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2人の距離感③

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「いらっしゃいませ」
その週の日曜日。
創さんと、ハルさんのお店を訪れた。
ハルさんは目を見開き
「はじめ君! 久しぶり」
と、満面の笑みを浮かべた。
そんな天使の笑顔を浮かべたハルさんに、隣の創さんが額にピキっと怒りマークを付けた。
「?」
疑問の視線を向けると、創さんが俺の背中を握り締めて俯く。
(人見知り発動かな?)
と、深く考えずに座席に着くと
「熊さん、久し振り。顔見られなくなって、心配してたんだよ」
微笑む蓮君にも、何故か創さんは額に怒りマークを増やして口をへの字にしている。
「ブレンド二つで良いの?」
笑顔でオーダーを取る蓮君に
「創さんもブレンドで良いですか?」
と聞くと、無言で頷いた。
やっぱり…創さんには知らない人の中に連れてくるのには無理があったかな?って考えていると
「ちょっとトイレに行ってくる」
そう言って創さんが席を立った。
ちょっと不機嫌そうな創さんを心配していると
「くっまさ~ん、愛されてますね!」
そう言いながら、蓮君が背中に乗ってきた。
「え!」
驚いた顔をしていると
「蓮、はじめ君が気付く訳無いでだろう?  ちゃんと教えてあげたら?」
って、クスクスと笑っている。
俺が二人に疑問の視線を向けると
「嫉妬してたじゃん、高杉センセ!」
そう言って創さんが座っていた席に座り、蓮君が微笑む。
「くまさん、人が良さそうだから心配してたんだけど…安心したよ。ちゃんと好かれてるじゃないか」
俺の前の席で、頬杖を付いてニコニコしている。
「そんな…俺なんか…」
そう呟いた瞬間、蓮君にデコピンされる。
驚いて蓮君の顔を見ると
「謙虚なのも結構だけど、少しは相手の気持ちを受け止めてあげないと可哀想だよ」
って言われてしまった。
蓮君の言葉に疑問の視線を向けると、創さんが目を据わらせて戻って来た。
慌てて蓮君が席を退くと
「何?  きみはあの美人さんじゃなくて、イケメン目当てだった訳?」
と、目を益々座らせる。
「え?  蓮君?  彼とは、単なる友達ですよ」
そう言って苦笑いを浮かべると
「ふ~ん……」
と、創さんが目を座らせたまま俺を睨む。
するとタイミング良く
「お待たせ致しました。ブレンド2つです」
そう言ってコーヒーを俺と創さんの前に蓮君が置いてくれた。
前から思ってたけど、蓮君の指はスラリと長くて綺麗だから、配膳されるとコーヒーが尚更美味しそうに見える。
「蓮君はいつも爪を短くしていて、身だしなみがちゃんとしてるよね」
って関心して呟くと
「あぁ……、ハルを傷付けないようにな」
と、普通の顔で答えた。
その瞬間、ハルさんが飛んで来て、シルバートレイで蓮君の頭を叩いた。
そして苦笑いを浮かべると
「ごめんね、下品な奴で……」
と言いながら、蓮君の耳を引っ張って連れて行ってしまう。俺がなんの事だろうと首を傾げていると、創さんは真っ赤な顔をして
「え?あの二人って……」
そう呟いた。
「あぁ……。蓮君とハルさんは、恋人同士ですよ」
俺の言葉に、創さんが絶句している。
「え?  あんなに堂々と?」
「はい。あ、ハルさんはあれで隠してるつもりらしいですけどね」
笑って答えた俺に、創さんは小さく微笑み
「だからここのコーヒーは、優しい味なんだな……」
そう呟いた。
「今日、連れて来てくれてありがとう」
創さんが、優しく俺に微笑み掛けた。
「創さんがハルさんや蓮君と仲良くなってくれたら、安心です」
微笑んで呟いた俺に、創さんは急に不安そうな顔をして
「はじめ……、消えたりしないよな?」
と、ぽつりと呟いた。
「消えるって、何処にですか? 俺は創さんのそばに居ますよ」
そう微笑み返した俺を、創さんは不安そうに見つめ返した。
……まさかこの後、創さんの不安が的中するなんて、この時の俺は予想だにしていなかった。
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