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下僕だけど…③

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友也は頬をポリポリと掻きながら
「熊さん、自分をそう思ってたんだ」
と呟いた。
はぁ?何が言いたいんだ?と、3人の顔を見てると
「あのさ……熊谷君、可愛い顔してるよ。確かに身体は大きいけど、その体格に反してその顔の小ささは羨ましいよ」
って、隣の美人が呟いた。
「そうそう!大体、身体がデカい奴って、蓮みたいに顔が長いよね」
「あぁ!」
友也の言葉に、蓮というイケメンが友也の胸ぐらを掴む。
「気にしてたんだ~」
苦笑いする友也に
「はいはい、蓮。その辺にしてあげて」
と、友也の健人が蓮というイケメンの腕を掴み、友也の胸ぐらから手を離す。
「はい、刺し盛りね。で、何の話?」
と、友也の隣にさりげなく立っている。
なんか……愛されてるって感じだな。
そう思いながら、ふと創さんを思い出した。
いつも、何を考えているのか分からない横顔。
多分、俺以外を近くには置いていないから、信頼はしてくれてるんだろうな……とは思う。
それとも……下僕だから?
ぼんやり考えていると
「飲み物、何にします?」
と、友也の健人が俺に微笑み掛けた。
イケメンの笑顔は、破壊力が凄い。
「あ、あの……烏龍茶で」
俯いて言うと
「え?熊さん、飲まないの?」
と、友也が俺の顔を覗き込む。
「酒……飲んだ事無いから……」
「了解、烏龍茶ね」
友也の健人はそう言うと、軽やかにカウンターへ戻ってグラスを出すと、烏龍茶を入れて戻って来た。
その間にも
「健人~、こっちにビール」
「健人~、メニュー見せて」
の声に
「はいよ」
って笑顔で答えて、俺に烏龍茶を持って来る前に、手書きのボード板をお客様に渡して、俺の前に烏龍茶を置くと、ビールを入れに戻りながらグラスが空いているお客様に
「お客様、お飲み物はどうなさいます?」
と、声を掛けている。
周りをよく見ていて、テキパキと無駄の無い動きをしていて尊敬の眼差しで見てしまう。
思わずガン見していたらしく
「熊さん!健人は俺のですよ!」
と、友也が顔を出して来た。
「いや……、良く働くなぁ~って。友也もそうだけど、フロア担当って凄いなぁ~と思ってさ……」
ポツリと呟いた俺に、友也は照れたらしく恥ずかしそうに頭をかいた。
「友也から聞いたけど……あんたがコーヒーを担当してから、客が増えたって。あんただって、自分の仕事をちゃんとしているんじゃねぇの?」
蓮というイケメンがポツリと呟く。
「え?」
驚く俺に
「そうなんだよ!それでね、今日、熊さんとハルちゃんを引き合わせたかったのは、ハルちゃんのコーヒーを熊さんに飲ませたくて!」
と、友也が叫んだ。
「え?僕のコーヒー?」
驚く美人に
「熊さんに、ハンドドリップ式のコーヒーを飲んで欲しくて!」
そう言って友也が微笑んだ。
「ほら、うちの店って機械じゃない?俺はやっぱり、ハルちゃんみたいなハンドドリップ式が好きだなぁ~」
と続けた。
「ハンドドリップ式なんですか?」
俺が隣の美人に訊くと
「あ、うん。うちは小さなお店だからね」
と頷き
「機械には機械の良さがあるじゃないか。毎日、同じクオリティでコーヒーが飲めるんだから」
そう続けた。
「俺も教わったけどさ~、ハルちゃんみたいに上手く入れられなかった~!」
「僕はもう、20年近くやってるからね」
美人の言葉に
「え!」
って驚くと
「あ!子供の頃からって意味だよ!」
と言われてホッとした。
「物心着いた時には、お店の中に居たからね。両親に教わって、小学生の高学年から家族のコーヒーを入れてたかな?」
懐かしむように目を細めて話す美人の話を真剣に聞いていると
「熊さんは、運動を何かしてたの?」
と、蓮というイケメンが聞いて来た。
「?いや、別に」
「え?それでその筋肉?」
そう言われて
「畑仕事してたから……」
と呟くと
「あ!そうか!あの美味しい野菜!」
隣の美人と蓮というイケメンが声を揃えて叫んだ。
俺が驚くと、友也が
「熊さんにお裾分けして貰った野菜とお肉、ハルちゃん達と食べたんだ」
って微笑んだ。
「そうか!お肉もジビエだよね?臭みも無くて、美味かった!」
隣の美人がそう言うと、蓮というイケメンも
「野菜も肉も上手かったよ!」
と叫んだ。
爺ちゃんと婆ちゃんが一生懸命作った野菜や、爺ちゃんの仕留めたジビエを2人が口々に褒めてくれて嬉しかった。
「あ、ありがとうございます」
照れ臭いけど、嬉しくてお礼を言うと
「こちらこそだよ!今日はそのお礼も兼ねてだから、食べてね」
って、3人に勧められた。
活気あるお店と、3人の気さくな感じが俺の人見知りをいつの間にか突破らってくれていた。
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