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これからの僕達④

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風呂に入る前に、客用布団と自分の布団を部屋に敷き、着替えを持って浴室へ向かう。
母屋では、ばあちゃんと創さんの笑い声が聞こえて、大好きな人達の笑い声に思わず口元が綻ぶ。
「幸せ」って、案外こんな事なのかもしれないと、俺は心の中がフワフワとお祭りで売っていた綿あめみたいに甘くて柔らかい気持ちになる。
創さんと出会って、ただ遠くから見つめて居るだけだったあの頃から、まだそんなに経過していないのに……。
不思議な気持ちになる。
誰かを好きになるって、切なかったり苦しかったりするけど、こんな風に温かくて優しい気持ちになるんだと教えてもらった。
浴室のドアを開け、身体を洗ってから湯船に浸かる。
………静かな時間が流れて行く。
きっと母屋では、まだばあちゃんと創さんは楽しそうに会話しているのかな?
なんて考えながら、ゆっくりと瞼を伏せた瞬間
「はじめ!」
と、俺を呼ぶ声が窓から聞こえた。
驚いて、思わず足を滑らせて湯船に沈んでしまう。
驚いて窓を見ると、創さんが窓から顔を出して
「僕も火を見ていてあげるよ。これを入れれば良いんだろう?」
と、創さんが枝をポイポイ投げ入れる。
「創さん!あんまり枝を入れ過ぎると……!」
そう叫んだのも束の間。
火が勢い良く燃えて、お湯がみるみる熱くなる。
「あっちぃ!」
慌てて湯船から飛び出す俺に
「え!大丈夫?」
って、創さんが窓から顔を出した。
湯船から飛び出した俺、全裸な訳ですよ。
しかも、全身茹でダコのように真っ赤になっていると
「あ……ごめん。マジで熱いんだ」
そう言いながら、創さんが俺を見て吹き出した。
「茹でダコみたいに真っ赤になってる」
そう呟いた後
「ところではじめ、丸見えだけど誘ってるの?」
微笑む笑顔は綺麗なのに、視線は俺の下半身をガン見して来た。
「創さん!何処見てるんですか!」
俺は慌てて窓を閉めて鍵を掛けた。
湯船に水を入れ、温度を調節していると
「はじめ……怒ってる?」
コンコンっと窓ガラスを叩き、創さんが呟く。
「怒ってますよ!揶揄うのは止めて下さいって、いつも言ってますよね?」
湯加減を確認しながら、再び湯船に浸かる。
すると創さんが
「……ごめん」
ぽつりと呟かれ、窓を開けて外を見ると、創さんが壁に凭れて空を見上げていた。
「ここは良い所だな」
そう呟く創さんの横顔はいつもの儚さは全く無くて、色々なモノを脱ぎ捨てた1人の高杉創という人間がそこに居た。
「ちょこちょこ遊びに来れば良いじゃないですか」
窓から顔を出して呟くと
「あ?何言ってるんだよ!僕はここに婿に来るんだよ」
そう言って俺に目線を動かした。
創さんの言葉の意図を掴めずに居ると、創さんは座っていたベンチから立ち上がり
「火の当番は要らないみたいだから、先に部屋に戻ってるから」
そう言って片手を上げると、離へと歩いて行ってしまった。
俺はただ、黙って創さんの後ろ姿を見送っていた。
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