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訓練、そして旧友と~強くなる為に~
しおりを挟む「ここだ」
次の休日の昼。
山の中に案内された明里は戸惑っていた。
「あの、ここにヴァンピールがいるんですか?」
「ああ、寝床にしている」
「……」
「昼眠り、夜人間を狩りに出る。今までは私が防いでいたが、明里お前が狩って見せろ」
「ど、どうやって」
「前回みたくだ、それと合わせて吸血鬼の本能をむきだしにする事を学べ」
「え、えー!」
「では、行ってくる。ここで待て」
「わー! ちょっと!」
巣穴らしき場所に入っていく葛葉に、明里はどうすればいいのか戸惑う。
獣じみた声が上がり、中から化け物が出てきた。
「ヴァンピール‼」
明里は町へ行こうとするそれの足をつかみ、振り回した。
「どっせい!」
真上の太陽が当たる場所にヴァンピールは上がった。
ヴァンピールの体から黒い煙が上がる。
その匂いに明里の目が赤く染まる。
明里はそのまま、ヴァンピールの心臓を貫いた。
ヴァンピールは塵となり消滅した。
他に二三匹のヴァンピールが明里の視界に入る。
明里は突撃し、ヴァンピール一体を足で踏みつけると同時に足で心臓を貫いた。
踏み抜くと今度は高く上がり、持っている白木の杭をヴァンピールに投げつける。
まるでダーツのように。
手足を縫い付けるように射貫き、動きを封じる。
そして心臓を素手で貫かれた。
「はぁー……はぁー……」
「上出来だ」
「せん、せ……」
「汚れていい服で来いといったのも正解だな、その服、処分するぞ。代えは持ってきているか?」
「……はい」
明里は深い深呼吸を繰り返しながら、葛葉の後をついて行った。
葛葉も家に戻り、風呂を借りて汚れを落とした。
髪の毛も洗い、どこか息苦しくも心地よい香りに包まれながら明里は風呂から上がり、寝間着に着替えた。
「あの、本当にしばらく泊まっていってもいいんですか?」
「ああ、アルフレートの件が終わるまでだがな」
「有り難うございます」
「いやいや、少し息苦しいのは我慢してくれ、奴がこちらに干渉できない結界の影響だからな」
「はい、大丈夫です」
「寝室はそこだから、そこでゆっくり休むといい、明日クォートもこちらに来る」
「本当ですか?」
「ああ」
明里は少しだけ嬉しそうな顔をして、それを見て葛葉は頬を緩める。
「さぁ、宿題は明日終わらせよう、今日はもう薬を飲んで寝なさい」
「はい」
明里は薬を飲んで寝室に向かった。
そして柔らかなベッドに横になり、眠りに落ちた。
「さて……」
「エレナ、アルフレートの奴だが、焦れてきているぞ」
「やはり」
ワラキアの言葉に、葛葉はにやりと笑った。
今まで情報は筒抜けだったが、明里は新しいお守りの影響で明里の情報を得ることができない。
その上葛葉の家という不可侵領域に入られてしまっては、情報はさらに得る事ができない。
外に出て、ヴァンピールを狩ることは理解できても、それを何故率先して行わせるかが理解できない。
理解できない事がアルフレートには多すぎて焦れてきているのであろうことが葛葉には理解できた。
「だが奴から動くことはない」
「ああ、その通りだ。明里という娘が動くのを待っている」
「明里とアルフレート、二人再び相まみえる時が──」
「唯一にして、最後のチャンスだ」
「アルフレートを滅ぼすか?」
「いや、明里がアルフレートから解放されるチャンスだ。もし血が飲めなかった場合アルフレートを滅してしまうのが最終手段だ」
「その手段が使われないといいな、仮にも同族だ」
「だが奴と同族と思われるのは癪だ」
葛葉は忌々しげに言う。
「それにしても……」
「ん?」
「我が息子に惹かれているとは明里という娘は見る目があるな、見目ではなく、中身で惹かれているというのが良い」
「それは見目が良い連中がそろってあの子をいじめていたからだ……」
「……そうか」
二人の声がしょんぼりしたものになる。
「いじめていた連中は死亡、生き残ってるいじめをしようとしている連中は私が締めておいた、大丈夫だろう」
「お前に絞められたら人間なら漏らすのでは?」
「実際漏らしていた」
「おお……そうか」
ワラキアはなんとも言えない声を出す。
「クォートは戸惑っているようだな、見目ではなく中身で気に入られていることに」
「あの子はずっと見目で女達に付き纏われていたからな」
「苦労したのだろう」
「ああ、苦労させてしまった」
「人間と吸血鬼の混血がダンピールと呼ばれるが、それは実際は人間の思い込み。日に強い吸血鬼が生まれるだけだ」
「日に強い吸血鬼をダンピールと呼びたがるのが教会だな」
「面倒な」
葛葉は、あきれたようにいった。
「なら、人間が人工的に作る吸血鬼もどき共──ヴァンピールはなんなのだ!」
「エレナ落ち着け、お前の知り合いがヴァンピールが起こした事件でけがをしたことに腹を立てているのは分かる」
「……すまないな」
葛葉は──エレナは疲れたように行きを履く。
「連中が起こした事件でどれだけの人間が犠牲になるのか、連中は戦争でもしたいのか」
「おそらく」
「ちっ、この件が終わったら組織壊滅に行かないとな」
「そうだな」
「ワラキア、どうしたのだ、なんか反応がおかしいぞ」
「いや、その……もし我が子とあの娘が結婚したらと考えるとな……」
「まだそこまで関係進んでないから考えすぎだ」
「そ、そうか。そうだな!」
エレナは長年の知り合いが、浮き足立っていることに多少不安を覚えた。
「明里、必ず、お前を解放させてやるからな」
エレナは力強く呟いた──
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