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攫われた当日(アレンside)②
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「さぁ……どうされますか?」
「行くから! 着いて行きますから!」
涙を流しながら言うと
「へぇ……愛ですね」
小さく笑い、俺に衣類を投げて渡した。
「それに着替えて下さい」
「え?」
「下着も全部です。指輪も必ず外して下さいね。この国は、この国の物から人物を探す事が出来る。特に指輪は、番同士を繋ぐ大事なアイテムなんですよ」
そう言われて、俺は指輪を見つめた。
『アレン、これは大切な指輪だ。絶対に肌身離さないようにな』
結婚式の後、多朗様から言われた言葉だ。
その時は意味が分からなかったけど、そういう意味だったのだと分かった。
衣類を着替え、床に倒れている亜蘭をベッドに寝かせる事は許可をもらった。
ガウンを着せ、ベッドに寝かせた亜蘭の頬が濡れていた。
「いつも泣かせてばかりで、ごめんな……亜蘭」
そっと頬の涙を拭い、頬にキスを落とす。
「さぁ、もう良いですか?」
そう言われ、頷くと指を鳴らされた。
意識が遠のき、俺はそいつの腕の中に倒れた。
自分の記憶にある話をすると、室内が水を打ったように静かになった。
そしてしばらくの沈黙の後
「キッモッ!」
両腕を摩り、亜蘭が叫んだ。
俺達が目を点にすると
「父様のファンってさ、なんでそんなにキモイ人が多いの?」
そう言い出した。
「何、太陽って? 何処が崇高? 隙あらば母様をベッドに連れ込もうとするような下半身バカなのに……」
亜蘭の溜め息混じりの言葉に、多朗様が吹き出した。
「多朗! 普通、そこは笑わずにフォローだよね?」
慌てるシルヴァ王に
「大体、父様が外面をカッコ良くしているのだって、母様に『シルヴァ、カッコイイ!』って思われたいからでしょう?」
と叫んだ。
「それは……」
「大体ね、父様の頭の中なんて98%は母様で、残り2%が国政なんだよ!」
口の中でもごもご反論しようとしたシルヴァ王を睨み、亜蘭が叫んだ。
「そこまでじゃない!」
「へぇ~、でも基本『母様母様母様、時々国政』じゃないか!」
「亜蘭! そんな晴れときどき曇りみたいな言い方するな!」
「父様、そんな『上手いこと言ってやった顔』してるけど、全然、上手くないからね!」
亜蘭の口撃に、シルヴァ王がたじろいでいる。
「まぁまぁ、亜蘭。その辺に……」
「そもそも母様が……」
止まらない亜蘭の口撃に、そっと俺が背中から亜蘭を抱き締めた。
「亜蘭、落ち着いて」
俺の言葉を聞くと、それまで捲し立てるように口撃していた亜蘭がピタリと止まった。
そして
「だって……だって……」
ポロポロと涙を流すと、声を上げて泣き出した。
それは、ずっと張り詰めていた感情が爆発したような泣き方だった。
「亜蘭、俺は此処に居るよ……」
「うぁぁぁぁぁぁん!」
俺の方に向き直し、しがみつくように抱き着く亜蘭。
まるで溺れた子が、助けに来た人に必死にしがみつくように俺に抱き着いている。
そんな亜蘭を見て、多朗様はシルヴァ王とデーヴィト王子にそっと声を掛けて退室して行った。
抱き締めた亜蘭の身体は、元々華奢なのにもっと細くなっていた。
どれ程、心配してくれていたんだろう。
きっと、自分を責めて責めて責めて……後悔ばかりしていたのだろう。
涙で濡れる頬に触れると、亜蘭が『ヒック……ヒック……』と身体を揺らしながら俺を見上げた。
「ごめん、亜蘭……。こんなに心配掛けて……」
俺の言葉に、言葉が紡げなくなっている亜蘭が首を横に振って抱き着いた。
「これからは、ずっと傍にいるから」
優しく抱き締めて言うと、「う~っ」と小さく声を漏らし再び泣き出した。
俺は亜蘭が落ち着くまで、ずっと亜蘭の背中を優しく撫でていた。
「行くから! 着いて行きますから!」
涙を流しながら言うと
「へぇ……愛ですね」
小さく笑い、俺に衣類を投げて渡した。
「それに着替えて下さい」
「え?」
「下着も全部です。指輪も必ず外して下さいね。この国は、この国の物から人物を探す事が出来る。特に指輪は、番同士を繋ぐ大事なアイテムなんですよ」
そう言われて、俺は指輪を見つめた。
『アレン、これは大切な指輪だ。絶対に肌身離さないようにな』
結婚式の後、多朗様から言われた言葉だ。
その時は意味が分からなかったけど、そういう意味だったのだと分かった。
衣類を着替え、床に倒れている亜蘭をベッドに寝かせる事は許可をもらった。
ガウンを着せ、ベッドに寝かせた亜蘭の頬が濡れていた。
「いつも泣かせてばかりで、ごめんな……亜蘭」
そっと頬の涙を拭い、頬にキスを落とす。
「さぁ、もう良いですか?」
そう言われ、頷くと指を鳴らされた。
意識が遠のき、俺はそいつの腕の中に倒れた。
自分の記憶にある話をすると、室内が水を打ったように静かになった。
そしてしばらくの沈黙の後
「キッモッ!」
両腕を摩り、亜蘭が叫んだ。
俺達が目を点にすると
「父様のファンってさ、なんでそんなにキモイ人が多いの?」
そう言い出した。
「何、太陽って? 何処が崇高? 隙あらば母様をベッドに連れ込もうとするような下半身バカなのに……」
亜蘭の溜め息混じりの言葉に、多朗様が吹き出した。
「多朗! 普通、そこは笑わずにフォローだよね?」
慌てるシルヴァ王に
「大体、父様が外面をカッコ良くしているのだって、母様に『シルヴァ、カッコイイ!』って思われたいからでしょう?」
と叫んだ。
「それは……」
「大体ね、父様の頭の中なんて98%は母様で、残り2%が国政なんだよ!」
口の中でもごもご反論しようとしたシルヴァ王を睨み、亜蘭が叫んだ。
「そこまでじゃない!」
「へぇ~、でも基本『母様母様母様、時々国政』じゃないか!」
「亜蘭! そんな晴れときどき曇りみたいな言い方するな!」
「父様、そんな『上手いこと言ってやった顔』してるけど、全然、上手くないからね!」
亜蘭の口撃に、シルヴァ王がたじろいでいる。
「まぁまぁ、亜蘭。その辺に……」
「そもそも母様が……」
止まらない亜蘭の口撃に、そっと俺が背中から亜蘭を抱き締めた。
「亜蘭、落ち着いて」
俺の言葉を聞くと、それまで捲し立てるように口撃していた亜蘭がピタリと止まった。
そして
「だって……だって……」
ポロポロと涙を流すと、声を上げて泣き出した。
それは、ずっと張り詰めていた感情が爆発したような泣き方だった。
「亜蘭、俺は此処に居るよ……」
「うぁぁぁぁぁぁん!」
俺の方に向き直し、しがみつくように抱き着く亜蘭。
まるで溺れた子が、助けに来た人に必死にしがみつくように俺に抱き着いている。
そんな亜蘭を見て、多朗様はシルヴァ王とデーヴィト王子にそっと声を掛けて退室して行った。
抱き締めた亜蘭の身体は、元々華奢なのにもっと細くなっていた。
どれ程、心配してくれていたんだろう。
きっと、自分を責めて責めて責めて……後悔ばかりしていたのだろう。
涙で濡れる頬に触れると、亜蘭が『ヒック……ヒック……』と身体を揺らしながら俺を見上げた。
「ごめん、亜蘭……。こんなに心配掛けて……」
俺の言葉に、言葉が紡げなくなっている亜蘭が首を横に振って抱き着いた。
「これからは、ずっと傍にいるから」
優しく抱き締めて言うと、「う~っ」と小さく声を漏らし再び泣き出した。
俺は亜蘭が落ち着くまで、ずっと亜蘭の背中を優しく撫でていた。
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