妹が破滅フラグしか無い悪役令嬢だったので、破滅フラグを折りまくったらBL展開になってしまった!

古紫汐桜

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フランシスの想い

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フランシスがアルトの視線に気付き、ハッとして慌てて両手を離すと
「フランシス様、どうしたの?」
と、フランシスを心配そうに見上げるアルトの瞳に切なさが込み上げて来る。
抱き締めようとしたその時、『ガチャ』っとドアの開く音が聞こえて、フランシスはそっとアルトから後ろに後退り離れた。
「お待たせ致しました。本日はベルガモットをご用意致しました」
優雅な手つきで茶器とマフィンを並べるメイソンを、アルトは全身から『大好き』を溢れさせて見つめている。
その姿を見る限り、自分には寸分の可能性さえも残されてはいないような気がしてならなかった。
フランシスは握り拳を握ると
「すまない。急用を思い出したので、失礼する」
そう言って踵を返すと、出て行こうとした。
そんなフランシスに、アルトは慌てて
「フランシス様、待って!どうしたの?何か用があって来たんだよね?それなのに、急に帰るなんて……。本当に変だよ」
そう言って腕を掴んだ。
フランシスは、アルトに掴まれた腕が焼けるように熱く感じた。
このまま攫ってしまえたら、どんなに良いのだろうと思う自分の気持ちを打ち消そうとした時だった。
「アルト様、フランシス様は急用を思い出されたのですから、邪魔をしてはダメですよ」
と話すメイソンの声が耳に入る。
(この野郎!わざと言っていやがるな!)
そう思ってメイソンを睨むと、アルトが寂しそうに
「急用って、そんなに大事な用事なの?最近、フランシス様と話をしていなかったから、久し振りに話がしたかったのに」
しょんぼりとした顔をするアルトを見て、萎んだ筈のフランシスの心が元気になって行くのを感じた。
「アルトは、私と話をしたかったのか?」
「うん!今日ね、授業で分からない所があってね……って、勉強の話は嫌だよね?」
上目遣いで見つめて苦笑いを浮かべたアルトの可愛らしさに、フランシスは鼻血が出そうになるのを必死に堪えた。
「今日、休んだ授業を教えようとして来たんだ。構わないよ」
優しく微笑み返すフランシスに、アルトは『パァっ!』と嬉しそうに笑みを浮かべて
「フランシス様、ありがとう!」
と、抱き着いた。
……が、直ぐにメイソンに引き剥がされ
「アルト様、直ぐに誰彼構わず抱き着く癖はお止め下さい」
そう注意されて、アルトは肩を窄めてフランシスを見上げると
「フランシス様、ごめんなさい」
と謝罪された。
「いや、私はアルトに抱き付かれるのは一向に構わないよ」
メイソンを睨んで答えるフランシスに、メイソンはアルトを自分の後ろに隠すと
「アルト様を食べようと、涎を垂らしていらっしゃる狼さんに、大切なアルト様を近付ける訳には行きませんから」
そう言って、にっこり微笑んだ。
「ほう?貴様、不敬罪という言葉を知っているか?」
「さあ?私はアルト様を、フランシス様から守る為に雇われておりますもので」
絶対零度の空気がフランシスとメイソンから流れ出す。
そんな二人を、呑気にアルトは見つめながら
「いつの間に、フランシス様とメイソンは仲良くなったの?」
と、場の空気を壊す発言をした。
その瞬間、二人は顔を見合わせて溜め息を吐くと
「お茶にしましょうか……」
「そうだな……」
そう言って、フランシスがアルトの隣に座ろうとするのを、メイソンが素早く
「あ、フランシス様。こちらは下座になりますので。は上座へどうぞ」
と、一人がけの椅子へと強引に座らせた。
(コイツ、とことん邪魔する気だな)
フランシスが心の中で舌打ちすると、フランシスの前にアルトが座り直して微笑む。
……アルトの天使の笑みを見たら、全て許せてしまう自分は単純だなぁ~とフランシスは苦笑いを浮かべた。
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