モブでヘタレな俺だけど、異世界に召喚されたらキラキラ王子に溺愛されて困ってます。

古紫汐桜

文字の大きさ
139 / 197

切なる願い①

しおりを挟む
「亜蘭、此処に居たのか?」
 ふわりと肩に上着を被せられ、庭園で空を見上げていた僕の隣に母様が腰掛けた。
ゆっくりと母様の顔を見ると、そっと僕の頬に触れて
「どうした?」
と聞いて来た。
僕はあの後、母様の所には行かなかった。
フラフラと足の向くままに歩いて、庭園にある椅子に腰掛けていた。
恐らく、デーヴィドから僕が来るはずだと聞いていたのに、現れないから心配して探してくれたのだろう。
僕はいつだって……、みんなに心配を掛けてばかりだ。
空を見上げたまま
「母様……。僕は、番に拒絶されたのですね」
ポツリと呟くと、母様が息を飲んだ音が聞こえた。

 ずっと、ずっと憧れていた。
父様には母様、デーヴィドにはアイシャ。
そんな番が、僕にも現れる日を心待ちにしていた。
手と手が触れ合うだけで、心臓がドキドキして苦しくなる。
でも、一緒に居たら心が温かくなる相手。
番に出会えたら、幸せになるのだと信じていた。
『拒絶』があるなんて、知らなかった。
「母様……僕、死ぬの?」
僕の言葉に、母様が僕の身体を強く抱き締め
「死なせないって、言っただろう?」
そう呟いた。
「アレクサス王子だったんだね、僕の番。でもさ、僕……心が動かないよ」
「亜蘭……何でそれを?」
「デーヴィドがアレクサス王子を責めているのを、偶然、聞いちゃったんだ。でもね、母様。父様と母様はアレクサス王子を恨まないであげて。だって、欠陥品の僕なんかを婚約者にされて、可哀想な人だよ」
「亜蘭、お前は欠陥品なんかじゃない! 誰よりも優しくて、陽だまりのように温かい心を持っている良い子だ。確かに俺も、アレクサス王子と同じ気持ちを経験したから、彼の気持ちは良く分かる。でもな、俺はお前の親なんだよ。亜蘭に何かあったら、俺は俺で居られる自信が無い」
吐き出すような母様の言葉に
「そっか……」
と曖昧な返事をして空を見上げた。
「ねぇ、母様」
「ん?」
「マテオが眠りから覚めたら、封印した気持ちも戻るのかな?」
そう呟いた僕に
「どうだろうな……。マテオが亜蘭の守護竜になってから眠りについたのが、今回で2回目なんだ。過去に、2回もマテオが眠りに着いた記録は無いんだそうだ」
と母様が呟いた。
「そうなんだ」
「亜蘭。最悪、ディランの守護を」
「駄目だよ、母様!」
僕は母様の言葉を遮った。
「僕じゃ、親子だから父様の相手が出来ないよ。それに父様は、母様が居ないと生きていられないと思う」
僕の言葉に、母様が僕を抱き締めている腕に力を込めた。
「だけどな、亜蘭」
「ん?」
「俺は強運の持ち主なんだよ。だから、絶対に亜蘭は大丈夫だって思っているよ」
母様の言葉に、僕は小さく笑った。

僕は空を見上げ、アレクサス王子が好きだった僕は、拒絶されて辛かったのかな?と思いを馳せてみた。
だけど、何も思い出せない。
胸にポッカリ空いた穴は、いつか埋まる事が出来るのだろうか?と、ぼんやりと考えていた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた

k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
 病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。  言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。  小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。  しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。  湊の生活は以前のような日に戻った。  一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。  ただ、明らかに成長スピードが早い。  どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。  弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。  お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。  あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。  後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。  気づけば少年の住む異世界に来ていた。  二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。  序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら執着兄上たちの愛が重すぎました~

液体猫(299)
BL
年末年始(1月4日まで)→毎日朝8時10分投稿 通常→毎日AM2時10分投稿 【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸に、末っ子クリスは過保護な兄たちに溺愛されながら、大好きな四男と幸せに暮らす】  アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、九年前へと戻っていた。  巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞る。  かわいい末っ子が過剰なまでにかわいがられて溺愛されていく──  やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな軽い気持ちで始まった新たな人生はコミカル&シリアス。だけどほのぼのとしたハッピーエンド確定物語。  主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ ⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌ ⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。 ⚠️若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!

処理中です...