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二人の関係⑤
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以前、何かの文献で読んだ事がある。
『神に愛された人間の末路に幸は無い』
ただの気まぐれであって欲しいと願いながら、太陽の神がメイソンに固執しているのを感じていた。
神に愛されれば、地位も富も手に入れられる。
しかし、神以外からの愛を受け入れる事が出来なくなるのだとか……。
もし他の人を愛したのならば、その時は神の世界へと連れて行かれるらしい。
『メイソン……何を考えている?』
太陽の神の声にハッとすると、彼は興醒めした顔をして
『メイソン、忘れるな。アルトの命は私の手の中にあるという事を』
と言い残し、メイソンの腕の拘束を解いてアルトから姿を消した。
その瞬間、ガックリとアルトの身体が崩れ落ち、メイソンは慌ててアルトの身体を抱き締めた。
メイソンは全裸のアルトを抱き上げ、寝室に移動してベッドに寝かせると、部屋着を着せて身なりを整えた。
眠るアルトの頬に触れ、愛しいと思うのも大切だと思うのもアルトなのに、何故、こんな事になったのか?とメイソンは溜息を吐く。
そっとアルトの額にキスを落とし、メイソンが寝室を後にすると、ドアが閉じる音と同時にアルトの瞳がゆっくりと開いた。
アルトも、時々、突然激しい眠気に襲われて気を失う自分が不安だった。
メイソンが自分に対して少し距離を置こうとするのは、そこに何か原因があるのかもしれないと感じながらも、それを聞くのが怖かった。
アルトはメイソンを知れば知るほど好きになるけれど、メイソンにとって自分の存在が邪魔になってしまっているのではないかと怖かった。
寝返りをうち、アルトは声を殺して涙を流した。
恋が辛いものなら、知りたくなかったと思ってしまう。
自分が太陽の神子では無く、普通の人間だったら違う人生だったのだろうか?と考える。
違う形でメイソンと出会っていたら、メイソンは月の巫女……マリアンヌの騎士として片目を失う事も無かったのでは無いか?
考えれば考える程、アルトは自分が転生しなければ良かったのでは無いだろうか?という考えに至ってしまう。
ゆっくりとベッドから降りると、窓を開けて外を眺める。
転生前の自分が生きていた世界とは違う、ツキナナとも違う『太陽の神子と七人の騎士』の世界。
似て非なる世界に、アルトは小さく溜め息を吐いて苦笑いを浮かべる。
青空が夕陽に変わり始める空を見上げ、もしかしたら、七人の騎士と契約を交わせばメイソンの抱えている『何か』から救えるのかもしれないと考えた。
契約するという事は、七人の騎士と関係を持たなくちゃならない訳で……。
「はぁ……」
深い溜め息を吐くと
「凄い溜め息だな」
何処からか声が聞こえて、アルトがキョロキョロと辺りを見回す。
すると木の枝から、ひょっこりとサミュエルが顔を出した。
「サ……サミュエル?何してるの?」
思わず驚いた声を上げてしまい
「アルト様!どうなさいましたか?」
と、隣の部屋からメイソンが飛び込んで来た。
アルトがアワアワしていると、サミュエルはヒラヒラと手を振って軽やかに木を伝って姿を消してしまった。
ホッと肩を撫で下ろすと、メイソンが窓辺に駆け寄って外を見回している。
「不審者がいらしたんですか?」
心配そうにアルトの顔を見るメイソンに、首を横に振ると
「猫がいたんだ」
そう答えた。
「猫……ですか?」
「そう、黒猫」
メイソンにそう答えると、アルトは窓を閉めて
「メイソン、喉が乾いたな。お茶もらえる?」
と言って微笑んだ。
メイソンは少し首を傾げてから
「かしこまりました。直ぐにご用意を致します」
そう答えて隣の部屋へと戻って行った。
『神に愛された人間の末路に幸は無い』
ただの気まぐれであって欲しいと願いながら、太陽の神がメイソンに固執しているのを感じていた。
神に愛されれば、地位も富も手に入れられる。
しかし、神以外からの愛を受け入れる事が出来なくなるのだとか……。
もし他の人を愛したのならば、その時は神の世界へと連れて行かれるらしい。
『メイソン……何を考えている?』
太陽の神の声にハッとすると、彼は興醒めした顔をして
『メイソン、忘れるな。アルトの命は私の手の中にあるという事を』
と言い残し、メイソンの腕の拘束を解いてアルトから姿を消した。
その瞬間、ガックリとアルトの身体が崩れ落ち、メイソンは慌ててアルトの身体を抱き締めた。
メイソンは全裸のアルトを抱き上げ、寝室に移動してベッドに寝かせると、部屋着を着せて身なりを整えた。
眠るアルトの頬に触れ、愛しいと思うのも大切だと思うのもアルトなのに、何故、こんな事になったのか?とメイソンは溜息を吐く。
そっとアルトの額にキスを落とし、メイソンが寝室を後にすると、ドアが閉じる音と同時にアルトの瞳がゆっくりと開いた。
アルトも、時々、突然激しい眠気に襲われて気を失う自分が不安だった。
メイソンが自分に対して少し距離を置こうとするのは、そこに何か原因があるのかもしれないと感じながらも、それを聞くのが怖かった。
アルトはメイソンを知れば知るほど好きになるけれど、メイソンにとって自分の存在が邪魔になってしまっているのではないかと怖かった。
寝返りをうち、アルトは声を殺して涙を流した。
恋が辛いものなら、知りたくなかったと思ってしまう。
自分が太陽の神子では無く、普通の人間だったら違う人生だったのだろうか?と考える。
違う形でメイソンと出会っていたら、メイソンは月の巫女……マリアンヌの騎士として片目を失う事も無かったのでは無いか?
考えれば考える程、アルトは自分が転生しなければ良かったのでは無いだろうか?という考えに至ってしまう。
ゆっくりとベッドから降りると、窓を開けて外を眺める。
転生前の自分が生きていた世界とは違う、ツキナナとも違う『太陽の神子と七人の騎士』の世界。
似て非なる世界に、アルトは小さく溜め息を吐いて苦笑いを浮かべる。
青空が夕陽に変わり始める空を見上げ、もしかしたら、七人の騎士と契約を交わせばメイソンの抱えている『何か』から救えるのかもしれないと考えた。
契約するという事は、七人の騎士と関係を持たなくちゃならない訳で……。
「はぁ……」
深い溜め息を吐くと
「凄い溜め息だな」
何処からか声が聞こえて、アルトがキョロキョロと辺りを見回す。
すると木の枝から、ひょっこりとサミュエルが顔を出した。
「サ……サミュエル?何してるの?」
思わず驚いた声を上げてしまい
「アルト様!どうなさいましたか?」
と、隣の部屋からメイソンが飛び込んで来た。
アルトがアワアワしていると、サミュエルはヒラヒラと手を振って軽やかに木を伝って姿を消してしまった。
ホッと肩を撫で下ろすと、メイソンが窓辺に駆け寄って外を見回している。
「不審者がいらしたんですか?」
心配そうにアルトの顔を見るメイソンに、首を横に振ると
「猫がいたんだ」
そう答えた。
「猫……ですか?」
「そう、黒猫」
メイソンにそう答えると、アルトは窓を閉めて
「メイソン、喉が乾いたな。お茶もらえる?」
と言って微笑んだ。
メイソンは少し首を傾げてから
「かしこまりました。直ぐにご用意を致します」
そう答えて隣の部屋へと戻って行った。
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