妹が破滅フラグしか無い悪役令嬢だったので、破滅フラグを折りまくったらBL展開になってしまった!

古紫汐桜

文字の大きさ
上 下
57 / 69

メイソンの気持ち

しおりを挟む
「え?」
 それは連休がある前の週の事だった。
アルトはメイソンに、メイソンの実家に行こうと提案したのだ。
「メイソンの目は、僕が原因だった訳だし。もしかしたら、メイソンの家族の病の事も僕なら治せるかもしれないし」
無邪気に提案するアルトに、メイソンは戸惑っていた。
太陽の神子の力は無限で、未だに知られていない事が多い。
もしかしたら、本当にアルトが治せるのかもしれない。
でも、それはアルトに人間離れしたあの能力を使わせる事になってしまう。
それが吉と出るか、凶と出るのかメイソンは心配出仕方なかった。
「アルト様……ですが……」
「僕の身体を心配してくれているの? それなら大丈夫だよ」
そう言って微笑むアルトが、時々、神がかって見えるのは……幻影では無いとメイソンは感じていた。
黄金に輝く髪の毛は、まるで内側から光が放たれているかのように美しい。
「アルト様……」
実体があるのかを思わず確認したくなり、頬に触れたメイソンの手にアルトが手を重ねて頬ずりをする。
そんな仕草に愛しさが込み上げて来て、いつか別れが来る関係だからと割り切っていたつもりが……、いつしかこんなにも大切な人になっていたのだと思い知らされてしまう。
「アルト様……」
そっと唇を重ねると、アルトは恥じらうようにメイソンの胸に顔を埋めて
「メイソン……。きみの家族は、僕の家族も同様なんだ。だから、僕に出来ることをさせて欲しいんだ」
ポツリと呟いたアルトの言葉に、メイソンはアルトの身体を強く抱き締めた。

いずれは国母となられる方。
俺はせめて、そんなアルト様の礎になろう

メイソンはそう思い始めていた。
 フランシスとアルトはあの日以来、親交を深めたらしく、良く一緒に居る姿を見掛けるようになった。
学校から楽しそうに話ながら帰って来るアルトの姿を、フランシスは窓辺で見守ることしか出来ない。
自分はこの部屋にいる間、アルト様の身の回りと護衛をする立場。
今は一時の感情で、自分に想いを寄せているだけなのだと必死に言い聞かせていた。
「メイソン! ただいま!」
太陽のような笑顔で帰って来るアルトに、メイソンは小さく微笑んで向かい入れた。
「おかえりなさいませ、アルト様」
ドアを閉めると、いつものように胸に飛び込んで来るアルトに切なくなる。
「うふふ……。メイソンにこうして抱き着くと、部屋に戻って来たって思うよ」
胸に頬を擦り寄せ笑うアルトに、メイソンは微笑み返してアルトの頬に触れようとしたその時だった。
「あのね! 今度の休み、フランシスも同行してもらう事になったから」
そう言われて、メイソンの手がゆっくりと下ろされる。
「え?」
表情が固まったメイソンに気付かず
「メイソンの領地の話をしたらね、フランシスがそんな事が起こっているとしたら、国の一大事だ! って心配してくれてね」
と、話を続けた。
動きが止まったメイソンを不思議に思い、アルトがメイソンを見上げると、メイソンは今まで見せた事の無い無表情でアルトを見下ろしていた。
「メイソン……?」
驚いてメイソンに声を掛けるアルトの声に、メイソンはハッとして作り笑顔を浮かべた。
「第一王子にまで、気にかけて頂けて光栄です」
そう言って一礼すると、メイソンはアルトの身体をゆっくりと離し
「お茶を入れて参ります。アルト様は、着替えをなさって下さい」
と言い残し、下がってしまった。
「メイソン……?」
アルトはメイソンの意図が分からず、ポツリと呟いたが、きっとお茶を持って来たらいつも通りだろうと考えていた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

転生して王子になったボクは、王様になるまでノラリクラリと生きるはずだった

angel
BL
つまらないことで死んでしまったボクを不憫に思った神様が1つのゲームを持ちかけてきた。 『転生先で王様になれたら元の体に戻してあげる』と。 生まれ変わったボクは美貌の第一王子で兄弟もなく、将来王様になることが約束されていた。 「イージーゲームすぎね?」とは思ったが、この好条件をありがたく受け止め 現世に戻れるまでノラリクラリと王子様生活を楽しむはずだった…。 完結しました。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・話の流れが遅い ・作者が話の進行悩み過ぎてる

王道学園なのに、王道じゃない!!

主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。 レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ‪‪.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

専属【ガイド】になりませんか?!〜異世界で溺愛されました

sora
BL
会社員の佐久間 秋都(さくま あきと)は、気がつくと異世界憑依転生していた。名前はアルフィ。その世界には【エスパー】という能力を持った者たちが魔物と戦い、世界を守っていた。エスパーを癒し助けるのが【ガイド】。アルフィにもガイド能力が…!?

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

少女漫画の当て馬に転生したら聖騎士がヤンデレ化しました

猫むぎ
BL
外の世界に憧れを抱いていた少年は、少女漫画の世界に転生しました。 当て馬キャラに転生したけど、モブとして普通に暮らしていたが突然悪役である魔騎士の刺青が腕に浮かび上がった。 それでも特に刺青があるだけでモブなのは変わらなかった。 漫画では優男であった聖騎士が魔騎士に豹変するまでは… 出会う筈がなかった二人が出会い、聖騎士はヤンデレと化す。 メインヒーローの筈の聖騎士に執着されています。 最上級魔導士ヤンデレ溺愛聖騎士×当て馬悪役だけどモブだと信じて疑わない最下層魔導士

処理中です...