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閑話休題①
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朝、目覚めたら酷い頭痛だった。
昨晩の記憶が無い。
あるのは、アルコールで口の中のベタつきと、軽い吐き気。
昨日、亜蘭の姿が見えないと大騒ぎになり、子供達の行動に勘が働くリアムに協力を仰ごうと騎士団の寮に足を向けたまでは覚えている。
するとリアムの部屋の前に人集りが出来ていて、人垣の向こう側から
「良いよね?」
聞き覚えのある声が聞こえた。
(此処に居たのか……)
「はぁ……」
と溜め息を吐いて
「あ~ら~ん! な~にが『良いよね?』だ」
そう呟くと、前にあった人垣が一斉に真っ二つに分かれた。
すると視界の向こう側に、「マズイ!」と顔に書いた亜蘭と、その光景を面白そうに見ている旧友の姿があった。
亜蘭は容姿こそ俺似だが、性格は成長する事にシルヴァに似て来た。
どうすれば可愛がってもらえるのかを、無意識に知っている。
しかもタチが悪いのが、容姿が俺似ではあるけれど、俺では無い。
シルヴァの遺伝子も受け継いでいるので、やたらキラキラしている。
しかも体躯が、どう鍛えても筋肉の付きにくい華奢な身体をしているもんだから、やたら庇護欲をかき立てるらしい。
シルヴァやデーヴィドはもちろん、城の人間は亜蘭に異常に甘い。
蝶よ花よと可愛がられて育った亜蘭は、無意識にどうすればみんなが自分を可愛がってくれているのかを知っているのだ。
お陰で、夜会やパーティーで亜蘭を見初めてしまい、山のように送られる貴族子息からの亜蘭への求婚の手紙は、シルヴァが全て握り潰している。
騎士団の中には、亜蘭の側に行きたくて志願した者も少なくないらしい。
それをリアムが粛清しているらしいが、そんなハイエナの巣窟で無邪気に笑顔を振り撒く亜蘭に頭痛がした。
そんな俺の反応が面白いとばかりに、リアムが俺の顔をニヤニヤした顔で見ているのも気に入らない。
リアムとは出会いこそ最悪だったが、シルヴァ奪還から今の平和を取り戻すまで共に戦い続けた言わば戦友だ。
口が悪いが、心根は優しくて男気がある。
容姿は出時の悪さが滲み出ているが、それが返って野性味があって良いと女性達から人気があった。
一時期かなり遊んではいたようだが、今ではすっかり落ち着いているようだ。
そんなリアムだが、腕を買われて騎士になってもらったのだが、シルヴァから俺専属の護衛騎士を命じられてから変わってしまった。
「多朗」と呼んでくれていたのに、その頃から「多朗様」と俺を呼び、サシャとシルヴァに言われたからと、決して二人では会わなくなった。
この世界に来て、サシャ以外に親しくしてくれた人はリアムしか居なかった。
みんな「異世界から来た本当の勇者」として、俺に一線引いている。
リアムはそんな人達の中で、唯一、言いたい放題言ってくれる貴重な存在だった。
昨晩の記憶が無い。
あるのは、アルコールで口の中のベタつきと、軽い吐き気。
昨日、亜蘭の姿が見えないと大騒ぎになり、子供達の行動に勘が働くリアムに協力を仰ごうと騎士団の寮に足を向けたまでは覚えている。
するとリアムの部屋の前に人集りが出来ていて、人垣の向こう側から
「良いよね?」
聞き覚えのある声が聞こえた。
(此処に居たのか……)
「はぁ……」
と溜め息を吐いて
「あ~ら~ん! な~にが『良いよね?』だ」
そう呟くと、前にあった人垣が一斉に真っ二つに分かれた。
すると視界の向こう側に、「マズイ!」と顔に書いた亜蘭と、その光景を面白そうに見ている旧友の姿があった。
亜蘭は容姿こそ俺似だが、性格は成長する事にシルヴァに似て来た。
どうすれば可愛がってもらえるのかを、無意識に知っている。
しかもタチが悪いのが、容姿が俺似ではあるけれど、俺では無い。
シルヴァの遺伝子も受け継いでいるので、やたらキラキラしている。
しかも体躯が、どう鍛えても筋肉の付きにくい華奢な身体をしているもんだから、やたら庇護欲をかき立てるらしい。
シルヴァやデーヴィドはもちろん、城の人間は亜蘭に異常に甘い。
蝶よ花よと可愛がられて育った亜蘭は、無意識にどうすればみんなが自分を可愛がってくれているのかを知っているのだ。
お陰で、夜会やパーティーで亜蘭を見初めてしまい、山のように送られる貴族子息からの亜蘭への求婚の手紙は、シルヴァが全て握り潰している。
騎士団の中には、亜蘭の側に行きたくて志願した者も少なくないらしい。
それをリアムが粛清しているらしいが、そんなハイエナの巣窟で無邪気に笑顔を振り撒く亜蘭に頭痛がした。
そんな俺の反応が面白いとばかりに、リアムが俺の顔をニヤニヤした顔で見ているのも気に入らない。
リアムとは出会いこそ最悪だったが、シルヴァ奪還から今の平和を取り戻すまで共に戦い続けた言わば戦友だ。
口が悪いが、心根は優しくて男気がある。
容姿は出時の悪さが滲み出ているが、それが返って野性味があって良いと女性達から人気があった。
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そんなリアムだが、腕を買われて騎士になってもらったのだが、シルヴァから俺専属の護衛騎士を命じられてから変わってしまった。
「多朗」と呼んでくれていたのに、その頃から「多朗様」と俺を呼び、サシャとシルヴァに言われたからと、決して二人では会わなくなった。
この世界に来て、サシャ以外に親しくしてくれた人はリアムしか居なかった。
みんな「異世界から来た本当の勇者」として、俺に一線引いている。
リアムはそんな人達の中で、唯一、言いたい放題言ってくれる貴重な存在だった。
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