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これからの俺達②
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母屋に入ると
「田舎料理しか作れないから、お口に合うか分からないけど…」
そう言って、ばあちゃんが創さんにお茶碗を差し出した。
創さんはばあちゃんからお茶碗を受け取り、3人で食卓を囲んで和やかに食事が始まる。
創さんは、ばあちゃんのお味噌汁を口すると
「あぁ……はじめ君のお料理は、おばあ様の味だったんですね」
って微笑んだ。
するとばあちゃんは
「おばあ様なんてやめてちょうだい。ばあちゃんで良いよ。私はそうね……」
と呟いたばあちゃんに
「創です。僕の名前は、創です」
って答えた。
ばあちゃんは創さんの言葉に
「じゃあ、創って呼んでも良い?」
そう言って微笑んだ。
「え!ばあちゃん、それはあまりにも馴れ馴れしい…」
と言い掛けた俺を、創さんは片手で制して
「はい!是非、創と呼んで下さい」
そう言って微笑んだのだ。
するとばあちゃんは嬉しそうに笑って
「孫が二人になった気分だね」
って言って、創さんにあれこれ食事を勧めた。
3人で食べた食事は思いの外美味しくて、特に創さんがとても楽しそうにしているのが俺は本当に嬉しかった。
俺達3人以外、誰も来ないこんな山奥で、創さんはとても穏やかに笑っている。
俺がそんな創さんの笑顔に見惚れていると
「じゃあ、明日は山に山菜を取りに行くかい?」
なんて言って、ばあちゃんと創さんが盛り上がっている。
「え! 山菜って! 創さん、朝早いんですよ!」
驚く俺に、創さんはムッとした顔をすると
「今、ばあちゃんに朝5時起きって聞いたよ! そんなに寝ていたいなら、はじめだけ寝てれば良いだろう」
って、創さんが言い出した。
いやいやいや!
都会暮らししか知らない創さんが、山菜採りなんて行けるわけないだろう! ってばあちゃんの顔を見た。
するとばあちゃんは笑顔を浮かべたまま
「はじめ、創は此処での暮らしを体験してみたいそうだよ。だったら、やらせてあげればよいだろう?子供じゃないんだから」
と言って、呑気にお茶を飲んでいる。
結局、山菜採りに付き添う事になり、洗い物をしようと立ち上がった俺に
「僕も手伝うよ」
そう言って、創さんが隣に並んだ。
家事なんて一切してこなかった創さんが、どうしたんだろう?って考えながら、俺が洗い上げた食器を創さんが拭いてテーブルに置き、ばあちゃんが片付けるという流れになった。
食器を片付け終わり、俺がお風呂を沸かしに薪を取りに外へと出ると
「お風呂、薪で沸かすんだって?」
そう言って、創さんが俺の後を着いて来た。
火をつけて薪を竹の火吹き棒で拭いていると、パチパチと音を立てて火が燃え始める。
どのくらい時が経過したのだろうか。
俺と創さんは黙ったまま、並んで燃える炎を見つめていた。沈黙を破ったのは、創さんだった。
「はじめは……ずっと、こういう生活をして来たんだな」
ぽつりと呟く。
真っ直ぐに火を見つめる創さんの横顔が綺麗で、思わず手を伸ばそうとすると
「創! あんた、先にお風呂に入りなさい」
って、ばあちゃんが現れた。
さっきと言い、今回と言い。
あまりのタイミングの良さに、思わずばあちゃんに恨みの視線を送ってしまう。
するとばあちゃんは
「はじめ! 創がいくら綺麗だからって、お風呂は覗いちゃダメだからね!」
って言われて
「覗くか!」
と、思わず叫び返してしまった。
すると創さんとばあちゃんは顔を見合わせて、吹き出して大笑いしている。
街に居た頃には見た事の無い、創さんの屈託の無い笑顔が愛おしいと思った。
「田舎料理しか作れないから、お口に合うか分からないけど…」
そう言って、ばあちゃんが創さんにお茶碗を差し出した。
創さんはばあちゃんからお茶碗を受け取り、3人で食卓を囲んで和やかに食事が始まる。
創さんは、ばあちゃんのお味噌汁を口すると
「あぁ……はじめ君のお料理は、おばあ様の味だったんですね」
って微笑んだ。
するとばあちゃんは
「おばあ様なんてやめてちょうだい。ばあちゃんで良いよ。私はそうね……」
と呟いたばあちゃんに
「創です。僕の名前は、創です」
って答えた。
ばあちゃんは創さんの言葉に
「じゃあ、創って呼んでも良い?」
そう言って微笑んだ。
「え!ばあちゃん、それはあまりにも馴れ馴れしい…」
と言い掛けた俺を、創さんは片手で制して
「はい!是非、創と呼んで下さい」
そう言って微笑んだのだ。
するとばあちゃんは嬉しそうに笑って
「孫が二人になった気分だね」
って言って、創さんにあれこれ食事を勧めた。
3人で食べた食事は思いの外美味しくて、特に創さんがとても楽しそうにしているのが俺は本当に嬉しかった。
俺達3人以外、誰も来ないこんな山奥で、創さんはとても穏やかに笑っている。
俺がそんな創さんの笑顔に見惚れていると
「じゃあ、明日は山に山菜を取りに行くかい?」
なんて言って、ばあちゃんと創さんが盛り上がっている。
「え! 山菜って! 創さん、朝早いんですよ!」
驚く俺に、創さんはムッとした顔をすると
「今、ばあちゃんに朝5時起きって聞いたよ! そんなに寝ていたいなら、はじめだけ寝てれば良いだろう」
って、創さんが言い出した。
いやいやいや!
都会暮らししか知らない創さんが、山菜採りなんて行けるわけないだろう! ってばあちゃんの顔を見た。
するとばあちゃんは笑顔を浮かべたまま
「はじめ、創は此処での暮らしを体験してみたいそうだよ。だったら、やらせてあげればよいだろう?子供じゃないんだから」
と言って、呑気にお茶を飲んでいる。
結局、山菜採りに付き添う事になり、洗い物をしようと立ち上がった俺に
「僕も手伝うよ」
そう言って、創さんが隣に並んだ。
家事なんて一切してこなかった創さんが、どうしたんだろう?って考えながら、俺が洗い上げた食器を創さんが拭いてテーブルに置き、ばあちゃんが片付けるという流れになった。
食器を片付け終わり、俺がお風呂を沸かしに薪を取りに外へと出ると
「お風呂、薪で沸かすんだって?」
そう言って、創さんが俺の後を着いて来た。
火をつけて薪を竹の火吹き棒で拭いていると、パチパチと音を立てて火が燃え始める。
どのくらい時が経過したのだろうか。
俺と創さんは黙ったまま、並んで燃える炎を見つめていた。沈黙を破ったのは、創さんだった。
「はじめは……ずっと、こういう生活をして来たんだな」
ぽつりと呟く。
真っ直ぐに火を見つめる創さんの横顔が綺麗で、思わず手を伸ばそうとすると
「創! あんた、先にお風呂に入りなさい」
って、ばあちゃんが現れた。
さっきと言い、今回と言い。
あまりのタイミングの良さに、思わずばあちゃんに恨みの視線を送ってしまう。
するとばあちゃんは
「はじめ! 創がいくら綺麗だからって、お風呂は覗いちゃダメだからね!」
って言われて
「覗くか!」
と、思わず叫び返してしまった。
すると創さんとばあちゃんは顔を見合わせて、吹き出して大笑いしている。
街に居た頃には見た事の無い、創さんの屈託の無い笑顔が愛おしいと思った。
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