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悪い予感
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「だから、ダメだと言ったらダメだ!」
あれからというもの、遥と冬夜は毎日のように言い争っている。
あの写真の場所へ行きたい冬夜と、行かせたくない遥。
遥には予感があった。
あの場所へ行ったら、冬夜はもう戻らないような気がしてならないのだ。
そして、あの日……冬夜と赤い桜の写真を見た日から現れたもう一人の自分が、その場所に冬夜が行く事を止めているように感じてならなかった。
あの日以来、遥の胸の中でずっと警戒音が鳴り響いている。
夢の中でも、追い掛けても追い掛けても冬夜が遠ざかって行くのだ。
でもそれは単なる夢では無く、予知夢のような気がして、遥は堪らなかった。
元々、決して手の届かない人だとわかっている。
でも、せめて側に居る事くらいは許して欲しいと願うのはいけない事なのだろうか?
消そうとしても消えない不安感。
遥は冬夜を失う恐怖感と、この想いから逃げ出したい気持ちの狭間で揺れていた。
「だったら、三人で行ったらどうですか?」
言い争う二人に、幸太が笑顔で提案してきた。
「三人?」
遥がポツリと呟くと、幸太が笑顔で遥と冬夜、自分の順番で指を指して
「そう、三人」
と笑顔を浮かべた。
「はぁ? そんなの余計、駄目に決まって居るだろうが!」
そう叫ぶ遥に、幸太は両手を頭の後ろに組むと
「だって、そんなに頭ごなしに反対した所で、冬夜さんは強硬手段に変えるだけですよ」
そう呟くと、幸太は冬夜の顔を覗き込んだ。
すると冬夜はバツが悪そうな顔をして、幸太から視線を逸らしたのだ。
その様子を見て、遥は冬夜の胸倉を掴み
「お前、まさか一人で勝手に行くつもりなのか!」
と叫んだ。
「お前が、頑なに反対するなら……」
そう呟く冬夜に、遥は大きな溜息を吐きながら椅子に音を立てて座った。
「お前……」
思わず頭を抱えて呟くと
「だから、三人で行きましょうよ!
ほら、三人寄れば文殊の知恵って言うじゃないですか!」
幸太が満面の笑みを浮かべて叫ぶ。
「文殊の知恵ねぇ……」
頭を抱えながら呟く遥に
「俺は、此処を辞めてでも行く」
普段、大概の事は折れてくれる冬夜が、真っ直ぐに遥を見つめて断言した。
(逆らえない運命なのだろうか?)
遥はそう思いながら、大きく溜息を吐いて
「了解! そこまで言うなら、許可しよう。その代わり、私と幸太も同行する。それでどうだ?」
と答えた。
冬夜は頷くと
「それで構わない」
そう呟き、目を見開いて嬉しそうに万歳する幸太に視線を投げた。
嫌われているのに、何故か幸太を放っておけないのは、自分に無い喜怒哀楽が羨ましいのだろうか? と冬夜は思いながら小さく微笑んだ。
すると
「あ! 冬夜さん、今、笑いませんでした?」
と、幸太が叫ぶ。
「うるせぇな! 笑ってねぇよ!」
「嫌々、絶対に笑っていましたよ! なんだ~、実は冬夜さん。僕の事が大好きなんじゃないですか~」
能天気な幸太の頭を撫でながら、冬夜は
「そうかもな」
って答えた。
その反応に幸太が固まり、驚いたように大きな目を益々見開いて
「えぇ!」
と叫んだ。
あれからというもの、遥と冬夜は毎日のように言い争っている。
あの写真の場所へ行きたい冬夜と、行かせたくない遥。
遥には予感があった。
あの場所へ行ったら、冬夜はもう戻らないような気がしてならないのだ。
そして、あの日……冬夜と赤い桜の写真を見た日から現れたもう一人の自分が、その場所に冬夜が行く事を止めているように感じてならなかった。
あの日以来、遥の胸の中でずっと警戒音が鳴り響いている。
夢の中でも、追い掛けても追い掛けても冬夜が遠ざかって行くのだ。
でもそれは単なる夢では無く、予知夢のような気がして、遥は堪らなかった。
元々、決して手の届かない人だとわかっている。
でも、せめて側に居る事くらいは許して欲しいと願うのはいけない事なのだろうか?
消そうとしても消えない不安感。
遥は冬夜を失う恐怖感と、この想いから逃げ出したい気持ちの狭間で揺れていた。
「だったら、三人で行ったらどうですか?」
言い争う二人に、幸太が笑顔で提案してきた。
「三人?」
遥がポツリと呟くと、幸太が笑顔で遥と冬夜、自分の順番で指を指して
「そう、三人」
と笑顔を浮かべた。
「はぁ? そんなの余計、駄目に決まって居るだろうが!」
そう叫ぶ遥に、幸太は両手を頭の後ろに組むと
「だって、そんなに頭ごなしに反対した所で、冬夜さんは強硬手段に変えるだけですよ」
そう呟くと、幸太は冬夜の顔を覗き込んだ。
すると冬夜はバツが悪そうな顔をして、幸太から視線を逸らしたのだ。
その様子を見て、遥は冬夜の胸倉を掴み
「お前、まさか一人で勝手に行くつもりなのか!」
と叫んだ。
「お前が、頑なに反対するなら……」
そう呟く冬夜に、遥は大きな溜息を吐きながら椅子に音を立てて座った。
「お前……」
思わず頭を抱えて呟くと
「だから、三人で行きましょうよ!
ほら、三人寄れば文殊の知恵って言うじゃないですか!」
幸太が満面の笑みを浮かべて叫ぶ。
「文殊の知恵ねぇ……」
頭を抱えながら呟く遥に
「俺は、此処を辞めてでも行く」
普段、大概の事は折れてくれる冬夜が、真っ直ぐに遥を見つめて断言した。
(逆らえない運命なのだろうか?)
遥はそう思いながら、大きく溜息を吐いて
「了解! そこまで言うなら、許可しよう。その代わり、私と幸太も同行する。それでどうだ?」
と答えた。
冬夜は頷くと
「それで構わない」
そう呟き、目を見開いて嬉しそうに万歳する幸太に視線を投げた。
嫌われているのに、何故か幸太を放っておけないのは、自分に無い喜怒哀楽が羨ましいのだろうか? と冬夜は思いながら小さく微笑んだ。
すると
「あ! 冬夜さん、今、笑いませんでした?」
と、幸太が叫ぶ。
「うるせぇな! 笑ってねぇよ!」
「嫌々、絶対に笑っていましたよ! なんだ~、実は冬夜さん。僕の事が大好きなんじゃないですか~」
能天気な幸太の頭を撫でながら、冬夜は
「そうかもな」
って答えた。
その反応に幸太が固まり、驚いたように大きな目を益々見開いて
「えぇ!」
と叫んだ。
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