モブでヘタレな俺だけど、異世界に召喚されたらキラキラ王子に溺愛されて困ってます。

古紫汐桜

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目覚めたら④

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綺麗な花が咲く庭園に着くと、アレンが
「俺の母親は、とても苦労した人だった。そんな母親が、いつも俺に話してくれた事があったんだ。母親の両親は不仲でね、争いが絶えなかったらしい。家ではいつも両親の言い争う声が絶えず、母親の母親……俺からしたら祖母だな。祖母は心を患っていたんだそうだ。俺の母親には、兄が居たそうでね。8歳で病死したんだそうだよ。嘆き悲しむ祖母を、祖父は「いつまで泣いている」と怒鳴ったそうだ。それまでは、仲の良い夫婦だったらしいが、祖母が深い悲しみに嘆く姿を見たくなかったばかりに怒鳴ってしまい、祖母はそこからおかしくなっていったそうだ。だから俺に、母親は『アレンは、人の痛みに寄り添える人でありなさい』と話していたんだ」
そう話し出した。
とても切ない話しに胸が痛む。
「実際、俺もこの国に単身で来た。まぁ、俺の場合は自国より良い待遇をしてもらえているけど……。それでも、王族に引き取られる前の生活を懐かしく思う事もあった」
ポツリと呟くアレンに、僕は自分が育った環境を思い出す。
街を歩けば、みんなが『亜蘭様』と気軽に笑顔で声を掛けてくれる。
気が付けば、僕の周りにはいつだって笑顔で溢れていた。
この国から出るという事は、それを全て失う事になるのだと今更ながら気が着いた。
ブルリと身体が震える。
この国を出たら、辛い時や悲しい時、嬉しい時も楽しい時も……今までのように父様や母様、デーヴィドにエリザも居ない場所で生きる事になるのだと実感した。
正直、不安だ。
……母様も、こんな思いを抱えながらこの世界に飛び込んだのだろう。
ふと、幼い頃に時々見掛けた風景を思い出した。
母様が空を見上げ、寂しそうにしている姿だ。
そんな時は、父様が必ず傍に居るようにしていたかけれど、母様は帰ることの出来ない自分の世界に思いを馳せていたのだろう。
「多朗様は……強いのでは無く、強くあろうとなさっているように見えるんだ」
ポツリと呟いたアレンの言葉に視線を向けると
「時折、脆い表情をなさる事があると……リアム団長が話していた。普段、強い多朗様が弱った姿を見せるのは、自分にだけだとリアム団長が話していたからね。ちょっと気になったんだよね」
そう言って笑うアレンに抱き着いた。
まだ家族になって短いのに、こんなにも僕達家族の事を考えてくれているのが嬉しかった。
そして、僕と年齢は変わらないのに、こんなに考え方がしっかりしている事が切なかった。
アレンはそうならざる得ない程、苦労して来たのだろう。
僕がギュッと抱き締めると
「亜蘭? どうしました?」
驚いた顔をするアレンに
「アレン、僕もアレンが僕を選んで良かったと思えるように頑張るからね。それから、又、王子様口調になってるよ」
そう言って微笑んだ。
アレンは慌てて口元に手を当てると
「気を付けないとつい……」
って言ってる姿が可愛い。
「普通、逆だと思うけどね」
笑う僕を抱き締めると
「亜蘭、愛しています」
と言って、そっとキスを落とした。
僕は逞しいアレンの胸に顔を埋め
「僕も愛してる」
そう答え、微笑んだ。
「父様と母様も、仲直りしていると良いね」
「そうですね」
僕達は、大好きな二人が仲直りしている事を祈っていた。
……が、事態は思わぬ方向に進んでしまうのだった。
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