モブでヘタレな俺だけど、異世界に召喚されたらキラキラ王子に溺愛されて困ってます。

母様の危機⑦

『人間ごときが、我の力で守護しているアレンの身体を作り替える事は出来ない！』
そう呟いた。
そしてゆっくり僕達を見ると
『お前等は何をしている？　シルヴァ王に頼まれた任務があるのであろう？　アレン、そやつはその木に結んでおけ。そのロープは、誰にも解けん』
と言い残し、僕達の前から姿を消した。
「父様と言い、白虎と言い……人遣いが荒くない？」
ブツブツと文句を言いながら、教会中に居る子供達をアレンとリアム団長と手分けして1箇所に集めた。
見ると、みんなガリガリで栄養失調みたいだった。
「国王は何をしているんだ！」
怒りに頭がカッとなるが、怯えた目をする子供達に笑顔を浮かべ
「今、声が出るようにして上げるからね」
そう言って、母様程の力は無いけど、領域治癒エリアヒールで子供達を一気に治療した。
その時に、僕は13号から聞かされたアレンの記憶も一緒に封印させてもらった。
13号から聞かされた話は、アレンには耐え難い事実だろう。
それが13号により、記憶を改ざんされていたとしても……だ。
封印するまで暗い顔をしていたアレンの顔も、元通りに戻ったのを確認してから
「さて、きみ達も一緒においで」
と僕が手を差し出すと
「おじいちゃんは？」
と、口々に子供達が言い出した。
「おじいちゃん？」
「そう！　あの小屋に居たおじいちゃんは、何処に行ったの？」
僕の言葉に、みんな口々に心配そうに聞いて来た。
「これから行く所に居るから、一緒に行こう」
そう言うと
「お願い、おじいちゃんを助けて！」
「おじいちゃん、僕達に自分の分のご飯を分けてくれたの」
「お熱が出ると、不思議な呪文で治してくれたの」
と、口々に訴えて来た。
子供達はみんな、呪いを掛けられた母様を心配しているようだった。
居なくなった母様らしき魔物を心配して泣き出した子供達に
「大丈夫だ、今、城で治療を受けている」
アレンが子供達の目線までしゃがみそう答えて頭を撫でると、子供達は真っ青な顔をして
「お城！　そんな……。おじいちゃん、殺されちゃうよ」
そう口々に言うと、再び泣きだしてしまう。
僕は近くに居た子供を抱き締め
「大丈夫だよ。僕達は、隣国の王家の人間なんだ。だから、きみ達が心配している人は僕達の国に居るから安心して」
そう答えるしか出来なかった。
母様はこんな生活の中でさえ、子供達を一番に考えていたのだろう。
するとアレンが何かを察知したらしく、急に剣を構えた。
『アレン、亜蘭。敵が近くまで来ている。一先ず、子供達と共に城に移動する』
アレンの剣から白虎が現れ、白虎がそう言った瞬間に辺りが光に包まれた。
眩しい光に目がくらまされ、次に気付いた時には僕の部屋に来ていた。
13号はリアム団長と共に、待っていた兵士達に連行され、子供達は目をパチクリさせて辺りを見回していた。
「あらあら！　お2人とも、いつの間にこんなにお子様を？」
孤児達だと分かっているのだろうに、そう言うと父様や僕達のお世話をしていたマリアが数人のメイド達を引き連れて現れ、子供達を連れて部屋を後にした。