珈琲のお代わりはいかがですか?

古紫汐桜

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2人での生活

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「おはよう」
創さんと暮らし始めて1ヶ月が経過した。
朝はコーヒーだけの人だから、ヨーグルトにバナナを入れて差し出す。
寝室から出て来た創さんは、いつだってきちんとしている。
今も、かっちりとした白いシャツにグレーのパンツ姿だ。
一緒に暮らしてみて、創さんがダラダラしているのを1度も見た事が無い。
俺は1階の6畳程の部屋に住んでいて、結構、ダラダラしているが……。
創さんはいつも、一糸乱れぬ姿で部屋から現われる。
リビングで本を読みながらコーヒーを飲む姿は、朝日よりも眩しい。
「創さんは、いつもきっちりしてますよね」
ポツリと呟くと、朝日をバックにこちらを見た創さんの眩しさMAXだ。
「ん~、子供の頃からこういう生活だからな。良く分からないけど」
そう言って小さく微笑む。

一緒に暮らしてから、創さんは穏やかに笑うようになった。
いつもどこかピンっと糸が張った感じだった創さんに、少し余裕が生まれた感じだ。
あのくそ兄貴達も、俺が一緒に暮らし始めたのを聞いてからこの家に足を踏み入れなくなった。

 いつも通りにコーヒーを飲んだ後、今朝の朝食として出したヨーグルトを食べた創さんは顔をしかめ
「はじめ、コーヒーにヨーグルトは合わないな」
そう呟き、ショックを受けた俺の顔を見て、クスクスと笑っている。
「いつも、ありがとう」
そう言って頬にキスをされて、慌てて創さんの顔を見ると
「こっち見るな!」
って、真っ赤になっている。
相変わらず照れ屋の愛しい恋人に、俺は後ろからそっと抱き締める。
「今日、バイトは?」
「17時終わりなので、買い物して帰ります。何か食べたい物ありますか?」
「う~ん、任せる」
少し会話をして、そっと唇を重ねる。
「じゃあ、診察室に行くね」
毎朝のルーティンを終えると、創さんはリビングを出て軽やかに階段を降りて行く。
夢にまで見た好きな人との同居生活。
俺は創さんの生活に合わせて、診療所が休みの日にバイトを休みにしてもらった。
あのくそ兄貴達が、俺のいない間に襲ってくる可能性もあるからな!
俺と創さんの関係は、唇に触れるキスだけの清らかな関係だ。
俺は別に創さんの身体が目当てで付き合っている訳では無いから、それはそれで全然大丈夫なんだけど……。
時々、創さんが申し訳なさそうにするのが辛い。
俺は一緒にいられるだけで幸せなんだがな。
一度、未遂事件を起こした俺としては、創さんの気持ちを気付かないフリをする事くらいしか出来ない。
しかも、寸分の隙を与えない創さんに、俺自身、そういう気持ちになれないのも事実だったりする。
いつも鉄壁の壁を張り巡らせ、俺はその壁に寄り添ってる程度の関係なのかもしれないな……といつも思っている。
それでも、創さんが最大に譲歩して居ることも理解している。いつか、自然に創さんが俺の隣で笑えるようになれば良いと願わずにはいられなかった。
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