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フランシスの企み
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ガラガラと揺れる馬車の中、アルトは深い溜め息を吐いていた。
メイソンの実家のある領地へ向かっている馬車の中に、メイソンの姿は無い。
「執事の身分で、主と……ましてや第1王子と同じ馬車など畏れ多くて乗れません」
と言うと、警護の人達が乗る馬車に乗り込んでしまう。
あの日から、メイソンはアルトと一定の距離をおくようになってしまう。
キスはおろか、ハグさえもさせてくれないメイソンに、アルトは何故こんな事になってしまったのかと思い悩んでしまっていた。
「アルト……どうした?」
落ち込んでいるアルトにフランシスが声を掛けると 、アルトは小さく微笑み首を横に振った。
「ねぇ、フランシス。恋愛って、突然、冷めたりするものなのかなぁ?」
ポツリと呟いたアルトに、フランシスはメイソンとの事だとすぐに気付いた。
フランシスの目から見ても、メイソンの態度は明らかにアルトと距離をおいている。
(冷静なあの男も、恋愛となると見誤るものなのだな……)
小さく笑うと、フランシスは
(悪いが……僕にとっては好都合だ。アルトには可哀想だが、このまま別れてくれれば良いが……)
そう考えていた。
フランシスは弱っているアルトの手を握り
「アルト……。僕の想いは、幼き頃にきみと出会ってから変わらないよ」
甘い声で囁くと、アルトは潤ませた瞳でフランシスを見上げた。
そっとアルトの指先に唇を落とすと
「アルト……。今回、きみに協力する為に交わした約束を覚えているかい?」
フランシスにそう囁かれて、アルトは小さく頷く。
「きみの……、太陽の神子の力が必要なんだ。分かるよね?」
甘い棘を刺すように、アルトにそう囁く。
「まずは……契約の口づけを……」
そっとアルトの頬に触れ、フランシスが囁くと、アルトはゆっくりと瞳を閉じた。
太陽の神子との契約は、口づけを交わす事
これはどの書物にも書かれている。
メイソンの右目に浮かんだ紋様が、アルトとの契約の証を物語っていた。
初めて知った時は、嫉妬で気が狂いそうだったが、今、こうして……そのメイソンのお陰で、難攻不落だったアルトが弱った状態で手中に降りて来た。
フランシスは、この好機を逃すつもりは無かった。
瞳を閉じてキスを待つアルトの、濡れた唇にそっとフランシスの唇が重なる。
アルトの細い腰を抱き寄せ、アルトの唇に舌を差し込んだ。
その瞬間、アルトの瞳が見開かれて身体が逃げ出そうともがいた。
フランシスはアルトの身体を強く抱き締め
「アルト……、契約の口づけだ」
そう囁いて、アルトの顎を掴み強引にアルトの口内を犯した。
「んっ……!ンンっ!」
必死に抵抗するアルトの舌を絡め取り、馬車の椅子に押し倒すと
「アルト……分かるか?お前と僕は、もう契約完了だ」
そう言うと、フランシスは襟首に掛かる金髪をかきあげて、首の後ろに表れた太陽の文様をアルトに見せた。
「アルト。きみのその身体を抱く権利が、僕にも与えられたんだよ」
フランシスの言葉に、アルトは目を見開いた。
「そんな……」
「アルト、きみは知らなかったのかい?授業で習った筈じゃないか。太陽の神子と契約者は、身体を重ねて力を共有するんだ。だから、キスも普通の唇を重ねるだけのキスじゃない」
フランシスの言葉に、アルトの顔が青ざめて行く。
しかし、フランシスはゆっくりとアルトの身体を離すと
「アルト……、でも僕はきみに強要はしないよ」
そう呟いた。
「え?」
「言っただろう?この力は、今回のミッションで必要な力だからきみと契約したんだ。僕はきみを裏切ったりなんかしないよ」
「フランシス!」
アルトがフランシスの言葉に目を輝かせ、抱き着いて来た。
「ごめん!僕、少しだけきみを疑ってしまったよ」
無邪気なアルトの身体を抱き締め
「アルト、今回は僕だからこれで済んだんだ。他の人とは、しちゃダメだよ」
頭を優しく撫でながらフランシスが囁くと
「うん!絶対にしないよ!」
と頷いた。
(メイソン……貴様の負けだ。アルトは私がもらう!)
フランシスは心の中でそう呟き、そっとアルトの頬に触れると
「さぁ、アルト。契約の続きを……」
甘く囁き、アルトを抱き寄せた。
「アルト……。これは浮気でも無ければ、メイソンを裏切る行為でも無いと教えただろう?これは、メイソンの領地を救う為に行う神事なんだよ」
フランシスの言葉に、アルトは真剣な眼差しで頷くと再び瞳を閉じた。
フランシスはアルトを抱き寄せ、再びアルトの唇にキスを落とす。
今度は抵抗されず、アルトはフランシスのキスを受け入れてくれた。
舌を絡め、恋人のようなキスを繰り返す。
「んっ…………ぁっ…………」
抱かれる快楽を知っているアルトの身体が、この先を求めるのは分かっていた。
(もう少し……。アルトを手に入れるまで、あともう少しだ……)
キスの合間に漏れる甘い吐息を聞きながら、フランシスは小さくほくそ笑んでいた。
メイソンの実家のある領地へ向かっている馬車の中に、メイソンの姿は無い。
「執事の身分で、主と……ましてや第1王子と同じ馬車など畏れ多くて乗れません」
と言うと、警護の人達が乗る馬車に乗り込んでしまう。
あの日から、メイソンはアルトと一定の距離をおくようになってしまう。
キスはおろか、ハグさえもさせてくれないメイソンに、アルトは何故こんな事になってしまったのかと思い悩んでしまっていた。
「アルト……どうした?」
落ち込んでいるアルトにフランシスが声を掛けると 、アルトは小さく微笑み首を横に振った。
「ねぇ、フランシス。恋愛って、突然、冷めたりするものなのかなぁ?」
ポツリと呟いたアルトに、フランシスはメイソンとの事だとすぐに気付いた。
フランシスの目から見ても、メイソンの態度は明らかにアルトと距離をおいている。
(冷静なあの男も、恋愛となると見誤るものなのだな……)
小さく笑うと、フランシスは
(悪いが……僕にとっては好都合だ。アルトには可哀想だが、このまま別れてくれれば良いが……)
そう考えていた。
フランシスは弱っているアルトの手を握り
「アルト……。僕の想いは、幼き頃にきみと出会ってから変わらないよ」
甘い声で囁くと、アルトは潤ませた瞳でフランシスを見上げた。
そっとアルトの指先に唇を落とすと
「アルト……。今回、きみに協力する為に交わした約束を覚えているかい?」
フランシスにそう囁かれて、アルトは小さく頷く。
「きみの……、太陽の神子の力が必要なんだ。分かるよね?」
甘い棘を刺すように、アルトにそう囁く。
「まずは……契約の口づけを……」
そっとアルトの頬に触れ、フランシスが囁くと、アルトはゆっくりと瞳を閉じた。
太陽の神子との契約は、口づけを交わす事
これはどの書物にも書かれている。
メイソンの右目に浮かんだ紋様が、アルトとの契約の証を物語っていた。
初めて知った時は、嫉妬で気が狂いそうだったが、今、こうして……そのメイソンのお陰で、難攻不落だったアルトが弱った状態で手中に降りて来た。
フランシスは、この好機を逃すつもりは無かった。
瞳を閉じてキスを待つアルトの、濡れた唇にそっとフランシスの唇が重なる。
アルトの細い腰を抱き寄せ、アルトの唇に舌を差し込んだ。
その瞬間、アルトの瞳が見開かれて身体が逃げ出そうともがいた。
フランシスはアルトの身体を強く抱き締め
「アルト……、契約の口づけだ」
そう囁いて、アルトの顎を掴み強引にアルトの口内を犯した。
「んっ……!ンンっ!」
必死に抵抗するアルトの舌を絡め取り、馬車の椅子に押し倒すと
「アルト……分かるか?お前と僕は、もう契約完了だ」
そう言うと、フランシスは襟首に掛かる金髪をかきあげて、首の後ろに表れた太陽の文様をアルトに見せた。
「アルト。きみのその身体を抱く権利が、僕にも与えられたんだよ」
フランシスの言葉に、アルトは目を見開いた。
「そんな……」
「アルト、きみは知らなかったのかい?授業で習った筈じゃないか。太陽の神子と契約者は、身体を重ねて力を共有するんだ。だから、キスも普通の唇を重ねるだけのキスじゃない」
フランシスの言葉に、アルトの顔が青ざめて行く。
しかし、フランシスはゆっくりとアルトの身体を離すと
「アルト……、でも僕はきみに強要はしないよ」
そう呟いた。
「え?」
「言っただろう?この力は、今回のミッションで必要な力だからきみと契約したんだ。僕はきみを裏切ったりなんかしないよ」
「フランシス!」
アルトがフランシスの言葉に目を輝かせ、抱き着いて来た。
「ごめん!僕、少しだけきみを疑ってしまったよ」
無邪気なアルトの身体を抱き締め
「アルト、今回は僕だからこれで済んだんだ。他の人とは、しちゃダメだよ」
頭を優しく撫でながらフランシスが囁くと
「うん!絶対にしないよ!」
と頷いた。
(メイソン……貴様の負けだ。アルトは私がもらう!)
フランシスは心の中でそう呟き、そっとアルトの頬に触れると
「さぁ、アルト。契約の続きを……」
甘く囁き、アルトを抱き寄せた。
「アルト……。これは浮気でも無ければ、メイソンを裏切る行為でも無いと教えただろう?これは、メイソンの領地を救う為に行う神事なんだよ」
フランシスの言葉に、アルトは真剣な眼差しで頷くと再び瞳を閉じた。
フランシスはアルトを抱き寄せ、再びアルトの唇にキスを落とす。
今度は抵抗されず、アルトはフランシスのキスを受け入れてくれた。
舌を絡め、恋人のようなキスを繰り返す。
「んっ…………ぁっ…………」
抱かれる快楽を知っているアルトの身体が、この先を求めるのは分かっていた。
(もう少し……。アルトを手に入れるまで、あともう少しだ……)
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