23 / 42
そして親になる
親として
しおりを挟む「ヴァレンテ陛下からお話を聞きたい?」
「ええ、ヴァレンテ陛下は十人の伴侶がおられるそうではないですか、だから話を聞きたいなと」
私がそう言うと、フィレンツォは少し考えてから頷いた。
「分かりました、なんとか致しましょう」
「助かる」
ヴァレンテ陛下に話しを聞けば、少しは親としてよく動けるかもしれない。
そんな淡い期待を抱いて、返事をまった。
「僕が伴侶達にしてたこと? いや、普通に嫌がる事はしない、それだけだよ」
「はい?」
ヴァレンテ陛下と運良く話ができたが、聞かされた内容に疑問符がついた。
「ああ、もっと正確にはやって欲しい事をする、もかな」
「やって欲しい事……」
「ダンテくん、君はすごーく頑張り屋さんだと聞いている。だから言おう、伴侶達が望む以上の事をしずぎると、君が潰れるよ」
「……」
「僕は十人伴侶がいるからさ、十人が計画的に子作りしたから君とはちょっと立場が違う」
「確かに、そう、ですね」
「君の所は四人の伴侶が子どもを欲しがって、君が根負けして四人全員が同時に妊娠した」
「はい……」
「だからこそ、君は限度を超えちゃいけない。君の体は一つなんだから」
「……」
「まぁ、納得いかないところもあるだろうけど、君は君の体も大事にしないといけない、子育ては大変なんだから」
「はい……」
ヴァレンテ陛下の言葉が納得できるようでできない箇所が多々あった。
親は子どものために何かしないといけない存在だ。
などと、考えてふと思った。
──ヴァレンテ陛下子どもの教育に悪いって言われてなかったか──
──もしかしてだから嫌がる事をしないなのか?──
「あ、その顔僕が子どもの教育に悪いって言われてるの想像してるでしょう?」
ヴァレンテ陛下に指摘されてぎくりとなる。
「うん、確かに僕は教育に悪いところもあるよ」
ヴァレンテ陛下事実だって認めてるー!!
「でも、それとこれとは話がちょっと違ってくる、まだ小さな赤ん坊と産んだばかりの伴侶は大切にする。授乳もかわりの道具が開発されてるしね」
「……」
「オムツ替えだってそうさ、そういうことは僕もちゃんとやったよ。子ども達全員」
嘘はついてなさそうだ。
「ダンテ、君はまだ若い。その上子どもも多くなると思う」
「はぁ……」
「そのときはまた僕に話しを聞きにくればいい、教育に悪いとか言われているけど、親としての責務を果たしてる僕にね」
「……はぁ」
と返事をするしかなかった。
「やっぱり一気に四人と子作りするのは大変なんだなぁ」
一人部屋で休みながら愚痴る。
「ダンテ殿下、当たり前ですよ」
「だよなぁ」
フィレンツォのツッコミにボケを返す気力もない。
「ダンテ様、貴方様の選んだ道だからという事で自分は無理をしなければならないというのはやめてください」
「……うん」
「貴方様にはその傾向が強くあります、そして一時収まったその傾向はまた強くなりつつあります」
フィレンツォの言う通りだ。
「……ですから、また私がしっかりと監視させていただきます」
「ははは……お手柔らかに」
空笑いを返すのが精一杯だった。
フィレンツォにどつかれてベッドにゴーを繰り返しつつも親としての仕事などをこなしているうちに、秋になった。
「ダンテ、破水した」
その日、カルミネは淡々と述べてきた。
「え?! ふぃ、フィレンツォー!!」
「いや、大丈夫自分で歩け──」
「今は絶対安静です!」
フィレンツォが以前のように芸術的に車椅子をもって滑り込んできた。
カルミネを車椅子に乗せて、フィレンツォと共に分娩室へゴーする。
「……」
「か、カルミネ、大丈夫、ですか」
「ああ、特にはな」
「あの……腕を」
「大丈夫だ、それに折りたくないしな」
カルミネはアルバートやクレメンテと違って冷静だった。
そして出産もすぽんと終わった。
びっくりするほど順調で早く終わったのだ。
「女の子か」
「名前は考えてますか?」
「ディアナだ」
「……私の頭文字から?」
「ああ」
少し気恥ずかしいが、生まれてきた可愛い私の娘ディアナ。
──君も幸せにね──
そしてここで問題が発生した。
エリアの精神が不安定になってしまったのだ。
皆が生まれているのに、自分の子だけ生まれない。
お腹の中で死んでしまったんではないだろうか。
それとも生まれてくるのが嫌なのだろうか。
とか、まぁ。
マイナス思考にぶっちぎって暗い表情を浮かべている。
他の皆の言葉が耳に入らない程、陰鬱になってしまっている。
「エリア」
こうなったら私の出番だ。
「だ、ダンテ、様」
エリアは私の顔を見てうつむいた。
「僕の赤ちゃんだけ生まれないんですまだ……」
「生まれないのが不安?」
エリアはこくりと頷いた。
「だって、もしかしたら死んじゃってるんじゃ──」
「大丈夫、生きてますよ貴方のお腹の中が居心地よくて出るのが嫌みたいです」
お腹を触って言う。
実際、赤ん坊は生きている。
エリアの胎内で、ゆっくりと魔力を蓄えながら育っている最中だ。
元々の魔力はエリアは四人の中で最も少ない。
その分赤ん坊は母胎に負担をかけないように魔力を吸い取っているのだ。
「きっと冬には生まれますよ」
「でも、冬を過ぎても生まれなかったら……!」
「大丈夫、おまじないをしますから」
そう言ってエリアの唇に私はキスをした。
魔力タンクである私の魔力をエリアの体の負担にならないように注ぐのだ。
しばらくキスをして解放すればぷはっとエリアは息をした。
「これで大丈夫です」
「ダンテ様……」
「エリア、大丈夫、元気な赤ん坊が生まれてきますよ」
「……はい」
エリアは漸く落ち着いたように、私にしなだれかかってきた。
私はエリアの髪を撫で、彼が眠るまで側にいた。
「ダンテ、すまない。私達ではどうにもできなくて」
ブルーナを抱えたクレメンテが私に謝る。
「いいんですよ、エリアの赤ん坊の生育状況もしれたので」
「ちゃんと育っているのか?」
不安げにカルミネがたずねる。
「はい、育っていますとも」
その言葉にほっとしていた。
「性別は?」
「そこは見てません」
「だよなー」
アルバートが当然のように言う。
見ちゃいけないものだから仕方ないのです。
「冬頃には生まれると思いますよ」
「そうか」
「そのときは皆で祝福してあげましょう」
「ああ」
「勿論だ」
「当然!」
私は冬が待ち遠しくなった。
早く生まれておいで、私とエリアの赤ちゃん──
0
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる