4 / 4
昔々の……
しおりを挟むこれはお姫様が生まれる前のお話。
とある魔界に魔王様がおりました。
魔王様は人間に対して何の感情も抱いておりませんでした。
ハロウィンの夜。
小さな悪魔達に紛れて魔王様は人間界を訪れました。
そこで、悪魔達にお菓子をあげる美しい女性と出会いました。
「小さな悪魔さん達、お菓子をあげるからいたずらはしちゃだめよ」
女性は言葉だけでなく、心でも、自分がお菓子をあげてる存在が悪魔だと理解していることを知り、魔王様は驚きました。
女性が魔王様に近づき声をかけます。
「まぁ、大きな悪魔さん、貴方もお菓子はいかが?」
「菓子はいらぬ。何故悪魔だと分かって菓子をやっているのだ?」
女性はきょとんとして応えました。
「悪魔全てが悪い訳ではないわ、貴方もそうでしょう」
魔王様は女性に恋をしました。
初めての恋だったため、魔王様はどうすれば女性の気を引けるのか分かりませんでした。
美しい宝石や金銀財宝を贈れば
「勿体ないのでいりません」
高級な菓子を渡せば
「貴方もご一緒にいかが?」
花束を贈れば
「まぁ、素敵。どこに飾ろうかしら」
と言う反応だったので、魔王様はいつも女性にお菓子と花束をもって遭いに行きました。
「大きな悪魔さん、貴方は私に何をして欲しいのですか?」
ある日女性が問いかけます。
「どうか私の妻に」
「まぁ! 私のような魔女を?」
「魔女?」
「ええ、皆がそういうの。その黒い髪は黒い目は魔女の証だって、だから私は町から離れて一人で暮らしているの」
「貴方は魔女ではない、ただの人だ」
「では、そのただの人の私を?」
「ああ」
「まぁ、嬉しい。連れて行って貴方の世界に!」
魔王様は女性を連れて行きました。
そして女性を自分の妻としました。
女性は力の弱い悪魔達を庇護し、またがれきの魔界に花畑をつくりました。
やがて、二人の間に女の子が生まれます。
それがお姫様でした。
お姫様は二人の愛を受けすくすくと育ちました。
ですが五歳の誕生日に──
目の前で、女性を、お母様を亡き者にされました。
死んでしまったお妃様に小さき悪魔達は皆嘆きました。
力ある者は歓喜しました。
これで力による支配の時代が来ると。
ですが魔王様には誰も勝てません。
欲深き者はお姫様を人質に、もしくは虜にして魔王の座を狙おうとしました。
それを知った魔王様は、塔にお姫様を幽閉しました──
100年も昔のお話です。
お姫様は今も、塔の中にいて、子どものまま過ごしています。
安全なハロウィンの日以外外出できずに居ます。
「いつになったらおとうさまとまたいっしょにそとをあるけるのかしら」
詳しいことを聞かされていないお姫様は塔の中で以前の生活を夢見ています。
100年もずっと──
0
お気に入りに追加
4
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
フツーさがしの旅
雨ノ川からもも
児童書・童話
フツーじゃない白猫と、頼れるアニキ猫の成長物語
「お前、フツーじゃないんだよ」
兄弟たちにそうからかわれ、家族のもとを飛び出した子猫は、森の中で、先輩ノラ猫「ドライト」と出会う。
ドライトに名前をもらい、一緒に生活するようになったふたり。
狩りの練習に、町へのお出かけ、そして、新しい出会い。
二匹のノラ猫を中心に描かれる、成長物語。
児童絵本館のオオカミ
火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。
ある羊と流れ星の物語
ねこうさぎしゃ
児童書・童話
たくさんの仲間と共に、優しい羊飼いのおじいさんと暮らしていたヒツジは、おじいさんの突然の死で境遇が一変してしまいます。
後から来た羊飼いの家族は、おじいさんのような優しい人間ではありませんでした。
そんな中、その家族に飼われていた一匹の美しいネコだけが、羊の心を癒してくれるのでした……。
妖精猫は千年経った今でも歌姫を想う
緋島礼桜
児童書・童話
ここは、人もエルフもドワーフも妖精も当たり前のように仲良く暮らすこの世界。
そんな世界のとある町の一角に、まあまあの大きさはある酒場があった。
そこには種族なんて関係なく、みんな思い思いに酒を楽しみ、料理を味わい、踊りや歌を披露しては酔いしれている。
そんな酒場のマスターをしているのは一匹の妖精猫——ケットシーだった。
彼は料理の腕もなければ配膳も得意ではない。
なのに酒場の常連客はみんな彼を慕っている。彼はみんなの憩いであり癒しであった。
だが、そんな妖精猫には悪いクセがあった。
今日も彼は常連客と共に酒をちょびちょび舐めながら。悪いくせ―――もう何万回目となるだろうとある思い出話を、延々と話していた。
長く感じるような短くも感じるような、彼が初めて知ったある歌姫への愛の物語を。
第1回きずな児童書大賞応募作品です。
あの小さな魔女と眠りに落ちよう
kiruki
児童書・童話
急な体超不良に襲われた小さな魔女は、いつも通りの"おやすみ"が言えたのだろうか。
長い寿命を持つ大魔女と、彼女に幼い頃拾われた男の話。
エブリスタ、ピクシブにも投稿中。
動物たちの昼下がり
松石 愛弓
児童書・童話
不思議な森の動物たちの昼下がりを、童話のような感じで書いてゆく予定です。1話ずつショートショート短編読み切りなのですぐに読めると思います。のんびりとした日常だったり、コメディだったり、そうでない時もあります。よろしくお願いします。不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる