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届かない想い
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冬夜の声より、自分の心臓の音がうるさい。
聞こえる筈は無いのに、自分の心臓の音が冬夜に聞こえるんじゃないのかと心配になってしまう。
そんな遥の気持ちも知らず
「お前さ」
と、ふいに冬夜が話し始めた。
遙が慌てて顔を上げると、冬夜の漆黒の瞳と目が合う。
ただでさえうるさい心臓が、もっと早く鳴り響いて顔が熱くなる。
今、暑いんだか寒いんだか分からなくなるほど緊張している中、冬夜に緊張がバレぬように
「何?」
とだけ一言、やっと絞り出した。
その時に初めて、口の中がカラカラな事に気付いた。
遥は慌てて、冬夜の入れてくれたコーヒーを飲もうとカップに手を伸ばす。
湯気が立つコーヒーを冷まして、やっとコーヒーを1口、口にした瞬間
「幸太の事、どう思っているんだ?」
と、突然、切り出された。
「えっ?」
驚いて冬夜を見ると
「あいつ、お前が好きだろう? 弟とか言って無いで、付き合ってあげたら?」
そう言われてしまう。
それも、一番言われたくない相手から。
ショックで、目の前が真っ暗になった。
冬夜が遥に対して、友達以上の感情が無い事は分かっていた。
分かってはいたが、こんな風に突き付けられて、遥は泣き出しい気持ちを必死に押し込み
「冬夜には関係ないでしょう! どうしてそんな事を言うの!」
思わず声を荒らげて叫ぶと
「あいつ、仕事出来るのにいつも自信無さそうな顔をしててさ。お前、もう少しあいつを認めてやれよ。可哀想だろう」
と言われて、遥は思わずカップを強く握り締めた。
冬夜が遙の気持ちを全く知らないかのような、冷静な言葉にグラリと視界が揺れる。
その時、ぽたぽたと涙が冬夜の部屋のテーブルを濡らしていくのをぼんやりと眺めていた。遥は、テーブルを濡らしている雫が自分の涙だと、気付くまでに少し時間が掛かってしまう。
今まで、誰かの前で泣くなんて、遥には経験の無い事だったから……。
初めて飲んだ、冬夜の入れてくれたコーヒーが普段の何百倍も苦く感じた。
俯く遥が、涙を流していると冬夜が気付いたのは、少ししてからだった。
涙を流す遙の顔を見て、冬夜はいつもの表情が読み取れない無表情で
「あ……悪い」
とだけ呟き、ハンカチを差し出して来た。
遙はそんな冬夜の手を叩き
「幸太が可哀想なら、私は何?」
叫んだ遙に、冬夜は冷めた眼差しのまま
「俺、お前とは友達以上になるつもりは無いから」
そう答えたのだ。
遙は目眩が起こりそうになる自分を奮い立たせ、必死に立ち上がる。
(分かっていた、分かってたけど……。こんなのって……あまりにも酷い!)
後から後から溢れ出す涙を、遙は必死に手で拭いながら涙を止めようとする。
でも、涙腺が壊れてしまったんじゃないかと思う程、涙が後から後から溢れ出して止まらない。
フラフラしながら必死に玄関に辿り着き、靴をはいて立ち上がった瞬間、身体のバランスを崩して倒れそうになった。
その時、冬夜の腕が伸びて来て、遙の身体を抱き留めた。
「大丈夫か?」
かけられた声は優しくて、さっき無慈悲に自分を振った人間のものとは思えない程に温かい。初めて埋めた胸は逞しくて、冬夜の規則正しい心臓の音が聞こえる。
聞こえる筈は無いのに、自分の心臓の音が冬夜に聞こえるんじゃないのかと心配になってしまう。
そんな遥の気持ちも知らず
「お前さ」
と、ふいに冬夜が話し始めた。
遙が慌てて顔を上げると、冬夜の漆黒の瞳と目が合う。
ただでさえうるさい心臓が、もっと早く鳴り響いて顔が熱くなる。
今、暑いんだか寒いんだか分からなくなるほど緊張している中、冬夜に緊張がバレぬように
「何?」
とだけ一言、やっと絞り出した。
その時に初めて、口の中がカラカラな事に気付いた。
遥は慌てて、冬夜の入れてくれたコーヒーを飲もうとカップに手を伸ばす。
湯気が立つコーヒーを冷まして、やっとコーヒーを1口、口にした瞬間
「幸太の事、どう思っているんだ?」
と、突然、切り出された。
「えっ?」
驚いて冬夜を見ると
「あいつ、お前が好きだろう? 弟とか言って無いで、付き合ってあげたら?」
そう言われてしまう。
それも、一番言われたくない相手から。
ショックで、目の前が真っ暗になった。
冬夜が遥に対して、友達以上の感情が無い事は分かっていた。
分かってはいたが、こんな風に突き付けられて、遥は泣き出しい気持ちを必死に押し込み
「冬夜には関係ないでしょう! どうしてそんな事を言うの!」
思わず声を荒らげて叫ぶと
「あいつ、仕事出来るのにいつも自信無さそうな顔をしててさ。お前、もう少しあいつを認めてやれよ。可哀想だろう」
と言われて、遥は思わずカップを強く握り締めた。
冬夜が遙の気持ちを全く知らないかのような、冷静な言葉にグラリと視界が揺れる。
その時、ぽたぽたと涙が冬夜の部屋のテーブルを濡らしていくのをぼんやりと眺めていた。遥は、テーブルを濡らしている雫が自分の涙だと、気付くまでに少し時間が掛かってしまう。
今まで、誰かの前で泣くなんて、遥には経験の無い事だったから……。
初めて飲んだ、冬夜の入れてくれたコーヒーが普段の何百倍も苦く感じた。
俯く遥が、涙を流していると冬夜が気付いたのは、少ししてからだった。
涙を流す遙の顔を見て、冬夜はいつもの表情が読み取れない無表情で
「あ……悪い」
とだけ呟き、ハンカチを差し出して来た。
遙はそんな冬夜の手を叩き
「幸太が可哀想なら、私は何?」
叫んだ遙に、冬夜は冷めた眼差しのまま
「俺、お前とは友達以上になるつもりは無いから」
そう答えたのだ。
遙は目眩が起こりそうになる自分を奮い立たせ、必死に立ち上がる。
(分かっていた、分かってたけど……。こんなのって……あまりにも酷い!)
後から後から溢れ出す涙を、遙は必死に手で拭いながら涙を止めようとする。
でも、涙腺が壊れてしまったんじゃないかと思う程、涙が後から後から溢れ出して止まらない。
フラフラしながら必死に玄関に辿り着き、靴をはいて立ち上がった瞬間、身体のバランスを崩して倒れそうになった。
その時、冬夜の腕が伸びて来て、遙の身体を抱き留めた。
「大丈夫か?」
かけられた声は優しくて、さっき無慈悲に自分を振った人間のものとは思えない程に温かい。初めて埋めた胸は逞しくて、冬夜の規則正しい心臓の音が聞こえる。
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