ヴァンパイアライフ~不慮の事態で吸血鬼になりましたがなんとか頑張って生きていきます~

琴葉悠

文字の大きさ
上 下
21 / 21

これからも共に歩いて行く~この空の下で~

しおりを挟む



 日本に帰ってくると、明里はクォートと共に自宅に戻った。
「ふー結婚式なんとかなったね! でも、これで本当に諦めてくれるのかなぁ?」
「大丈夫ですよ明里、諦めてますよ」
「本当?」
「明里、気づいてなかったみたいでしたけど、誓いのキスの時にアルフレート来てましたよ」
「嘘⁈」
 明里は驚愕の声を上げる。
「ええ、私と明里の誓いのキスを見て崩れ落ちてましたけど」
「そ、それからどうなったの」
「父上と葛葉さんに引きずられて城から追い出された」
「ど、どうしてこれたのかな?」
「そこを葛葉さんが調べると言ってたから待とう」
「う、うん」
「明里」
 不安になっている明里にクォートは声をかけた。
「もう大丈夫だから」
「……うん」
 まだ不安そうな明里の額にキスをし頬を撫でる。
「大丈夫、私たちみんなで守るから」
「……有り難うございます」
 明里は漸く笑顔になった。




「貴様らの所為か!」
「申し訳ございません‼」
 メリアは怒る葛葉に土下座でひたすら謝っていた。
 床にはぼろぼろのエドワードが転がっている。
 クリスは顔を引きつらせている。
「貴様らの所為で明里の結婚式が危うく台無しになりかけたんだぞ!」
「本当に申し訳ございません!」
「しかもそこの転がってる屑が情報漏らしたのが気に食わん!」
「あたり……まえ……だ! おれの……いもうとは……アルフレートに……吸血鬼に……されたのに……だれも……たすけず……殺されたんだ……!」
「だから同じ目に遭わせると? ふざけるな! そんな考えを持っているならハンター等辞めてしまえ‼」
「で、でも最終的には上手くいったんでしょう? だったら──」
「最終的にだこのくそぼけ共! アルフレートは私がボコった時以上の精神ダメージを受けて引きこもりになった! これで万々歳だが、奴が生きているうちは安心できん! 責任を持って貴様等教会がアルフレートを始末してこい!」
「ええええ⁈」
 クリスが悲鳴を上げる。
「そ、そんな無茶ですよぉ!」
「無茶もヘチマもあるか! それが終わるまで私は貴様等に協力などせんからな! 他の善良な吸血鬼達にも通達済みだ!」
「そ、そんなぁ~~‼」
 葛葉は怒りをあらわにしながら教会の支部を後にした。




 それから数年後──




「明里、医者になったんだな、おめでとう」
「先生達のおかげです!」
 明里は葛葉の前でにこりと笑った。
「旦那とはどうしてる?」
「幸せです、私の事を気遣ってくれて」
「クォートも、お前が気遣ってくれるからと言っていたな、いい夫婦になったな」
「はい」
「さて、本題に入ろう」
「何でしょうか」

「アルフレートが死んだ」

「え」
 葛葉の言葉に明里は目を見開く。
「彼奴はやり過ぎたんだ、だから狩られた」
「ハンターとかに、ですか?」
「ああ、そうだ」
「……」
「明里、あまり元気がないな」
「改心して、二度と私のような人をださないで居てくれたら良かったんですが……」
「無理な話だ、奴は何度も同じようなことを繰り返している、その度に駄目になるがな」
「……改心できない方って、改心できないんですね」
「そうだ」
「……気になるのはどうして花嫁にこだわったのかです」
「それは知らん、奴が死ぬまで持って行った秘密だ」
「……」
「と、言うことで奴の脅威は完全に無くなったし、お前はより自由だ」
「お医者さんだから人のまねしなきゃならないのがちょっと大変ですね」
「医者の知り合いがいるからそいつに相談するといい」
「有り難うございます」
「いいや、気にするな。お前はいつまで経っても私の可愛い生徒なのだからな」
「はい!」
 明里はにこりと笑い、葛葉は微笑んだ。


「アルフレートが死んだ? 本当なのかい?」
 明里はクォートに葛葉からの情報を共有した。
「うん、葛葉先生が言ってた」
「そうか、死んだか……もう犠牲者は出ることはないな」
「うん」
「明里」
「はい」
「君を決して離さない」
「私も……」
 そう言って、二人は抱き合いキスをした。




「漸くアルフレートを殺せたか」
 教会の支部に葛葉は訪れた。
 空気は重苦しいものだった。
「はい……でも多数の負傷者に……エドワードが死にました」
 メリアが沈痛な面持ちで言う。
「エドワード、なんで……」
「あの阿呆は死に場所を欲しがっていた、だからアルフレートを殺せと言われてそこを死に場所に選んだんだろう」
「だからって……」
「言い出したのは私だが、死に場所を決めたのは奴だ」
「……」
「アルフレートの最後はどうだった?」
「『何故誰も花嫁になってくれない、何故、何故──!』でした……」
「そこまで花嫁に固執するなら、もっとまっとうな恋愛をするべきだったな」
 葛葉はそう言って支部を後にした。




「葛葉先生」
「明里か、どうした」
「私も居ます」
「クォートも、どうした」
 突如葛葉の家を訪れた二人に葛葉は困惑した。
「私の家の玄関をひっかくような音がするので裏口から出てきたんです……」
「私だけじゃ心配なので、葛葉さんもお願いできますか?」
「わかった」
 葛葉はクォートと明里と共に明里の家へと向かう。

 クォートに明里の護衛をさせて、葛葉は玄関を見る。
 目を見開く。
『あかり……あかり……わたしのはなよめ……はなよめ……なぜなぜ……』
「完全にくたばりきれていなかったか」
 葛葉は黒い影の心臓部を貫く。
 すると影は消えていった。
「葛葉先生、いまの、は」
「アルフレートの残滓だ、花嫁にしようとしたのがお前で最後だったから来たのだろう」
「……もう大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。だが何かあったらすぐ連絡しろ?」
「はい!」
「はい」


 明里はその日夢を見た。
 花嫁のドレスをつかみ泣くアルフレートの姿を。
『私の花嫁がいなくなった……私のどこがいけないのだ……』


 明里は目を覚ます。
 体を起こして呟いた。
「貴方の自分が正しい、そう思う心が花嫁がいなくなった原因なのでは?」

「自分の間違いを認められなくなったら人として苦労するから──」


 明里の答えに、返事をするものは、誰もいない。
 ただクォートの寝息だけが帰ってきた。




「そんな夢を見たのか」
「はい」
 明里は葛葉の家を訪ねて、夢の話をした。
「……おそらく人間だった頃のアルフレートだろうなそれは」
「花嫁に逃げられてしまったのですかね?」
「おそらくそうだろうな」
「……」
「どうしてそんな夢を……」
「お前はアルフレートの血族で一番若いからな、おそらくそれで見たんだろう」
「先生は?」
「見てない」
「……アルフレートは自分が正しいと思っていたと思います」
「その通りだ、奴はいつだって自分が正しいと思っていた」
「その自分が正しいと思うことは間違いを認められないことだから、花嫁は去っていったのだと思います」
「なるほど……そうかもしれないな」
 葛葉はふぅと息を吐いて呟いた。
「哀れな男だ」
「……」
「だからといってやってきたことは許さないがな」
「はい」
「明里、これから先、お前は多くの困難に直面する。だが、私たちがいることを忘れるな」
「はい、先生」

──私はもう一人じゃない──
──先生や、クォートさんやみんながいる──

 葛葉の家から出ると、明里は空を見上げて呟いた。
「ああ、今日もいい天気」
 それは雲一つない満月の空だった──




しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

恥ずかしい 変身ヒロインになりました、なぜならゼンタイを着ただけのようにしか見えないから!

ジャン・幸田
ファンタジー
ヒーローは、 憧れ かもしれない しかし実際になったのは恥ずかしい格好であった! もしかすると 悪役にしか見えない? 私、越智美佳はゼットダンのメンバーに適性があるという理由で選ばれてしまった。でも、恰好といえばゼンタイ(全身タイツ)を着ているだけにしかみえないわ! 友人の長谷部恵に言わせると「ボディラインが露わだしいやらしいわ! それにゼンタイってボディスーツだけど下着よね。法律違反ではないの?」 そんなこと言われるから誰にも言えないわ! でも、街にいれば出動要請があれば変身しなくてはならないわ! 恥ずかしい!

セイントガールズ・オルタナティブ

早見羽流
ファンタジー
西暦2222年。魔王の操る魔物の侵略を受ける日本には、魔物に対抗する魔導士を育成する『魔導高専』という学校がいくつも存在していた。 魔力に恵まれない家系ながら、突然変異的に優れた魔力を持つ一匹狼の少女、井川佐紀(いかわさき)はその中で唯一の女子校『征華女子魔導高専』に入学する。姉妹(スール)制を導入し、姉妹の関係を重んじる征華女子で、佐紀に目をつけたのは3年生のアンナ=カトリーン・フェルトマイアー、異世界出身で勇者の血を引くという変わった先輩だった。 征華の寮で仲間たちや先輩達と過ごすうちに、佐紀の心に少しづつ変化が現れる。でもそれはアンナも同じで……? 終末感漂う世界で、少女たちが戦いながら成長していく物語。 素敵な表紙イラストは、つむりまい様(Twitter→@my_my_tsumuri)より

悪役令嬢に愛される不遇メイド

琴葉悠
恋愛
ベネノはアイン・ザークという令嬢に仕える侍女。 しかし、アインはベネノを悪く言った令息達をことごとく婚約破棄してきた。 その為、婚期も過ぎている。 ベネノはアインの為に、アインの元から姿を消そうとするのだが──

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

処理中です...