27 / 69
遂に見られた~~!!
しおりを挟む
「アルト様、部屋着に着替えましょう」
あらぬ妄想に耽っていると、メイソンに声を掛けられてアルトはハッと我に返る。
部屋着を手渡され、寝室へと向かう。
本来、貴族はメイド等に着替えさせてもらって、自分では着替えないものだけど。
メイソンの、服の上からでも分かる鍛え上げられた身体に比べ、病弱なアルトの貧弱な身体を見られる事に抵抗があるのだ。
着替えを終えて戻ると、メイソンがお茶とお茶菓子を用意してくれている、
メイソンは容姿端麗で気が効くので、本当に助かっている。
「アルト様、お茶のご用意が出来ておりますよ」
ドアの所で立ってメイソンを見てると、メイソンはすぐにアルトの視線に気付いて笑顔を浮かべた。
「ねぇ、メイソン。きみは僕の執事になる前は何をしていたの?」
と質問すると、メイソンは少し考えているフリをして
「そうですね……。色々やっておりましたので、忘れてしまいました」
とふんわりと微笑んで話を終わらせてしまう。きっと、人には言えない過去があるのだろう。
アルトが書いていた作品では、メイソンは地方の貧しい貴族の末裔で、病気の母親と妹の為に執事として働いていたのを思い出す。アルトはお茶を飲みながら
「ねぇ、メイソン。きみのお母様と妹さんはどんな病気なの?」
と、つい聞いてしまった。
するとメイソンの笑顔が消えて
「何故、俺の母親と妹が病気なのを知っているの?もしかして、先程の本というのは、俺の事を調べた調査書だったのでは無いでしょうね?」
いつも笑顔を絶やさず、自分の事を「私」と言っていたメイソンの豹変ぶりにアルトの顔が強張る。
「ご……ごめん!調べてはいないよ!……そう!父様と母様に聞いたんだよ!」
そう答えたアルトに、メイソンは顔色も変えずに
「おかしいですね。フィルナート公爵と公爵夫人には、俺の家族の話は一切していないのですが……。それを、何故アルト様がご存じなのか?不思議ですね」
誤魔化そうと話を振るが、ことごとくメイソンはアルトの話を打ち消していく。
しかもその目は疑いの眼差しをアルトに送っていて、遂に
「でしたら、先程の本だと言っていた品物を見せてくださいませんか?」
と言い出したのだ。
(ヒィッ!そう来た?)
思わず黙り込んでしまうと
「もし、見せて頂けないのでしたら、私はアルト様の下でもう働けません。使用人の事を信じられず、情報屋に調べさせる方にはお仕え出来ませんから」
そう言われてしまい、アルトは泣き出しそうになる。
しかし、メイソンは顔色を変えずに
「そんな可愛らしい顔をなさっても無駄ですよ」
そう言ってアルトに背を向けた。
「わかった!見せる、見せるよ!でも、これは僕の意志でも無ければ、むしろ僕は被害者だって事を念頭に入れて呼んでよ!」
と言うと、アルトは引き出しの鍵を開けてメイソンに差し出し
「中味は、僕もまだ読んでないから、どんな話なのか分からないけど」
と伝えた。
メイソンがケバケバしいピンクの包装紙を解いて行くと、表紙がバーン!とメイソンとアルトが真っ裸で抱き合っているイラストだった。
(やっぱり……)
目眩を起こしてひっくり返りそうになるアルトとは別に、メイソンは表情も変えずにページを開いて行く。
そしてガックリと肩を落とし
「これは……?」
とアルトに聞いて来た。
「だから、腐女子の創作物だよ。僕は怖くて、中味を見られなかったんだ」
アルトの言葉にメイソンは溜め息を吐いて
「この件に関しては、分かりました。ですが、それでは何故私の過去の事を?」
そう聞かれて
「太陽の神子の力なのかな?時々、頭にその人の心を占めている事が脳裏に浮かんだりしちゃうんだよ」
と、苦し紛れの嘘を吐いた。
あらぬ妄想に耽っていると、メイソンに声を掛けられてアルトはハッと我に返る。
部屋着を手渡され、寝室へと向かう。
本来、貴族はメイド等に着替えさせてもらって、自分では着替えないものだけど。
メイソンの、服の上からでも分かる鍛え上げられた身体に比べ、病弱なアルトの貧弱な身体を見られる事に抵抗があるのだ。
着替えを終えて戻ると、メイソンがお茶とお茶菓子を用意してくれている、
メイソンは容姿端麗で気が効くので、本当に助かっている。
「アルト様、お茶のご用意が出来ておりますよ」
ドアの所で立ってメイソンを見てると、メイソンはすぐにアルトの視線に気付いて笑顔を浮かべた。
「ねぇ、メイソン。きみは僕の執事になる前は何をしていたの?」
と質問すると、メイソンは少し考えているフリをして
「そうですね……。色々やっておりましたので、忘れてしまいました」
とふんわりと微笑んで話を終わらせてしまう。きっと、人には言えない過去があるのだろう。
アルトが書いていた作品では、メイソンは地方の貧しい貴族の末裔で、病気の母親と妹の為に執事として働いていたのを思い出す。アルトはお茶を飲みながら
「ねぇ、メイソン。きみのお母様と妹さんはどんな病気なの?」
と、つい聞いてしまった。
するとメイソンの笑顔が消えて
「何故、俺の母親と妹が病気なのを知っているの?もしかして、先程の本というのは、俺の事を調べた調査書だったのでは無いでしょうね?」
いつも笑顔を絶やさず、自分の事を「私」と言っていたメイソンの豹変ぶりにアルトの顔が強張る。
「ご……ごめん!調べてはいないよ!……そう!父様と母様に聞いたんだよ!」
そう答えたアルトに、メイソンは顔色も変えずに
「おかしいですね。フィルナート公爵と公爵夫人には、俺の家族の話は一切していないのですが……。それを、何故アルト様がご存じなのか?不思議ですね」
誤魔化そうと話を振るが、ことごとくメイソンはアルトの話を打ち消していく。
しかもその目は疑いの眼差しをアルトに送っていて、遂に
「でしたら、先程の本だと言っていた品物を見せてくださいませんか?」
と言い出したのだ。
(ヒィッ!そう来た?)
思わず黙り込んでしまうと
「もし、見せて頂けないのでしたら、私はアルト様の下でもう働けません。使用人の事を信じられず、情報屋に調べさせる方にはお仕え出来ませんから」
そう言われてしまい、アルトは泣き出しそうになる。
しかし、メイソンは顔色を変えずに
「そんな可愛らしい顔をなさっても無駄ですよ」
そう言ってアルトに背を向けた。
「わかった!見せる、見せるよ!でも、これは僕の意志でも無ければ、むしろ僕は被害者だって事を念頭に入れて呼んでよ!」
と言うと、アルトは引き出しの鍵を開けてメイソンに差し出し
「中味は、僕もまだ読んでないから、どんな話なのか分からないけど」
と伝えた。
メイソンがケバケバしいピンクの包装紙を解いて行くと、表紙がバーン!とメイソンとアルトが真っ裸で抱き合っているイラストだった。
(やっぱり……)
目眩を起こしてひっくり返りそうになるアルトとは別に、メイソンは表情も変えずにページを開いて行く。
そしてガックリと肩を落とし
「これは……?」
とアルトに聞いて来た。
「だから、腐女子の創作物だよ。僕は怖くて、中味を見られなかったんだ」
アルトの言葉にメイソンは溜め息を吐いて
「この件に関しては、分かりました。ですが、それでは何故私の過去の事を?」
そう聞かれて
「太陽の神子の力なのかな?時々、頭にその人の心を占めている事が脳裏に浮かんだりしちゃうんだよ」
と、苦し紛れの嘘を吐いた。
0
お気に入りに追加
387
あなたにおすすめの小説
転生して王子になったボクは、王様になるまでノラリクラリと生きるはずだった
angel
BL
つまらないことで死んでしまったボクを不憫に思った神様が1つのゲームを持ちかけてきた。
『転生先で王様になれたら元の体に戻してあげる』と。
生まれ変わったボクは美貌の第一王子で兄弟もなく、将来王様になることが約束されていた。
「イージーゲームすぎね?」とは思ったが、この好条件をありがたく受け止め
現世に戻れるまでノラリクラリと王子様生活を楽しむはずだった…。
完結しました。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
・作者が話の進行悩み過ぎてる
王道学園なのに、王道じゃない!!
主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。
レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
専属【ガイド】になりませんか?!〜異世界で溺愛されました
sora
BL
会社員の佐久間 秋都(さくま あきと)は、気がつくと異世界憑依転生していた。名前はアルフィ。その世界には【エスパー】という能力を持った者たちが魔物と戦い、世界を守っていた。エスパーを癒し助けるのが【ガイド】。アルフィにもガイド能力が…!?

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

少女漫画の当て馬に転生したら聖騎士がヤンデレ化しました
猫むぎ
BL
外の世界に憧れを抱いていた少年は、少女漫画の世界に転生しました。
当て馬キャラに転生したけど、モブとして普通に暮らしていたが突然悪役である魔騎士の刺青が腕に浮かび上がった。
それでも特に刺青があるだけでモブなのは変わらなかった。
漫画では優男であった聖騎士が魔騎士に豹変するまでは…
出会う筈がなかった二人が出会い、聖騎士はヤンデレと化す。
メインヒーローの筈の聖騎士に執着されています。
最上級魔導士ヤンデレ溺愛聖騎士×当て馬悪役だけどモブだと信じて疑わない最下層魔導士
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる