12 / 16
楽しいひと時
しおりを挟む
「なんだよ……その態度」
呆れた顔をして呟いた冬夜に、幸太は
「すみません……。僕、そういう趣味はありません」
そう言うと、ぺこりとお辞儀をした。
冬夜は一瞬、何を言っているのか分からないというポカンっとした顔をした後、意味を理解したらしく顔を真っ赤にして
「アホ! 俺もそんな趣味無いわ!」
と叫んだ。
動揺している冬夜が珍しくて、幸太は嬉しそうに
「良いんですよ……。冬夜さんがたくさんの女性と付き合っても、長続きしない理由が分かりました」
そう続けてからかっていると、冬夜はいつもの無表情に戻り、幸太の頭をゲンコツでグリグリとやりながら
「そうかもな! 俺、幸太がそういう意味で好きかもな!」
と、物凄い棒読みで言っている。
そんな二人の様子を、遥が呆れた顔をしながら見ていると
「痛い! 冬夜さん、悪ふざけが過ぎました! すみません!」
と言いながら、幸太がジタバタと逃げようとしている。
しかし、冬夜は面白がって幸太の首に腕を巻き付けて動けないようにして、プロレスの技をかけ始めた。
「冬夜さん、ギブ! ギブ!」
幸太が必死に冬夜の腕を叩いていると
「えー! 俺、幸太が大好きだから離したくないー」
と、冬夜は再び凄い棒読みでギャルの真似をしながら答えている。
遥がその様子を黙って見ているのに気付き
「遥せんぱ~い! 見てないで、助けて下さいよ~」
涙目で幸太が訴えて来た。
遥は苦笑いを浮かべ、
「はいはい、戯れるのはそこまで!」
と、「パン!」っと手を叩いて一喝する。
その合図に冬夜が幸太を離すと、幸太は慌てて遥の背中に隠れて、冬夜にあかんべをしている。
そんな幸太を、遥は苦笑いして見ていた。
まだあどけなさの残る幸太。
遥にとって可愛いと思うし、とても大切な幼馴染みだと思ってはいる。
自分の良い部分も悪い部分も全部ひっくるめて、いつでも真っ直ぐな愛情を遥に向けてくれているのは本当に有難いと思っている。
だからこそ、何度、幸太の気持ちに応える事が出来たら良いと考えたのかわからない。
それでも遥の心が求めるのは、無表情で何を考えているのか分からない冬夜だけなのだ。
自分の気持ちなのに、何故、こんなにも思い通りに出来ないのかと、遥はいつも思っていた。
(恋愛とは……、厄介なものだな……)
遥は心の中で苦笑いをしながら、またじゃれ始めている2人から視線を外し、窓の外に視線を投げた。
眩しい光が降り注ぐ中、遥は嫌な胸騒ぎを打ち消すように溜め息を吐く。
「遥先輩? 大丈夫ですか?」
ぼんやり考えていた遥の瞳を、大きなあどけない幸太の瞳が見詰める。
「何がだ? ほら! そんな事より、本当に取材に行くなら、調べなくちゃならない事があるだろ。さっさと仕事する」
心配そうな幸太にそう言ってデコピンをすると、遥はデスクにあった書類へ手を伸ばした。
幸太は不満そうに口をへの字にすると
「ほら! 冬夜さんのせいで怒られた!」そう言いながら、自席へと歩き出す。
「はあ? 人のせいにすんな!」
冬夜もカメラを取り出しながら、まだ2人で言い争いをしている。
なんだかんだと仲の良い2人に、笑みがこぼれる。
微笑ましい光景に、遥は願わずには居られなかった。
どうかこの当たり前の日常が、ずっと続きますように……と。
呆れた顔をして呟いた冬夜に、幸太は
「すみません……。僕、そういう趣味はありません」
そう言うと、ぺこりとお辞儀をした。
冬夜は一瞬、何を言っているのか分からないというポカンっとした顔をした後、意味を理解したらしく顔を真っ赤にして
「アホ! 俺もそんな趣味無いわ!」
と叫んだ。
動揺している冬夜が珍しくて、幸太は嬉しそうに
「良いんですよ……。冬夜さんがたくさんの女性と付き合っても、長続きしない理由が分かりました」
そう続けてからかっていると、冬夜はいつもの無表情に戻り、幸太の頭をゲンコツでグリグリとやりながら
「そうかもな! 俺、幸太がそういう意味で好きかもな!」
と、物凄い棒読みで言っている。
そんな二人の様子を、遥が呆れた顔をしながら見ていると
「痛い! 冬夜さん、悪ふざけが過ぎました! すみません!」
と言いながら、幸太がジタバタと逃げようとしている。
しかし、冬夜は面白がって幸太の首に腕を巻き付けて動けないようにして、プロレスの技をかけ始めた。
「冬夜さん、ギブ! ギブ!」
幸太が必死に冬夜の腕を叩いていると
「えー! 俺、幸太が大好きだから離したくないー」
と、冬夜は再び凄い棒読みでギャルの真似をしながら答えている。
遥がその様子を黙って見ているのに気付き
「遥せんぱ~い! 見てないで、助けて下さいよ~」
涙目で幸太が訴えて来た。
遥は苦笑いを浮かべ、
「はいはい、戯れるのはそこまで!」
と、「パン!」っと手を叩いて一喝する。
その合図に冬夜が幸太を離すと、幸太は慌てて遥の背中に隠れて、冬夜にあかんべをしている。
そんな幸太を、遥は苦笑いして見ていた。
まだあどけなさの残る幸太。
遥にとって可愛いと思うし、とても大切な幼馴染みだと思ってはいる。
自分の良い部分も悪い部分も全部ひっくるめて、いつでも真っ直ぐな愛情を遥に向けてくれているのは本当に有難いと思っている。
だからこそ、何度、幸太の気持ちに応える事が出来たら良いと考えたのかわからない。
それでも遥の心が求めるのは、無表情で何を考えているのか分からない冬夜だけなのだ。
自分の気持ちなのに、何故、こんなにも思い通りに出来ないのかと、遥はいつも思っていた。
(恋愛とは……、厄介なものだな……)
遥は心の中で苦笑いをしながら、またじゃれ始めている2人から視線を外し、窓の外に視線を投げた。
眩しい光が降り注ぐ中、遥は嫌な胸騒ぎを打ち消すように溜め息を吐く。
「遥先輩? 大丈夫ですか?」
ぼんやり考えていた遥の瞳を、大きなあどけない幸太の瞳が見詰める。
「何がだ? ほら! そんな事より、本当に取材に行くなら、調べなくちゃならない事があるだろ。さっさと仕事する」
心配そうな幸太にそう言ってデコピンをすると、遥はデスクにあった書類へ手を伸ばした。
幸太は不満そうに口をへの字にすると
「ほら! 冬夜さんのせいで怒られた!」そう言いながら、自席へと歩き出す。
「はあ? 人のせいにすんな!」
冬夜もカメラを取り出しながら、まだ2人で言い争いをしている。
なんだかんだと仲の良い2人に、笑みがこぼれる。
微笑ましい光景に、遥は願わずには居られなかった。
どうかこの当たり前の日常が、ずっと続きますように……と。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13
あやかし嫁取り婚~龍神の契約妻になりました~
椿蛍
キャラ文芸
出会って間もない相手と結婚した――人ではないと知りながら。
あやかしたちは、それぞれの一族の血を残すため、人により近づくため。
特異な力を持った人間の娘を必要としていた。
彼らは、私が持つ『文様を盗み、身に宿す』能力に目をつけた。
『これは、あやかしの嫁取り戦』
身を守るため、私は形だけの結婚を選ぶ――
※二章までで、いったん完結します。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる