上 下
169 / 197

目覚めたら①

しおりを挟む
「あ……亜蘭!」
 アレンの驚いた声に目が覚めた。
目を覚ますと、アレンが僕を見てベッドから転げ落ちていた。
「え? 何?」
目を擦りながら、何気なく部屋の鏡に視線を向けて思わず固まった。
僕の頭とお尻に、白い毛に黒の虎柄模様のケモ耳と尻尾が生えている。
「ぎゃー!」
思わず叫んだ僕は、身支度を整えて母様の部屋に駆け込んだ。
そこには、何故かマテオが母様の身体に巻き付いているじゃないか。
「母様! 大変なんだ!」
駆け込む僕達を、母様は落ち着いた顔で迎えると
「おぉ! 無事に神事は済んだんだな」
そう言って、呑気に紅茶を飲んでいる。
「母様、何を呑気に……。見てよ!僕の頭とお尻に耳と尻尾が……」
「そうだね。まぁ……昨日1日やってれば、そうなるよね」
母様の言葉に赤面すると
「アレン。これが君達、王族の力だよ」
と、呟いた。
「え?」
僕とアレンが驚いて呟くと
「亜蘭はもう、残念ながら龍神の加護は受けられなくなったんだ」
母様は続けて驚く話をした。
「え?」
「なんでマテオが此処に居ると思う? 亜蘭と分離したからなんだ。アレンと神事をした時、多分、性欲が抑えきれなかったんじゃないかな? それは、アレンの力を中和しようとしたからなんだと思う」
思ったより冷静な母様に
「もしかして……母様は知っていたの?」
思わずそう聞いていた。
でも母様は僕の問には答えず
「アレン、これで心置き無く亜蘭と一緒に暮らせる。良かったな……」
そう言うと、アレンの肩をポンっと叩いて小さく微笑んだ。
「さて、俺はシルヴァに報告しなくちゃならないから、お前達も朝食を取ったら父様の執務室に来なさい」
明らかにおかしい母様の態度に、思わずアレンと顔を見合わせる。
「母様、ちょっと待って……」
そそくさと部屋を後にしようとする母様の肩を掴むと、母様の目が潤んでいる。
「母様……」
「目にゴミが入っただけだ。気にするな」
僕の手を払い、母様がそそくさと部屋から出て行ってしまう。
いつもなら、どんな時も受け入れてくれる母様の異変に戸惑っていると
「もしかして多朗様は、こうなると分かっていて亜蘭を焚き付けたのではないだろうか……」
ポツリと呟くアレンに視線を向けると、アレンは何やらずっと考え込んでいる。
「分かっていたって……。じゃあ、なんで先に話してくれないの?」
「亜蘭からマテオの守護が無くなると知ったら、私達は神事を行っただろうか?」
アレンの言葉に息を呑む。
……答えは、否だ。
しかも、僕はアレン達王族を守護する神獣の力を得てしまったのだろう。
それは、母様達との別れを意味している。
此処は龍神が守護する世界で、僕は白虎の力を得たのだろう。
それは、アレン達の国を守護しなければならない事を意味している。
母様は恐らく、こうなる事を知っていたから……僕達を焚き付けて神事を執り行ったのだろう。
この事実を知る前の……、結婚式の後に神事を行っていたらと思うと、隣国の奴等が邪魔した理由が何となくわかったように思う。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

猫が崇拝される人間の世界で猫獣人の俺って…

えの
BL
森の中に住む猫獣人ミルル。朝起きると知らない森の中に変わっていた。はて?でも気にしない!!のほほんと過ごしていると1人の少年に出会い…。中途半端かもしれませんが一応完結です。妊娠という言葉が出てきますが、妊娠はしません。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

俺は成人してるんだが!?~長命種たちが赤子扱いしてくるが本当に勘弁してほしい~

アイミノ
BL
ブラック企業に務める社畜である鹿野は、ある日突然異世界転移してしまう。転移した先は森のなか、食べる物もなく空腹で途方に暮れているところをエルフの青年に助けられる。 これは長命種ばかりの異世界で、主人公が行く先々「まだ赤子じゃないか!」と言われるのがお決まりになる、少し変わった異世界物語です。 ※BLですがR指定のエッチなシーンはありません、ただ主人公が過剰なくらい可愛がられ、尚且つ主人公や他の登場人物にもカップリングが含まれるため、念の為R15としました。 初投稿ですので至らぬ点が多かったら申し訳ないです。 投稿頻度は亀並です。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

処理中です...