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結婚式~アルフレートの玉砕~
しおりを挟む「アルフレートを二度と近づかないようにさせたい?」
「はい」
「一番手っ取り早いのがボコボコにすることだな、だができるか明里」
「……ちょっと無理そうです」
「だろうな」
暴力沙汰が苦手な明里は即座に葛葉の言葉に無理だと言って凹んだ。
じゃあどうしよう、と。
「そうだな、結婚式を挙げるのはどうだ。アルフレートに情報を与えず、入れない場所で」
「そんな場所……」
「明里、私の父の城に礼拝堂があります、そこで式を挙げましょう」
「なら仲介人基証人は私がやろう」
「でも遠いんじゃ」
「吸血鬼専用のジェット機ならすぐだ。ちょうど連休に入るし、行くぞ」
「ひゃ、ひゃい」
明里は泊まる準備を葛葉にさせられた。
翌日、連休に入り、車で空港まで連れて行かれ、ジェット機に乗せられて空を飛ぶ。
日の光が入らぬように窓は暗かった。
ジェット機で数時間乗った後、車に再び乗り継ぎ、山奥の城へと招かれた。
「よく来た、我が子の花嫁よ」
クォートの父、ワラキアが出てきて、明里を歓迎した。
「あ、あの嫌じゃないんですか? 私、アルフレートに吸血鬼にされた人間なんですが……」
「其方の善性は息子からよく聞かされている、それに自分からで無く無理矢理吸血鬼にされたのであろう? なら問題はない」
「そ、そうですか。よかったぁ……」
ここまで来て駄目だしくらったらどうしようと明里は思っていたのだ。
「式は明日だ、今日はゆっくり休むといい」
「明日⁈」
式が明日と聞かされ、明里は驚愕した。
「そうだぞ、明日だ。大丈夫私がいる」
「アルフレートもここまではやってこれられまい。ゆっくり休まれよ」
「は、はぁ……」
そう言ってあてがわれたのは豪奢な部屋だった。
「休めないよ、これ」
「大丈夫だ明里、気にせず使ってくれ」
「だって汚しちゃったら……」
「洗えばいいだけだから」
「う、うん」
クォートに言われてなんとか部屋を使う勇気を手に入れた明里は荷物を置き、ベッドに座る。
ふかふかのベッドだった。
「ふふ、ふかふか……」
ベッドのふかふかに魅了されていた。
「明里、そろそろ薬を飲んで寝ろ」
「あ、はい」
部屋にやってきた葛葉に言われて明里は薬を飲んでベッドに入ってぐっすりと眠った。
翌朝、目覚めると葛葉がやってきた。
「明里、朝食の血液だ。それを飲んだら着替えるぞ」
「は、はい」
明里は血液パックから血を吸うと、葛葉について行き、綺麗でかわいらしいドレスを目の前にし、顔をバラ色に染めた。
「可愛い!」
「そうか、気に入ってくれたか」
「私たち三人でデザインをずっと考えてたんだ、すまんなお前をそっちのけにして」
「いえ、私じゃこんな可愛いの考えつきませんから! それに式も急がないといけないですし」
「うむ、そうだな」
明里は葛葉によって着替えさせられる。
綺麗なヴェールもかぶせられ、明里は本当に花嫁さん気分になっていた。
「こんなかわいらしい娘が、我が子の妻か……うむ、良い」
「ワラキア、そこで感慨深くなってないで案内しろ」
「分かっておる」
「父上、私も着替えました」
花婿衣装姿のクォートを見て、明里は格好いいと顔を赤らめた。
「よしよし、明里も乗り気だな行くぞ」
そう言って礼拝堂に案内される。
十字架は無かったが、綺麗なステンドグラスが印象的だった。
「では始めよう」
そう言って結婚式が始まった。
明里はドキドキしっぱなしで、言葉があまり頭に入ってこなかった。
「明里──何時はクォートを夫とし、病めるときも貧しきときも共にあると誓うか」
「ち、誓います」
なんとか言葉を拾えて誓う言葉を言うことができた。
「では誓いの口づけを──」
「その式待ちたま──」
誰かの声がしたが、明里はクォートとのキスが恥ずかしいけど頑張るのでいっぱいいっぱいで誰の声か分からぬまま、明里はクォートとキスをした。
「ここに一組の夫婦が誕生した、皆拍手を!」
城に住まう者達が拍手をする。
それに明里はうれしさを感じていた。
「よくここまで来たものだ」
「全くだ」
明里が居ないところで、ずるずると、放心しているアルフレートを引きずるワラキアと葛葉。
「わ、私の花嫁が……」
「残念だったなアルフレート、明里はクォートの花嫁だ」
「略奪なんてお前のプライドが許さないだろうしな」
「ああ……何故だ、無慈悲だ……」
「分かったらとっとと自分の本来の城に帰れ!」
そう言って葛葉はアルフレートを追いだした。
「全く、どうやって来たんだか。後で調べねば」
「そうだな、頼んだぞ」
結婚式が終わり、そして初夜──
何も無く終わった。
正確には、クォートが頬にキスをして、一緒にベッドに入って眠った。
それだけだった。
『いいか、クォート。明里は処女だし、まだ学生だ、手をだすなよ』
と、軽い脅しをかけられていたことを明里は知らないまま、クォートのぬくもりを感じすやすや眠っていた。
一方手を出せないことにちょっともんもんとしていたが、仕方ないとクォートは明里の心地よい冷たさを感じて眠った──
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