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二人の関係⑦
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「なぁ、アルト。お前が記憶を失うのって……」
そうサミュエルが話し掛けようとアルトの顔を見ると、アルトは真っ青な顔をしたまま、縋るようにサミュエルの顔を見上げていた。
吸い込まれそうな程に美しいエメラルドの瞳が不安に揺れている様は、男の保護欲を駆り立てるには充分だった。
サミュエルも、今までたくさんの美しい男女を見て来たが、アルトには思わず触れてみたいと思わせる不思議な魅力があった。
恐らく、それが太陽の神子と騎士の間に流れる呪いにも似た関係性なのかもしれない。サミュエルはそんな事を考えながら、
そっとアルトの頬に触れた。
アルトは無防備で、優しくアルトの頬に触れるサミュエルの手を解こうとはぜずに、黙ってサミュエルの言葉の続きを待っているようだった。
ふと見下ろしたアルトの、何も付けていないのに艶やかでピンク色の唇とに目が止まる。そっと頬に触れている手の親指で、アルトの唇をゆっくりと撫でると、アルトの身体が小さく震えて頬が色付く。
「サミュエル?」
不思議そうに見上げるアルトの瞳に吸い込まれるように、ゆっくりと唇に触れようと顔を近付けたその時、アルトの目付きが変わってサミュエルの唇を手の平で押さえた。
『悪いが、こいつには指一本触れさせる訳にはいかない』
そう発した声は、明らかにアルトの声ではない。
サミュエルは驚いて目を見開くと、少し考えてから小さく笑い
「成程。月の巫女は満月の夜に祈りを捧げ、月の女神の力を降臨させる。太陽の神子は、器の中に神様を住まわせているってわけか……」
そう呟いた。
太陽の神になったアルトはゆっくりと立ち上がると
『こやつに余計な事を言うな。不安にさせるな。もし我の邪魔をするようなら、お前を殺す!』
そう言って立ち去ろうとするアルトの手を掴んだ瞬間、バチッと強い静電気のような痛みを感じて手が弾かれた。
『触るなと……言った筈だ!』
全身から黄金の光を放ち睨み下ろす姿は、神の威圧感でさすがのサミュエルも腰を抜かしそうになった。
『我に触れて良いのは、一人だけだ!その邪魔をするなら、例え人の子であろうと許さない。覚えておけ!』
そう叫ぶと、太陽の神になっているアルトは足速にその場を立ち去ってしまった。
「成程……」
サミュエルはアルトが立ち去った方向を見つめながら、ぽつりと呟いた。
そして少し考え込むと、ゆっくりと立ち上がり図書室へと歩き始めた。
以前、自国の文献で読んだ太陽神の話しを思い出し、自分の記憶と文献の内容を確認する為に図書室へと向かってはみたが、太陽神と神子についての詳しい話は一切書かれていなかった。
記されているのは、誰もが知っている話だけ。
サミュエルは図書室の椅子に凭れながら、考えていた。
太陽の神子は短命である事しか記されておらず、実際、太陽の神子にどんな力があるのか?どんな存在なのかは一切記されていないのだ。
しかしサミュエルの国には、王家以外に立ち入り禁止とされてはいたが、太陽の神子の始まりの話が本として残されていた。
隣国の貴重な資料なので、サミュエルの国では王家以外は見られない文献ではあったが、普通に販売されている本だったように記憶していた。
不思議に思い、著者の名前を思い出して図書室でその本を探してみたが、何処にも見当たらない。
(おかしい……。何か、意図的に隠蔽されているような気がする)
サミュエルはそう考えながら、図書室を後にした。
自分の記憶が曖昧になっている部分もある為、サミュエルはこの日をきっかけに、太陽の神と神子の関係を秘密裏に調べようと考え出した。
そうサミュエルが話し掛けようとアルトの顔を見ると、アルトは真っ青な顔をしたまま、縋るようにサミュエルの顔を見上げていた。
吸い込まれそうな程に美しいエメラルドの瞳が不安に揺れている様は、男の保護欲を駆り立てるには充分だった。
サミュエルも、今までたくさんの美しい男女を見て来たが、アルトには思わず触れてみたいと思わせる不思議な魅力があった。
恐らく、それが太陽の神子と騎士の間に流れる呪いにも似た関係性なのかもしれない。サミュエルはそんな事を考えながら、
そっとアルトの頬に触れた。
アルトは無防備で、優しくアルトの頬に触れるサミュエルの手を解こうとはぜずに、黙ってサミュエルの言葉の続きを待っているようだった。
ふと見下ろしたアルトの、何も付けていないのに艶やかでピンク色の唇とに目が止まる。そっと頬に触れている手の親指で、アルトの唇をゆっくりと撫でると、アルトの身体が小さく震えて頬が色付く。
「サミュエル?」
不思議そうに見上げるアルトの瞳に吸い込まれるように、ゆっくりと唇に触れようと顔を近付けたその時、アルトの目付きが変わってサミュエルの唇を手の平で押さえた。
『悪いが、こいつには指一本触れさせる訳にはいかない』
そう発した声は、明らかにアルトの声ではない。
サミュエルは驚いて目を見開くと、少し考えてから小さく笑い
「成程。月の巫女は満月の夜に祈りを捧げ、月の女神の力を降臨させる。太陽の神子は、器の中に神様を住まわせているってわけか……」
そう呟いた。
太陽の神になったアルトはゆっくりと立ち上がると
『こやつに余計な事を言うな。不安にさせるな。もし我の邪魔をするようなら、お前を殺す!』
そう言って立ち去ろうとするアルトの手を掴んだ瞬間、バチッと強い静電気のような痛みを感じて手が弾かれた。
『触るなと……言った筈だ!』
全身から黄金の光を放ち睨み下ろす姿は、神の威圧感でさすがのサミュエルも腰を抜かしそうになった。
『我に触れて良いのは、一人だけだ!その邪魔をするなら、例え人の子であろうと許さない。覚えておけ!』
そう叫ぶと、太陽の神になっているアルトは足速にその場を立ち去ってしまった。
「成程……」
サミュエルはアルトが立ち去った方向を見つめながら、ぽつりと呟いた。
そして少し考え込むと、ゆっくりと立ち上がり図書室へと歩き始めた。
以前、自国の文献で読んだ太陽神の話しを思い出し、自分の記憶と文献の内容を確認する為に図書室へと向かってはみたが、太陽神と神子についての詳しい話は一切書かれていなかった。
記されているのは、誰もが知っている話だけ。
サミュエルは図書室の椅子に凭れながら、考えていた。
太陽の神子は短命である事しか記されておらず、実際、太陽の神子にどんな力があるのか?どんな存在なのかは一切記されていないのだ。
しかしサミュエルの国には、王家以外に立ち入り禁止とされてはいたが、太陽の神子の始まりの話が本として残されていた。
隣国の貴重な資料なので、サミュエルの国では王家以外は見られない文献ではあったが、普通に販売されている本だったように記憶していた。
不思議に思い、著者の名前を思い出して図書室でその本を探してみたが、何処にも見当たらない。
(おかしい……。何か、意図的に隠蔽されているような気がする)
サミュエルはそう考えながら、図書室を後にした。
自分の記憶が曖昧になっている部分もある為、サミュエルはこの日をきっかけに、太陽の神と神子の関係を秘密裏に調べようと考え出した。
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