってから湯船に浸かる。
………静かな時間が流れて行く。
きっと母屋では、まだばあちゃんと創さんは楽しそうに会話しているのかな?
なんて考えながら、ゆっくりと瞼を伏せた瞬間
「はじめ!」
と、俺を呼ぶ声が窓から聞こえた。
驚いて、思わず足を滑らせて湯船に沈んでしまう。
驚いて窓を見ると、創さんが窓から顔を出して
「僕も火を見ていてあげるよ。これを入れれば良いんだろう?」
と、創さんが枝をポイポイ投げ入れる。
「創さん!あんまり枝を入れ過ぎると……!」
そう叫んだのも束の間。
火が勢い良く燃えて、お湯がみるみる熱くなる。
「あっちぃ!」
慌てて湯船から飛び出す俺に
「え!大丈夫?」
って、創さんが窓から顔を出した。
湯船から飛び出した俺、全裸な訳ですよ。
しかも、全身茹でダコのように真っ赤になっていると
「あ……ごめん。マジで熱いんだ」
そう言いながら、創さんが俺を見て吹き出した。
「茹でダコみたいに真っ赤になってる」
そう呟いた後
「ところではじめ、丸見えだけど誘ってるの?」
微笑む笑顔は綺麗なのに、視線は俺の下半身をガン見して来た。
「創さん!何処見てるんですか!」
俺は慌てて窓を閉めて鍵を掛けた。
湯船に水を入れ、温度を調節していると
「はじめ……怒ってる?」
コンコンっと窓ガラスを叩き、創さんが呟く。
「怒ってますよ!揶揄うのは止めて下さいって、いつも言ってますよね?」
湯加減を確認しながら、再び湯船に浸かる。
すると創さんが
「……ごめん」
ぽつりと呟かれ、窓を開けて外を見ると、創さんが壁に凭れて空を見上げていた。
「ここは良い所だな」
そう呟く創さんの横顔はいつもの儚さは全く無くて、色々なモノを脱ぎ捨てた1人の高杉創という人間がそこに居た。
「ちょこちょこ遊びに来れば良いじゃないですか」
窓から顔を出して呟くと
「あ?何言ってるんだよ!僕はここに婿に来るんだよ」
そう言って俺に目線を動かした。
創さんの言葉の意図を掴めずに居ると、創さんは座っていたベンチから立ち上がり
「火の当番は要らないみたいだから、先に部屋に戻ってるから」
そう言って片手を上げると、離へと歩いて行ってしまった。
俺はただ、黙って創さんの後ろ姿を見送っていた。
5
お気に入りに追加
129
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる