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過去②

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そんな俺の性癖を自覚させたのが、高校1年の時だった。
俺は爺ちゃんと婆ちゃんの畑の手伝いがあったので、部活には入らずに帰宅部だった。
早めに帰宅する為に裏道を通った時、神社の裏口から苦しそうな声が聞こえて来た。
誰かに虐められているのかもと思い、そっと近付いて助けようと思った俺の目に飛び込んで来たのは、男の先輩2人のSEXシーンだった。
俺の目を釘付けにしたのは、入れている先輩の方では無くて、入れられて喘いでいる先輩の方だった。
それまではずっと、性に対して疎いだけだと思っていた俺は、初めての夢精が入れられて喘いでいる先輩になって貫かれている夢だった。
正直、ショックだった。
自分の性癖は異常なんだと…。
知られたら、絶対に白い目で見られると隠して生きてきた。
こんな野山育ちと畑仕事で逞しいガタイの俺が、男性に挿入いれられたいだなんて。
そんな事を知られたら、絶対に笑われる。
元から人付き合いが苦手な俺は自分の性癖を知って、もっと自分の殻に閉じこもるようになった。
誰かに抱かれる事も無く、恋する事も無く俺は一生このままなんだと思って諦めて生きて来た。
どうせ学校を卒業したら、爺ちゃんと婆ちゃんと俺だけの山奥暮しになるから……と、そう思って生きて来た。
そんな俺は、高校を卒業して大学に進学。
生活費の足しにと初めた喫茶店のバイトで、窓際のきみ……高杉様に出会った。
初めて高杉様の姿を見た時、時が止まったように感じた。
彼が歩くだけで周りの景色が色付くように見えて、俺は一瞬で恋に堕ちた。
接客が出来ない俺は洗い場担当だから、彼に接する事は出来ない。洗い場から見える彼の横顔を、見ているだけで幸せだった。
高杉様の来店は、最初月に一回程度だった。
スーツ姿で現れて、いかにもエリートっぽい姿でパソコンのキーボードを叩いてた。
キーボードを叩く指が長くて綺麗だな~とか、時折、指を口元に当てる癖が色っぽいな~とか思って見ていた。
何か考えながらコーヒーを口元へ持って行った時、ふと俺と目が合った。
その時、全身の血が沸騰したみたいに熱くなった。
ドキドキと心臓が高鳴り、黒目がちの彼の瞳から目が離せなくなる。
縫い止められたように見つめていると、彼は流し目で小さく微笑みパソコンに視線を戻した。

それから来店頻度は月2回になり、いつしか私服で毎週土曜日に来るようになった。
初めて私服姿を見た時は、鼻血が出るかと思った。
白いシャツに細身のベージ系のパンツ姿。
色気がダダ漏れで、思わず帰る後ろ姿に
「ご馳走様でした」
と拝んでしまった程だ。
   その日から、高杉様には大変申し訳ないと思いながらも、おかずにさせて頂いたのは言うまでもない。

いつしか
「恋人は居るのかな?」
とか
「居たとしたらどんな風に抱くのだろう?」
とか考えるようになってしまっていた。

『はじめ』

あの声で名前を呼んで欲しい
あの綺麗な手で俺に触れて欲しい
あの綺麗な唇に触れてみたい


届かないと分かっているのに、求めてしまうのが恋なんだと知った。
目が無意識に追って、身体が、血が、細胞が求めてしまうのが恋なんだと……。
それならせめて、遠くから見つめているだけでも良いと思っていたんだ。……本当に。
だけど友也に気付かれていたとなれば、絶対に高杉様本人も気付いて居る筈。
……だとしたら、諦めるしか無いのかもしれない。
あの綺麗な唇から、拒絶の言葉を聞くくらいなら離れるべきなんだとそう覚悟を決めた。


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