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二人の関係③
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学園が終わると、息を切らせてアルトが部屋へと戻って来る。
「アルト様、おかえりなさいませ」
と、執事の顔をしたメイソンが、アルトの帰宅を確認してドアを開けて出迎えてくれる。
アルトは汗を滲ませて、少し息の上がった呼吸を整えながらメイソンが部屋のドアを閉めるのをソワソワして待っていた。
ゆっくりとドアが閉まると、アルトはメイソンに抱き着いて
「メイソン、ただいま」
そう呟いた。
ふわりと香るコロンの香りと、少しだけ香るメイソンの匂い。
アルトはこの香りを嗅ぐ度に、ホッと肩の力を抜くことが出来るのだ。
学園では『太陽の神子』として一目置かれている為、変な行動をしないようにアルトなりに気を張っている。
そんなアルトにとって、自分を丸ごと受け止めてくれるメイソンは、アリアナ以外に出来た初めて心を許せる相手なので、どうしても甘えてしまう。
メイソンはそっとアルトの背中を抱き締めると
「汗をかいていらっしゃいますね。又、走って帰って来たのですか?」
そっとアルトの頬に触れてメイソンは言うと、ゆっくりと身体を離して柔らかいタオルを取りに行くと、そっとアルトの額や頬の汗を優しく押さえるように拭っている。
アルトは冷たくて大きなメイソンの手が、走って上気したアルトの頬を包む瞬間が大好きで、毎日、走って帰宅してしまう。
(少しでも早くメイソンの傍に帰りたいっていうのも、あるんだけどね……)
アルトはそんな事を考えながら、汗を拭い終えたメイソンの身体をギュッと強く抱き締めた。
「アルト……、そんなに強く抱き締められたら動けないんだけど?」
耳元で囁かれて、アルトが真っ赤になって慌てて手を離すと、軽々と抱き上げられて長椅子に移動すると、向かい合わせに座り
「これでいかがですか?」
と、ふわりと笑って言うメイソンに、アルトの胸はギュッと軋むように痛む。
アルトがメイソンにギュッと抱き付くと、メイソンはゆっくりと抱き締め返して
「どうなさいました?」
そう言いながら、そっとアルトの背中を優しく撫でた。
それは性的な触れ方では無く、子供をあやすような優しい触れ方に、アルトは頬を膨らませる。
「メイソン、子供扱いしてるでしょう!」
「そんな事ないですよ」
「絶対子供扱いしてる!」
メイソンの胸をポコポコと叩くアルトの姿に、メイソンは(駄々をこねている子供みたいだな……)と苦笑いしながらも、そんなアルトを愛おしく思う自分の感情にまだ慣れずにいた。
そんな自分の感情を、聡いアルトにバレないように
「じゃあ、子供相手に悪い事をしてしまう大人になってしまいますね」
アルトの顎を軽く掴み唇を寄せて囁くと、駄々をこねていたアルトの視線がメイソンの視線と重なると、ゆっくりとエメラルドの瞳が閉じて行った。
唇を重ねると、アルトの腕が当たり前のようにメイソンの首に回されて、その先を求めるように唇が薄らと開く。
その時、メイソンの理性がこのまま流されてしまうのはダメだと引き留めた。
「アルト様、夜の時以外は深い関係を持つのは止めませんか?あなたは学生なんです。もし、あなたの学業の成績が落ちてしまったら、私は執事失格の烙印を押されてしまいます」
自分でも卑怯な言い方だと思ったが、今、アルトが自分に溺れているのにメイソンはなんとなく分かっていた。
このままアルトに流されたら、アルトは全てを捨ててしまう可能性があるとメイソンは考えていた。
そんなメイソンに、アルトは不安そうに瞳を揺らして
「嫌だ!メイソンと引き離されるなんて、絶対に嫌だ」
ギュッとメイソンにしがみつくアルトを愛おしいと思う気持ちを押し殺して
「でしたら、学業も頑張りましょう。ね、アルト様」
そう言ってアルトの頭を撫でた。
「アルト様、おかえりなさいませ」
と、執事の顔をしたメイソンが、アルトの帰宅を確認してドアを開けて出迎えてくれる。
アルトは汗を滲ませて、少し息の上がった呼吸を整えながらメイソンが部屋のドアを閉めるのをソワソワして待っていた。
ゆっくりとドアが閉まると、アルトはメイソンに抱き着いて
「メイソン、ただいま」
そう呟いた。
ふわりと香るコロンの香りと、少しだけ香るメイソンの匂い。
アルトはこの香りを嗅ぐ度に、ホッと肩の力を抜くことが出来るのだ。
学園では『太陽の神子』として一目置かれている為、変な行動をしないようにアルトなりに気を張っている。
そんなアルトにとって、自分を丸ごと受け止めてくれるメイソンは、アリアナ以外に出来た初めて心を許せる相手なので、どうしても甘えてしまう。
メイソンはそっとアルトの背中を抱き締めると
「汗をかいていらっしゃいますね。又、走って帰って来たのですか?」
そっとアルトの頬に触れてメイソンは言うと、ゆっくりと身体を離して柔らかいタオルを取りに行くと、そっとアルトの額や頬の汗を優しく押さえるように拭っている。
アルトは冷たくて大きなメイソンの手が、走って上気したアルトの頬を包む瞬間が大好きで、毎日、走って帰宅してしまう。
(少しでも早くメイソンの傍に帰りたいっていうのも、あるんだけどね……)
アルトはそんな事を考えながら、汗を拭い終えたメイソンの身体をギュッと強く抱き締めた。
「アルト……、そんなに強く抱き締められたら動けないんだけど?」
耳元で囁かれて、アルトが真っ赤になって慌てて手を離すと、軽々と抱き上げられて長椅子に移動すると、向かい合わせに座り
「これでいかがですか?」
と、ふわりと笑って言うメイソンに、アルトの胸はギュッと軋むように痛む。
アルトがメイソンにギュッと抱き付くと、メイソンはゆっくりと抱き締め返して
「どうなさいました?」
そう言いながら、そっとアルトの背中を優しく撫でた。
それは性的な触れ方では無く、子供をあやすような優しい触れ方に、アルトは頬を膨らませる。
「メイソン、子供扱いしてるでしょう!」
「そんな事ないですよ」
「絶対子供扱いしてる!」
メイソンの胸をポコポコと叩くアルトの姿に、メイソンは(駄々をこねている子供みたいだな……)と苦笑いしながらも、そんなアルトを愛おしく思う自分の感情にまだ慣れずにいた。
そんな自分の感情を、聡いアルトにバレないように
「じゃあ、子供相手に悪い事をしてしまう大人になってしまいますね」
アルトの顎を軽く掴み唇を寄せて囁くと、駄々をこねていたアルトの視線がメイソンの視線と重なると、ゆっくりとエメラルドの瞳が閉じて行った。
唇を重ねると、アルトの腕が当たり前のようにメイソンの首に回されて、その先を求めるように唇が薄らと開く。
その時、メイソンの理性がこのまま流されてしまうのはダメだと引き留めた。
「アルト様、夜の時以外は深い関係を持つのは止めませんか?あなたは学生なんです。もし、あなたの学業の成績が落ちてしまったら、私は執事失格の烙印を押されてしまいます」
自分でも卑怯な言い方だと思ったが、今、アルトが自分に溺れているのにメイソンはなんとなく分かっていた。
このままアルトに流されたら、アルトは全てを捨ててしまう可能性があるとメイソンは考えていた。
そんなメイソンに、アルトは不安そうに瞳を揺らして
「嫌だ!メイソンと引き離されるなんて、絶対に嫌だ」
ギュッとメイソンにしがみつくアルトを愛おしいと思う気持ちを押し殺して
「でしたら、学業も頑張りましょう。ね、アルト様」
そう言ってアルトの頭を撫でた。
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